「比較広告」の手法をいかに使いこなすか?マクドナルド対バーガーキングの広告合戦の事例に学ぶ | RBB TODAY
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「比較広告」の手法をいかに使いこなすか?マクドナルド対バーガーキングの広告合戦の事例に学ぶ

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「1000店舗以上のマックドライブで、マクドナルドは、よりあなたの身近に」(動画「McDonald's Panneau directionnel #McDriveKing」より)
  • 「1000店舗以上のマックドライブで、マクドナルドは、よりあなたの身近に」(動画「McDonald's Panneau directionnel #McDriveKing」より)
  • 「どこにでもあるマクドナルド、ありがとう」(動画「BURGER KING reveals the end of a McDonald's commercial」より)
 競合ブランドを公然と挑発する形となるため、話題性は抜群でも、炎上リスクも大きく、日本では事例の少ない「比較広告」の手法。ソーシャルメディアの時代に威力を発揮するインタラクティブなマーケティング戦略の、興味深い事例をご紹介する。

 仏ル・フィガロ紙によれば、フランス最大のファーストフードチェーンなのはマクドナルドで、その店舗数は1400。対して4年前にフランスにカムバックしたばかりのバーガーキングはわずか45(うちドライブ18)。

 勝負にならないように見えるが、仏国内に400店舗を持つチェーン、クイックをバーガーキングが買収することになり、トップ争いに参戦。緊張が高まるなか、マクドナルドがまずは広告合戦を仕掛け、先手を打つことに。


 マクドナルド陣営の広告代理店TBWA Parisは、Facebook、Twitter、Instagramなどのソーシャルメディアに、バーガーキングを名指しで皮肉る比較広告キャンペーンを打つ戦略を立てる。バーガーキングが得意とするソーシャルメディア・キャンペーンに初めて着手する、という事実からも、マクドナルドの本気が感じられる。

 田舎の道路沿いで、最寄りのバーガーキングの店舗まで258kmもの長い道のりを示すために、20mを超える案内看板を設置。すぐそばには、マクドナルドなら最寄りの店舗までわずか5kmを示す小さな看板。バーガーキングの店舗の少なさを皮肉り、マクドナルドの身近な存在をアピールするシナリオを展開。

 これに対しバーガーキングは、挑発を真っ向から受けて立つ。バーガーキング陣営の代理店Buzzmanが担当する広告動画は、大胆にもマクドナルドの広告の続編のような展開だ。


 最寄りのマックドライブに車を走らせたカップルは、Lサイズのコーヒーを注文するだけ。「道は長いからね」と捨て台詞を残し、バーガーキングの主力商品「ワッパー」を食べるためなら258kmの距離もなんのその、というオチをつける。

 マクドナルドの挑発に対し、バーガーキングが真っ向から受けて立ったことは、ソーシャルメディアを舞台にインタラクティブな展開が広がる発端となる。

 パリ市のレンタサイクルサービス「ヴェリブ」が、マクドナルドとバーガーキングの案内看板と同じデザインの画像を編集し、広告合戦のバズ効果に便乗した広告をソーシャルメディアに発信。

↓フランス・パリ市内で提供されているレンタル自転車サービス「ヴェリブ」の公式Facebookによる投稿「ビッグマックだろうとワッパーだろうと、消化するには自転車を漕がないとね」

Plutôt Big Mac ou plutôt Whopper ? Dans les deux cas, il va falloir pédaler pas mal pour éliminer !

Velib'さんの投稿 2016年2月29日

 さらに、企業だけではなく、この広告合戦の影響力は、一般学生の就職活動に波及するに至る。

 専門学校で情報コミュニケーションを専攻する学生が、バーガーキングの広告を担当する代理店Buzzmanに、研修生として送る履歴書の最良のデザインを思いつき、ソーシャルメディアで急速に拡散。学生の斬新なアイデアとデザイン、独創的なイニシアチブはBuzmannに評価され、面接を獲得したいきさつも、主要メディアで大きく報道され話題となった。

 マクドナルドは、大胆な挑発広告キャンペーンに踏み切る前に、競合ブランドであるバーガーキングの反応のパターンをある程度は想定していたと考えられるが、ソーシャルメディアを舞台にする以上、ストーリーがどのように、どの方向に発展していくか、完全に見通すことは不可能だ。

 しかし、先の読めない未完のストーリーテリングを可能とするソーシャルメディアならではの発展、波及力は、従来のメディアにはない威力があり、企業、代理店、消費者の注目は高まっている。

 そのなかで、インタラクティブなマーケティング手法に不可欠な発想力、柔軟性、ユーモア精神、制御力が、企業のコミュニケーション力として評価され、ブランド力の向上につながることになるだろう。
《Glycine》
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