【楽しい100人 Vol.12】美音星からやって来た!身体表現アートの真骨頂……パフォーマンスアーティスト 美音異星人さん | RBB TODAY

【楽しい100人 Vol.12】美音星からやって来た!身体表現アートの真骨頂……パフォーマンスアーティスト 美音異星人さん

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美音異星人さん
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「パフォーマンス・アーティスト 美音異星人さんが生まれたのは、1998年の第1回岡本太郎記念現代芸術大賞展。その際の作品「音感」でのパフォーマンスがきっかけです。パフォーマンスのほかにも、美音や身体性をテーマとした絵画、グラフィック、イラストレーション、音楽、映像なども随所で発表しておられ……」

 第5回「広島の楽しい100人」。観客たちが司会の登壇者紹介の声に耳を傾けている最中に、会場は突然真っ暗な闇に包まれた。明かりが消えたホールで観客がざわめく中、不穏な電子音が会場を駆け巡りやがてアナウンスが流れ出す。

「たった今入ったニュースによりますと、ロズウェルの砂漠地帯にUFOが墜落した模様です……」

 電気信号を思わせる宇宙語と思しき言葉が飛び交い、金属音が少しずつ高揚しはじめる。
会場内はまるでオーソン・ウェルズの火星人襲来事件のようなシチュエーションだ。

「美音ー!フラーッシュ!!」

 掛け声とともに暗闇の中に白いフラッシュライトが飛びかい、チカチカと時折光の中に見えてきたのは、カラフルな仮面に宇宙的な衣装を身につけた異形だ。音楽はいつの間にかビート感あふれる電子音となり、会場を走り出すフラッシュライトの明かりに「美音フラッシュ!」の叫び声を織り交ぜた歌がこだまし、踊る「宇宙人」の姿が浮かび上がる。やがて風を切る遠い音とともに聞こえてきたのは、神経を逆なでするあの金属音でありながら、美しく心地よい、宇宙の風の調べとでも言える音楽だ。

 不穏から高揚、絶頂から静穏へ。明かりがついた会場の観客の前に立っていたのは、カラフルなバネのついたマスクをかぶり、七夕かざりの切り絵のような白いボディをまとった宇宙的な姿だった。

「地球の皆様、美音異星人です。地球から1億6千万美音光年離れた美音星からやって来ました。本当は広島にやってくる予定ではなかったのですが、時空の狂いで地球の平和都市広島に不時着して、10年以上経ちます……」

 マスクの向こうに、澄んだ黒い瞳が覗いている。先ほどの激しいパフォーマンスとはうってかわった優しい語り口に、観客も興味津々だ。

 宇宙の風のような音を出していたのは、美音発生装置の美音マシーン。「どこかで見たような」地球の材料でできているが、美音星基準の心地の良い音を発生するために製作されたという。地球での美音さんはパフォーマンス・アーティスト。先日は広島の繁華街でのイベントに参加したが、口の悪い酔っ払い達も美音マシーンには小さな子供のように耳を澄ました。

「地球のアウェイな会場でも、酔っ払いを対象にした地球人洗脳計画の成功しました」

 美音異星人さんのこの日の白い衣装は「ソフトタイプ」。会場のスクリーンに映し出されたカラフルなバネが全身にあしらわれたものはアーチスト養成ギブスと呼ばれる「ハードタイプ」で、あまりのバネの強力さにリハーサルの時に倒れたほどだという。

「美音星に比べると、地球の重力は重たい。お前の責任だ!と責任を押し付けられたり、何億人もクレーマーがいたり、とてもじゃないけれど素のままで生きていることが不可能なほど、地球の重力は重たい。だから美音星の最新技術で、100円均一でストラップを買い占めてギブスを作って生活するんです」

 活動を始めた当初、広島の土壌もあり、あまりにも前衛的なパフォーマンスを受け入れられない時期もあった。しかしその後地道に活動を続けた結果、現在ではいろいろなところからも誘いを受けるようになったという。広島で行われた「変態パフォーマンス級ドリームマッチ」では日本各地の身体表現アーティストとの異種格闘技的共演を、また、台湾で行われたパフォーマンスイベント「超肉体進撃大作戦」では、台湾のアーティストとのコラボレーションも果たし、台湾国内5ヵ所でパフォーマンスを行った。

「台湾のアーティストは、自分たちの社会を変えたいという思いがあるので、日本と比べると体を張った命がけのパフォーマンスを行います。それを思うと日本のパフォーマンスは大人しいものです」

 広島で子供達を中心に絵画やアートを教える先生であり、自らも絵画などを創作している芸術家・美音さんからの、日本アートに対する鋭い一言だ。

 美音さんが美音発生装置とともにインスタレーションを展示していた東広島の「西条酒蔵芸術祭Connect」や、広島の繁華街アリスガーデンで行われた「変態パフォーマンス級ドリームマッチ!!inブルーラボ」など、地方ながら広島のアートイベントは独創的でパワーのあるものが多い。広島でさまざまな即興アートが広く一般に浸透しつつある中で、美音さんが一度目にしたら忘れないその強烈なパフォーマンスを継続的に行ってきた功績は大きい。昨年の台湾に続き、平和都市広島から海外への進出も意欲的だ。

 残念ながらMARSの影響のため一旦中止となってはいるが、韓国 大邱市での個展も企画されている。ピンクダンサーズと呼ばれるバックダンサーとともに、パフォーマンスを披露する予定だという。

「美音マシーンが空港で引っかかったら、空港で踊って伝える必要がありますね。」

 日本社会での現代人の生きづらさ・解離感を、身につけたコイル状のバネのようにくるくると覆い隠して、美音異星人さんは今日もアーチスト養成ギブスに身を包む。叫び踊りながら空港を滑走する美音さんの姿がニュースに登場する日も、そう遠くはないのかもしれない。
《築島 渉》

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