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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第37回 3キャリアがiPhone発売!勝負は地方で決まる!?

エンタープライズ モバイルBIZ
木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
  • 木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
  • 会場に用意された「iPhone5c」にdocomoの文字が
  • iPhone5s、前面パネルはホワイトとブラックの2色
 次に、NTTドコモによるiPhone取扱によって、ユーザーのスマートフォン利活用はどう変化していくのだろう。

 筆者はNTTドコモのiPhone販売開始が地方エリアでのスマートフォン普及率の底上げと、そうした地域でのICT利活用のさらなる加速につながるものと期待している。総務省が公表している「平成24年通信利用動向調査」を見ても、スマートフォンを用いたインターネット利用率では地域差が見受けられる。利用率トップの神奈川県が38.5%、2位の東京都37.8%などに対し、最下位の秋田県は21.8%、続く高知県、岩手県、青森県が22.0%など、半数近くの県が20%台にとどまっている。しかし実際にそれぞれの地方に足を運んでみると、その差はデータ以上のものであることを痛感させられるはずだ。公共交通機関の乗客が利用している端末をチェックしてみると、都市部と地方都市では状況は大きく異なる。都市部ではすでに大半のユーザーがスマートフォンを利用しているが、地方エリアではスマートフォンの普及はまだまだこれからといった感じなのだ。

 こうした地方エリアのユーザーに話を聞くと、通話主体の利用においてNTTドコモの通信品質への信頼が厚いことが分かる。またスマートフォンへの買い替えもきっかけをつかめていないような状況だ。NTTドコモでもこれまでAndroid OSを搭載したスマートフォンを発売してきているが、地方エリアではやや敷居が高い存在だったのだろう。一方でiPhoneへの関心はそれなりに高く「他の通信キャリアに乗り換えてまでiPhoneを欲しいとは思わなかったが、NTTドコモでiPhoneが出るなら購入したい」というユーザーが、じつは潜在的にかなりいるのではないかと感じるのである。こうした層を中心に従来型携帯電話からiPhoneへの乗り換えが急速に進むことで、地方エリアのスマートフォン普及率を飛躍的に高めるのではないかと考える。

 スマートフォンが十分に普及していけば、スマートフォンを活用した様々なサービスの利用にも拍車がかかる。すなわち地方エリアでのICT利活用のさらなる推進に期待が持てる。じつはICTの利活用というのは、公共インフラが十分に整備された都市部よりも、整備が行き届いていない地方エリアのほうでメリットを活かせるはずなのだが、ユーザー側のアクセス端末となるスマートフォンの普及が遅れているためにこれまで有効に活用されてこなかった一面がある。しかも、教育分野や医療分野におけるタブレット等の活用の例に見るように、ICT利活用のためのソリューションの中にはiOSでの利用を想定して作られたものも少なくない。NTTドコモがiPhoneを取り扱うということは、いずれiPadも取り扱うに違いないことになろうから、法人ビジネスにも強いNTTドコモがiOS端末を扱っていくことで社会でのICT利活用シーンは一段と活性化していくものと思われる。

 これまで独自端末や独自サービスで差別化を図ることで顧客獲得合戦を繰り広げてきたわが国の通信キャリアにとっては、独自サービスを入れ込む余地がないiPhoneの全通信キャリア導入により本来の通信インフラでの勝負を迫られることになった。しかしこれはユーザーから見れば、ようやく健全な競争環境が整ったといえる。これまで通信キャリア同士が加入者数やMNP数といった数値目標に振り回され、消費者を置き去りにした競争を繰り広げてきたわけだが、新型iPhoneの発売がこうした販売方法の見直しも含むキャリア施策の転換点となることを期待したいものだ。
《木暮祐一》
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