【木暮祐一のモバイルウォッチ】第36回 iPhone取り扱いでも安心できないNTTドコモ | RBB TODAY

【木暮祐一のモバイルウォッチ】第36回 iPhone取り扱いでも安心できないNTTドコモ

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木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
  • 木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
  • 新型iPhone発表に加え、NTTドコモが同機を販売するかにも大きな関心が集まる
 新型iPhoneの発表を控えた6日、各メディアが一斉にNTTドコモがiPhoneを発売するという報道を行った。NTTドコモはこうした報道を否定しているが、時期が時期だけに真実味を帯びた話だ。iPhoneをラインアップに揃えていなかったNTTドコモは、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルとの競争で劣勢に立たされ、「一人負け」の状態が続いてきたが、ようやく巻き返しを図れるということだろう。果たして、NTTドコモの目論見どおりユーザー離れを食い止め、さらにKDDIやソフトバンクモバイルに流れたユーザーを回帰させることができるのだろうか。

 端末別販売実績で最人気を誇るiPhoneがいよいよNTTドコモでも取り扱われるようになるということは、ユーザーにとっては使いたい端末と通信キャリアを自由に選べるようになるという点で大いに歓迎すべきことであろう。一方で通信キャリアにとっては、いよいよ本当の勝負を迫られる正念場の到来ということになる。

 各キャリアの主力製品がスマートフォンにシフトしてから、わが国のモバイルビジネスは大きな転換を迫られるようになった。従来、端末もコンテンツサービスも、通信キャリアが仕様を策定し独自端末の供給をメーカーから受け、その上で各キャリアごとのコンテンツサービスを展開することで差別化を図ってきた。しかし、共通のOSを採用したスマートフォンの時代となり、端末開発の主導権は端末メーカーに移り、同型のモデルが各キャリアで取り扱われるようなことも増えてきた。コンテンツビジネスも同様に、スマートフォンの普及と共に主導権がキャリアから奪われた形だ。

 最人気のiPhoneが3キャリアで取り扱われるようになるということは、ユーザーから見ればどの通信キャリアを選ぶのかという点で比較するのは「通信品質」と「通信料金」ということになってくる。iPhoneの3キャリア取り扱い開始によって、いよいよ通信キャリア各社は通信事業の原点回帰を迫られることになろう。

 かつて音声通話しかできなかった携帯電話の時代に対し、昨今の通信事情は大きく変わっている。まず、各通信キャリアに割り当てられている通信用無線周波数が非常に複雑であること。さらに、採用している通信方式も多様な上、端末のほうでの対応もまちまちである点だ。「どの通信キャリアの電波エリアが良い」といった比較が簡単にできなくなりつつある。とくに主力通信方式となるLTE方式において、次期iPhoneの対応が気になるところだ。これ次第で国内各通信キャリアの悲喜劇が繰り広げられることになる。

 現在市販されているiPhone 5は、LTE方式では2GHz帯と1.7GHz帯に対応している。KDDIは800MHz、1.5GHz、2GHzでLTE方式のサービスを展開しているが、主軸は800MHzのため、iPhone 5ユーザーからは不満の声も出ていた。一方、ソフトバンクモバイルは2GHzでのLTE方式を展開していたものの、さらにLTE方式のエリアを充実させるために1.7GHzでLTE方式を展開していたイーアクセスを買収したことは記憶に新しい。

 一方、NTTドコモも800MHz、1.5GHz、2GHzでLTE方式を運用しているが、東名阪エリアでは1.7GHz帯の免許もあり、もしiPhoneの取扱いを始めることになった場合はこの周波数帯をLTE方式に転用することでトラフィックをさばくことを想定していものと考えられる。800MHz帯や1.5GHz帯のLTE方式は現行のiPhone 5ではサポートしていなかったが、次期iPhoneをNTTドコモも取り扱うとなれば、おそらくアップルはこの周波数帯にも対応することになろう。

 ソフトバンクモバイルはLTE方式のほかAXGP方式(ソフトバンク4G)のネットワークも構築しているが、これも現行iPhoneでは利用できなかったのだが、中国市場に力を入れていくとしているアップルの方針を見ると次期iPhoneではTD-LTE方式を採用する可能性もあり、これがソフトバンクモバイルのAXGP方式と互換性があるため、ソフトバンクモバイルのiPhone利用エリアはさらに広がる可能性もある。

 通信品質は加入者数によっても大きく変わる。同じエリアに同じネットワークを利用するユーザーが多ければ、その分通信速度は遅くなり、接続率も落ちる。そういう点では、まだNTTドコモは国内最大の6,000万人を超える加入者を誇る通信キャリアであり、限られた周波数帯域の中でユーザーの通信をさばいている状態だ。NTTドコモでiPhoneの発売を願うユーザーが多い一方で、こうした人気端末によってさらに加入者の流入や、通信トラフィックの増加が見込まれ、どこまで通信品質を保てるかが注目点だ。現状、Xiエリアの対応は決して速いと言えるもではない。このままの状態でiPhone発売に踏み切るとユーザーの不満が高まる可能性も否定できない。

 今回のNTTドコモでのiPhone発売決定が本当ならば、ユーザーの通信キャリアに対する品質と料金比べは一段と拍車がかかることになろう。たとえNTTドコモもiPhoneを獲得できたからといって、まだまだ油断はできない状態だ。
《木暮祐一》

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