【木暮祐一のモバイルウォッチ】今、NTTドコモに求められる役割……「CEATEC JAPAN 2012」総括 | RBB TODAY

【木暮祐一のモバイルウォッチ】今、NTTドコモに求められる役割……「CEATEC JAPAN 2012」総括

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NTTドコモのブース
  • NTTドコモのブース
  • 視線で操作ができる「ibeam」。利用シーンはこんなシチェーションなのだろう。
  • 握り締めた部分の力の強さを感知する「Grip UI」。写真は握った場所と強さを画面上に表示させたイメージ。
  • 参考出展されていた「ハンズフリービジュアルホン」。
  • トヨタ自動車Smart INSECT
  • ドライバーの顔や動作を認証し、ドアを開いたり、セキュリティーモードを解除したりする
  • 「自動運転」のデモンストレーション中の「日産NSC-2015」
  • NTTドコモの「はなして翻訳 」が米国メディアパネル・イノベーションアワードのソフトウェア部門グランプリを受賞
 「Smart Mobility Innovation」を掲げた今年の「CEATEC JAPAN 2012」も6日に幕を閉じた。これまでは家電製品そのものの展示が目を引いたCEATEC JAPANだったが、今年は明らかな変化の兆候が見てとれた。それは家電製品や自動車のネットワーク化により、情報連携を一層強めていることを象徴するような展示が多くなってきたことだ。こうしたネットワーク連携の未来像は以前からいわれてきたことだが、いよいよ現実のものとなってきたという実感が沸いてきた。

 様々な機器がネットワーク化していく上で重要な役割を果たすのは、常に人々の掌中で利用されているスマートフォン等のモバイル機器だ。コンピュータがダウンサイジングし通信機能を備えた位置づけにあるスマートフォンは、オープンなプラットフォームとも相まって、こうした自動車や家電製品等のネットワーク化を促進させる役割を果たしているように感じる。

 さらにスマートフォンの急速な普及により、スマートフォンを軸に様々なサービスの活用が可能になったという社会背景も大きな後押しになっている。つまり、スマートフォンは通信業界だけにとどまらず、さまざまな業界に情報利活用という視点から好影響をもたらすムーブメントなのだろうということが実感できた。そしてあらゆる情報機器連携の中で、中心的な役割を果たすのも、間違いなくスマートフォンということになろう。会場では、トヨタの「Smart INSECT」のデモや日産によるスマートフォンからの無人操作などにも人だかりができていた。

 スマートフォンブームのトリガーとなったのはiPhoneの登場であることは疑う余地はない。しかし、今後展開される情報機器連携に向けて、主要なベンダーやメーカーとタッグを組み、近未来の豊かな生活の実現に向けて研究開発に勤しむのが通信事業者の本来の役割である。

 世界の通信事業者はあくまでもユーザーに対して通信インフラを提供すること自体が主業務となっているのだが、わが国の通信事業者の場合は通信インフラの提供はもちろんのこと、それらを実現させるための研究開発事業にも余念がない。とくに今回出展していたNTTドコモの研究開発力の高さは世界から高い評価を得ているが、国内産業の力が問われている現在、グローバルに向けての国内の技術開発力を計る上で、筆者が注目したキャリアが同社であった。

■クローズなアップルとオープンなドコモ

 ケータイやスマートフォンは、それ単体だけでは利用することはできない。ネットワークに接続して初めて通話や通信が利用可能になる。さらに多様なアプリをインストールしたり、Webにアクセスすることでコンテンツを利用できる。すなわち、モバイル機器を活用していくためには、端末を供給する端末メーカーはもとより、コンテンツ流通や決済などを担うプラットフォーマーや、通信ネットワークを提供する通信事業者とがコラボレーションできてはじめて便利なサービスとしてユーザーに評価されるようになる。

 人気のiPhoneの場合は、アップルというメーカー自身が端末開発からコンテンツ流通、その決済等までを独自に提供し、ネットワーク部分はアップルと諸国の通信事業者がタッグを組む形でサービスの提供を行っている。ユーザーにとってはパッケージ化されたサービスが分かりやすいかもしれないが、一方で他のサービスベンダーや端末メーカーの参入の余地はなく、言ってみれば“閉じた”サービスといえる。

 一方、NTTドコモの場合ははるか以前から、オープンな体制でベンダーやメーカーと協力関係を結び、サービスの開発と提供を行い、様々なコラボレーションによるサービスの創出を実現させてきた。ステージでデモされていたパナソニックの電子レンジやソニーのポータブルスピーカーとの連携、その他照明器具などのコントロールはその一例だろう。さらに、今回はそれらの連携にクラウドが介在し、個人に最適な情報を最適なタイミングで提供するシーンが訴求されていた。

 生活の中心がスマートフォンなどモバイル端末にシフトしたことで、スマートフォンは生活のなかの重要なハブとなり、通信事業者のネットワークを通じて有用なサービスを享受できるものが非常に増えてきたと感じた。今後重要視されていくのは、オープンなスタンスで様々な企業等とコラボレーションを図っていく姿勢だろう。

■研究開発の規模や奥深さはどこにも負けないNTTドコモ

 「CEATEC JAPAN 2012」開幕3日目、NTTドコモの「はなして翻訳 」が米国メディアパネル・イノベーションアワードのソフトウェア部門グランプリを受賞した。「はなして翻訳」は、ケータイやスマートフォンで話した会話が、電話網を通じて同社のクラウド上の翻訳エンジンで認識・翻訳され、相手側の言語として読み上げられてリアルタイムに伝わるユニークなサービスだ。英語・中国語・韓国語の通話ほか、10ヵ国語の対面利用が可能だ。

 重要なのは、この技術が単に未来的というだけでなく、サービスとして実現可能な技術として海外メディアから評価されたことだ。「2012年の受賞者、NTTドコモの翻訳ソフトウェアは、これまで異なる言語の架け橋を求めてきた多くの人々にとっての最新のソリューションと言えるでしょう。翻訳は今から60年前、スパコンの時代にまで遡る大きなの課題のひとつでしたが、当時、素早く正確で流暢な翻訳には遥かに及ばないものでした」「ドコモの今回のソフトウェアは品質と速度の点に於いて大きな進歩といえます。審査員の一人でバイリンガルのHubert Ngyuen氏は彼が過去に試した多くのその他のものとレベル違いであると感想を述べました」(engadget editor-in-chief/Tim Stevens氏)、「多くの人が言語の問題に挑戦し続けてきたものの殆どのものが解決に至らなかったが、これは素早くて有効な翻訳が可能だ」(Wired.com editor-in-chief/Evan Hansen氏)など評価された。

 CEATEC JAPAN 2012では、コンシューマエレクトロニクスが対象という展示会特性上、ユーザーに比較的身近な要素技術の展示が主体であったが、ここで展示された技術は本当に一部に過ぎない。NTTドコモでは、横須賀にあるYRPの研究所にて常に近未来の技術を研究している。すでに昨年出展されたものを例に挙げても、遠隔の相手に手元で物体を触っている感覚を伝える「触力覚メディア」、携帯電話をかざした方向の店舗や友人を検索できる「直感検索・ナビ」など新しいUIの実演は、ほかでは見ることができなかったものだ。今年も、目の動きや握り方による端末操作など、一歩先を行く技術に注目が集まった。今回の受賞とサービスインは、それらの成果が着実にサービスに反映されていることを実感させるものだ。

 現在、我が国の経済状況は厳しい状況にある。ネットワークや端末など、モバイルという利用環境では活用に何かと制約が多いため、通信技術と端末技術の研究開発は共に足並み揃えて行われ、商品化していく必要がある。通信事業者と端末メーカー、ベンダー等が密にコミュニケーションを図り、コラボレーション体制を築いて商品やサービスを開発することが重要だ。護送船団方式と揶揄されることもあるが、これがわが国のモバイルサービスの発展を支えてきたのも事実だ。わが国の通信サービスを支えてきたNTTドコモだが、端末メーカー、ベンダーとの親密なコラボレーション関係によって実現されてきたものであるし、こうした体制を再構築することで、日本の端末メーカーの再興も実現できるはずだ。
《木暮祐一》

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