【インタビュー】業界の成長モデルとなるか?新生YCV 原田社長に聞く事業戦略 | RBB TODAY

【インタビュー】業界の成長モデルとなるか?新生YCV 原田社長に聞く事業戦略

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代表取締役社長 原田廣人氏
  • 代表取締役社長 原田廣人氏
 横浜ケーブルビジョンは、「ケーブルテレビ・アワード 2011」のスピード部門で最優秀事業者となった。同アワードのスピード部門は、RBB TODAYの「スピード計測」の実測データから、事業者ごとの計測値の平均で争われる。計測数が規定に満たない事業者は集計から除外されるので、その事業者のインフラクオリティの指標としては定評がある。

 その横浜ケーブルビジョン(YCV)は、10月7日、ジュピターテレコムと東急電鉄によって共同買収され、業界からも注目されている事業者である。今回は、代表取締役社長に就任した原田廣人氏にインタビューを行い、共同買収による新しい事業展開や戦略に聞いた。

――社長の簡単な経歴を教えていただけますか

 昭和55年に住友商事に入社して、平成9年まで17年間は人事部の仕事をしていました。ケーブルテレビ事業は、平成9年4月にメディア事業本部に移ってから携わるようになりました。平成12年1月には大阪ケーブルテレビ(現ジェイコムウェスト)でカスタマサービス部や企画編成部などの部長職を複数兼任し、平成15年10月には浦和ケーブル・テレビ・ネットワーク(現ジェイコムさいたま)の代表取締役社長に就任しました。さらに平成18年10月にジェイコム関西の代表取締役社長となり、平成20年にジェイコム関西がいくつかのケーブルテレビ事業者と合併しジェイコムウェストになった際には、同社の代表取締役副社長に就任しました。そして、先般の発表のとおり、今年の10月に横浜ケーブルビジョンの代表取締役社長となりました。

――9月の発表は、業界では異例の買収のように受け取られていますが、このような共同買収は業界初とみてよいのでしょうか

原田氏:確かに、ケーブルテレビ事業者を保有する会社が、その株を売却したり、筆頭株主から外れるようなケースで、保有株式を残さずすべてを売却するというのは珍しいかもしれませんが、今回のケースが初めてというわけではないと思います。ただし、ジュピターテレコムが、ケーブルテレビ事業者を買収するとき、同業であるイッツ・コミュニケーションズの親会社である東急電鉄と共同買収というのは、ジュピターテレコムの買収事例の中でも初だと思います。

――2社に買収されたYCVとして、新しい戦略はだいぶ固まってきたのでしょうか

原田氏:双方のメリットを活かすという意味で、骨格部分は固まっています。まず、営業、プロモーション、サービスメニュー、コンテンツについてはジェイコムグループの力を活かします。ネットワークやシステムなど技術的な部分や、コミュニティチャンネルの番組制作・編成は、イッツコムの品質やノウハウを活かす、という形で協業の役割分担はできています。ただ、YCVという社名やブランドはそのままですし、YCVのインターネット回線の上位接続やCATVのヘッドエンドより上はイッツ・コミュニケーションズのインフラですので、現場としてはあまり意識はしていません。

――その中で新しくなる部分はどのあたりでしょうか

原田氏:まずユーザーとの接点の部分だと思います。営業・マーケティング部分において新規の顧客開拓や加入後のサービスなどの品質および満足度の向上を目指します。これは、単にARPUを上げるといったことではなく、チャネル数、コンテンツのラインナップ、そして料金プランなどをさらに充実させていきます。例えば料金プランについては、J:COMが展開しているようなメニューを揃える予定でいます。それ以外にも、ホームページのディスクスペースやアンチウイルスサービス、あるいはホームセキュリティといった展開なども考えています。こちらは、イッツ・コミュニケーションズのノウハウが活かせます。また、YCVは23年の歴史がある企業ですので、長期ユーザーへのメリットも拡充していきたいと思っています。たとえば長期のユーザーに対して、専用番号でつなぐことができるコールセンターサービスを提供したり、ジェイコムグループが持つ社員向け福利厚生施設を利用できるようにしたりです。ユーザーとしては、これまでどおりYCVを利用してもらいながら、中身はJ:COMとイッツ・コミュニケーションズのいいとこどりになっている、そんなイメージを持っていただくことを目指します。

――YCVのサービスエリア内のユーザーの特徴を一言でいうとどんな感じでしょうか

原田氏:そうですね。私鉄沿線のベッドタウンという意味で東急電鉄のイッツ・コミュニケーションズのエリアに共通している部分は多いと思います。ちなみに、サービスエリアの世帯数は30万ほどです。YCVの本社がある二俣川駅で1日の乗降客数は8万人といわれています。地域での特色は分類しにくいですが、やはり交通のライフラインとして相鉄線を利用する人が対象となるのでしょう。

――相鉄グループとの関係は今後どうなるのでしょうか

原田氏:買収にあたって、「事業を引き継がせていただきますが、サービス提供はこれまでの品質を維持し、さらに付加価値を高めたいと思っています」と相鉄グループに説明しています。今後も最大のパートナーとしてさまざまな面で協力していけると思っています。例えば、YCVのエリアは北と南をイッツ・コミュニケーションズ、ジャパンケーブルネット(JCN)に挟まれ、東西はジェイコムグループのエリアです。このエリアをまたぐ形で複数のマンションを持っているオーナーにしてみると、地域ごとにケーブルテレビのサービス内容がばらばらよりは、揃っていたほうが管理がしやすいし、人気のサービスに合わせたいと思うでしょう。そんなニーズにも対応できると思っています。また、電車車両内のデジタルサイネージですが、これも東急にシステムやコンテンツを提供しているイッツ・コミュニケーションズのリソースを活かして拡充していきます。

――それは、2019年に予定されている相鉄線と東急線の相互乗り入れを視野に入れた戦略と考えてよいでしょうか

原田氏:相互乗り入れの影響は大きいと思うので、相鉄グループとしては、沿線のまちづくりの一貫として価値の向上や開発のプランはあると思いますが、YCVは直接相互乗り入れに関する戦略を立てるということはありません。当社サービスをさらに充実させることで、それを支援する形になると思います。住友商事、東急電鉄、相鉄といったレベルでは、もっと広域レベルでの戦略が可能になります。それぞれは、サミットストア、東急ストア、相鉄ローゼンというスーパーマーケットを持っています。これらのオペレーションやサプライチェーンなどでの共有や共通化、ケーブル局などのメディアを活かしたキャンペーンなど、資本関係の有無を越えた連携や協業の可能性も検討できるようになるのではないかと個人的には思っています。

――可能性は大きいということですね。そのときまでにどんなサービスを展開していけばいいと思いますか

原田氏:ケーブルテレビ業界は、2000年までは片方向のテレビ放送だけでした。2000~2010年までは双方向テレビとなり、それにインターネットサービスが付加されるようになりました。2011年からの10年は、このプラットフォームを使っていかにユーザーにケーブルテレビをエンジョイしてもらうか、いかにサービスを濃くしていくかの時代になると思います。YCVのメインのエリアである旭区は、横浜市内でも平均年齢が高い区でもあります。地域のケーブル局としては、高齢者への医療支援や買い物支援など取り組むべき課題もあります。スマートフォンがテレビやSTBのリモコンになる時代もくるでしょう。さらに、これからリタイヤしてくる人は、仕事でPCを使っていた人ばかりです。このような人向けに新しいサービスパッケージの開発も必要でしょう。

――具体的な追加サービスのプランなどはありますか

原田氏:詳細はまだ公表できませんが、4月には、YCVのコンテンツ、およびメニューに新しいものを投入します。新しいサービスパッケージは、YCVでワンストップで利用できますが、すべてを自前で用意するのではなく、パートナー戦略を強化する方向で考えています。営業についても増員を計画しており、レスポンス対応だけでなく新規開拓にも力を入れます。YCVの多チャンネルの契約率は14%と全国平均より低いのですが、コンテンツの充実やメニューの拡充によって、これを上げていきます。以上のようなニーズを拾い上げ、新しいサービスを提供していけば、私はケーブルテレビ事業のさらなる成長は可能だと考えています。
《中尾真二》

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