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【レビュー】超解像技術がすごい新世代ディスプレイ……「EIZO FORIS FS2332」

IT・デジタル 周辺機器
「EIZO FORIS FS2332」
  • 「EIZO FORIS FS2332」
  • 23インチで解像度はフルHD(1920×1080)。表面処理はノングレアだ。実勢価格は3万5000円前後。赤いキャラクターラインは青のものも付属しており、自分で貼り替えができる。
  • いかにもEIZOらしい無骨なデザインのボディ。LEDバックライトだが特に薄型というわけではない。
  • 入出力端子はDVI×1、HDMI×2、アナログ×1。アナログ接続をすると動画領域補正など一部の機能が使えなくなる。
  • リモコンはちょうど片手で持って全てのボタンを押せる大きさ。非常に使いやすい。
  • 本体のボタンは電源、ボリウム、入力切替のみで、メニュー操作はできない。電源を完全に落とす主電源スイッチは背面にある。
  • Smart Resolutionの設定メニュー。補正の強さを1~5まで調整できるほか、肌補正、文字補正、動画領域補正の有効/無効をそれぞれ設定できる。
  • デモモードにしたところ。左の黄色枠内が補正、右が未補正。また、動画再生部分に紫色の枠が表示され、正しく認識されていることを確認できる。動画領域の認識には2~3秒かかるようだ。
■飾りではない使える超解像技術「Smart Resolution」

 液晶ディスプレイの進化がものすごい。かつてはもっとも変化しない周辺機器と言われたものだが、IPSパネルの一般化やフルHD解像度の普及、大画面化、LEDバックライトなどなど、ここ数年で凄まじい変革を見せているだ。いまや液晶ディスプレイは新しい時代に入った感があるが、その新世代ディスプレイの代表ともいえるのが、EIZOのFORIS FS2332だ。

 EIZOブランドを展開するナナオは、デザイナーや写真家などが使うプロユースのディスプレイとして圧倒的な支持を得ている。そのEIZOの製品でIPSパネル、LEDバックライトとくれば画質がいいのは約束されたようなものだが、それだけでは新世代とはいえない。最新の超解像技術「Smart Resolution」こそが、本機の新世代たる所以だ。

 超解像技術は動画や静止画をアウトプット側で処理することにより鮮鋭化、高画質化する技術。最近の液晶ディスプレイでは特に珍しい機能ではないが、正直なところ、あまり効果が感じられなかったり不自然な画質になってしまう場合も多い。カタログを飾るための機能かと勘ぐりたくなるほどだ。

 本機の「Smart Resolution」はどうなのか。実際にいろいろな動画で試したが、その効果は確かなものだった。とくにネットのストリーミング動画を再生した時の効果は印象的で、ボンヤリした低ビットレートの動画が、かっちりとメリハリの効いた画質になる。しかも、動画を補正したときにありがちなザラつきやトゲトゲしさがほとんどないのだ。もちろん、注意してよく見ればやはり補正されているな、とわかるのだが、パッと見ただけだと本当に解像度が上がったような印象だ。もともと高画質なBDではあまり効果が感じられないなど万能ではないが、それでもやはりこれは飾りではない、ちゃんと使えるレベルに達している。

 使えるという意味では、本機で初めて実現した「動画領域補正」が大きく貢献している。これまでの超解像技術はウインドウで動画を再生してもそれ以外の領域まで補正されてしまうし、そもそも動画を再生しないときには切っておく必要がある。その煩わしさが超解像技術を「使えない」と印象づけてしまう。

 ところが、本機では動画を再生するとその領域を自動判別し、そこにだけ動画用の補正をかける。その様子は本機をデモモードにすると確認できるが、PCとは無関係にディスプレイ単体でこのような処理をしていることには驚くほかない。この機能のお陰で、動画用の補正は絶対に動画だけにしか有効にならない。いちいち設定を切り替える必要もないのだ。

 「Smart Resolution」にはテキスト部分をくっきりと表示する文字補正もある。ディスプレイのある部分は動画、別の部分はテキストといった、最近では極めて普通の使い方で、どちらにも最適な補正ができるのだ。また、「肌色補正」により人肌を自然に再現する。人間の目は人間の肌の色合い、質感に極めて敏感なので、この機能が画質の印象に与える影響は非常に大きい。

■基本的な画質が高く、カラーモード切替も実用的

 すでに人気商品となっている本機だが、ネットでユーザーレビューなどを見ると、必ずしも動画やゲームのために選んだ人ばかりでもないようだ。「EIZO+IPSパネル」というところに価値を見出しているユーザーも多いようで、たとえば動画など興味がなく、とにかく目が疲れないディスプレイを求めて本機を選ぶ人も少なくない。

 そこで動画以外の画質もチェックすると、ひと言でいってIPSパネルのメリットをよく引き出した画質といえる。最近はIPSパネルの価格低下が著しいが、中には視野角の広さ以外は安価なTNパネルとあまり差が感じられない製品もある。しかし、本機のコクのある色味はまさにIPSパネルならではのものだ。また、ブライトネスを下げても色味が変化せず、白が曇ってしまうこともない。昼間のオフィスでなく夜の自宅でPCを使う人は極端にブライトネスを下げているのが普通だが、その場合でもくっきりとした気持いい色のりを楽しめる。

 目の疲れにくさについては潜在需要が非常に大きいのだが、これを追求すればどうしても高価格な製品に行き着く。しかし、23インチクラスで3万円台の価格帯なら、本機は非常に優れているといえる。画質の傾向そのものはむしろ派手な方なのだが、チラツキがなく、また画質をどのように調整しても色やコントラストが破綻しないため、結果的に調整できる幅が広く、目が疲れにくい画質を追求できるのだ。

 目の疲れとも関連してくる機能として、カラーモード切り替えがある。要するにプリセットしてある設定を次々に切り替える機能で、これもよくある機能だ。ただし、本機のそれはリモコンに専用ボタンが設けられているなど、かなり力が入っている。

 プリセットされているモードはUSER設定が2つと、sRGB、Paper、Game、Cinemaの6通り。なんといっても眼を引くのが「Paper」で、これは電子書籍など文字を読むためのモードだ。やや暖色系の落ち着いた色合いになり、見たことのある人は少ないかもしれないが、DTP用ディスプレイに近い刺激の少ない画質となる。このモードでブライトネスを適切に調整すると、目に非常に優しい。色再現性を気にしない用途なら常用するのも悪くないモードだ。

 カラーモードも結局使わないという人が多い機能だが、本機は後述する付属ソフトによりモード切り替えを自動化できる。そのため非常に実用性の高い機能になっている。

 なお、カラーモードにはsRGBもあるので写真のレタッチ用途にも対応できる。sRGBはデジカメやプリンタ、ディスプレイでの色を揃えるための規格で、これに対応した機器ならとりあえずの色あわせができた状態になるからだ。さらにシビアな色あわせをしたければ、EIZO純正のカラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」で調整することも可能だ。

■使いやすいリモコン、付属ソフトも実用的

 細かい部分についてもできるかぎり紹介していこう。EIZOのディスプレイはスタンドが凝った作りものが多いが、本機は低価格ということもあってスタンドの機能は最低限。ゲームや映画鑑賞といった用途も考えるとスイベルくらいは欲しかった気もするが、稼働するのは上下方向の角度調整だけだ。ただし、スタンドも含めたボディの作りは非常にしっかりしており、やわな雰囲気は全くない。

 リモコンも同様によくできている。最近はやたらと大きなリモコンが付属するディスプレイが多いが、リモコンの使いやすさはすべてのボタンを片手で押せることが重要で、このリモコンの大きさ、ボタン配置は理想的だ。逆に本体はボタンの数も押しやすさも、リモコンをなくした時の緊急用といったレベル。もはやリモコン操作が前提で設計されていると考えるべきだろう。

 AV用途で重要になるスピーカーについては、やはり必要最低限と言わざるをえない。もっとも同価格帯のディスプレイの中ではまともな方だし、より低価格なディスプレイの背面に付いているスピーカーに比べればはるかに高音質だ。低音は全くないが、コモリやビビリといった決定的な破綻はなく、低コストなりのバランスはとれている。ちなみに、ヘッドホン端子はあるのでPC用スピーカー別途用意して使うなら、ここに接続するといい。そうすればリモコンによる音量調整が出来るからだ。

 もう一つ注目するべきなのが付属ソフトで、ユニーク、かつ非常に実用的なソフトが2本付属している。ScreenManager Pro for LCDはアプリケーションソフトごとにカラーモードを割り当て、プレイヤーソフトを起動したら「Cinema」、ゲームソフトを起動したら「Game」といった自動切り替えができる。また、各モードのパラメータ設定も可能だ。複雑なカラー設定をマウス操作でできるのは非常にありがたい。

 もう1本のScreenSlicerは非常にユニークなソフトでディスプレイを仮想的に分割し、そのひとつひとつにソフトを割り当てられる。使ってみないとイメージが湧きにくいが、たくさんのアプリを同時起動する人にはたしかに便利なアプリだ。

 EIZOでは本機を「エンターテイメント液晶モニター」と呼んでいる。動画再生が得意であることと、同社のプロユースに近いラインアップの中では下位モデルの位置づけとなるためのネーミングだと思われる。しかし、実際にこのディスプレイを使ってみた印象はむしろオールラウンダーだ。動画、静止画、テキストなどあらゆるコンテンツにハイレベルで対応し、弱点が非常に少ない。メーカー製PCの付属ディスプレイや低価格ディスプレイからステップアップしたい人にはうって付けといえるだろう。
《RBB TODAY》
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