スパンション、20nmのNANDフラッシュメモリを2013年に発売 | RBB TODAY
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スパンション、20nmのNANDフラッシュメモリを2013年に発売

エンタープライズ ハードウェア
米スパンション マーケティング&ビジネスデベロプメント担当シニアバイスプレジデント アリ・プールケラマティ氏
  • 米スパンション マーケティング&ビジネスデベロプメント担当シニアバイスプレジデント アリ・プールケラマティ氏
  • スパンションの「MirrorBitチャージ・トラップ技術」。単一の非導電性窒化膜内の異なる2カ所に、2つの異なる電荷量を格納することで、1セルあたり2bitを記録する。フローティング・ゲート技術と比べ、同構造がシンプルで、信頼性も高く、微細化も有利
  • 同社のビジネスモデルの進化。現在は特定アプリケーション向けチャージ・トラップ型不揮発性メモリと、組み込み系/オンンチップ集積向け分野に注力
  • 同社の車載向け分野での市場シェアは60%を超えている。用途としてテレマティクス、高度ドライバ支援システム、ナビゲーションシステムなどがあり、幅広く活用されている
  • スパンションのテクノロジー動向。微細化が進み、現在中心になっている65nmプロセスから、今後は45nm、32nm、22nmへと進んでいく方向だ
  • NOR型フラッシュメモリのセル・サイズの推移。グラフのように、90nmから32nmの微細化プロセスにともなって、コア有効セルサイズも50%ずつ半減
  • パラレル&シリアルNORフラッシュメモリのロードマップ。45nmプロセス製品が、2012年の下期にサンプル出荷される
  • SLC NANDとMLC NANDの性能比較。SLC NANDは耐久性、安定性、パフォーマンスに優れ、MLC NANDは大容量化、ビットコスト、発展性などに秀いでる
 NOR型フラッシュメモリ最大手の日本スパンションは27日、川崎本社において報道向けに技術説明会を開催した。スパンション社は、AMDと富士通の合弁会社として1993年にスタート。2003年に両社のフラッシュメモリ事業が統合され、Spansion Inc.となった。現在、世界22カ国に事業所があり、3,500種類以上の製品を幅広く提供している。同社は一昨年、経営危機に陥ったものの、現在は事業再建に向けた取り組みが順調に進んでいるところだ。組み込み分野に占める同社のシェアは市場全体の36%を占め、売上高は12億ドル(2010年)を超える。

 この技術説明会では、米本社からアリ・プールケラマティ氏(マーケティング&ビジネスデベロプメント担当シニアバイスプレジデント)が来日し、同社のメモリ技術について解説した。スパンションは「MirrorBitチャージ・トラップ技術」と呼ばれる独自技術を確立している。これは単一の非導電性窒化膜内の異なる2カ所に、2つの異なる電荷量を格納することで(セル内で空間的に別の場所に電荷を溜める)、1セルあたり2bitを記録する技術である。

 フラッシュメモリのデータ記憶技術には「フローティング・ゲート」と「チャージ・トラップ」(電荷捕獲)という2つの技術がある。このチャージ・トラップ技術を採用しているベンダーの代表がスパンションだ。従来のフローティング・ゲート技術と比べ、同社のMirrorBitチャージ・トラップ技術は構造が大変シンプルで微細化を進める上でも有利。信頼性も高く、はじめから2bit/セル構造を持つ。最終的なコスト効果もMirrorBitのほうが優れているという。

 同社は現在、特定アプリケーション向けチャージ・トラップ型不揮発性メモリと、組み込み系/オンチップ集積向け分野に対するビジネスに注力している。アリ氏は、MirrorBitチャージ・トラップ技術の優位性について「ソフトウェアの互換性、信頼性、マイグレーションの容易性が挙げられる」と強調する。またデバイスの動作温度の範囲が広がっている点も見逃せないところだ。従来のー40~+85度という範囲から、最高で+105度、さらに+125度までに対応する製品も登場する予定だ。

 これは車載向け半導体の要件として重要なファクターの1つになる。車載向け用途は、テレマティクス、高度ドライバ支援システム、ナビゲーションシステムなど幅広い。アリ氏は「実際にこの分野では売り上げも伸びており、我々の市場シェアは60%を超えている。このセグメントについて、今後も自動車業界のパートナーとともにマーケットを広げたい。また車載カメラや産業用アプリケーション分野の需要も見込んでいる」と述べた。

■スパンションのテクノロジー動向~NAND型メモリのサンプル出荷を開始!

 次にアリ氏は、同社のテクノロジーのトレンドについて説明した。微細化については現在65nmプロセスが中心になっているが、今後は45nm、32nm、22nmへと進んでいく方向だ。これまで同社が展開しているNOR型フラッシュメモリでは、90nmから32nmプロセスに至るまで、微細化にともなってコア有効セル・サイズも50%ずつ半減してきた。すでに45nmテクノロジーの認定作業は終了しており、ファンドリーに技術を移管している。性能や信頼性では65nmと同等な45nmプロセス製品が、2012年下期にはサンプル出荷されるという。

 「さらに現在は32nmの開発も進めているところだ。これはメモリの大容量化とコスト削減を目的としたもの。動作温度の拡大や、フラッシュ・ファイル・システムへの対応、高速インタフェースなど、多様化するユーザーの要望にも応えていく。さらに一歩進めて、MirrorBitテクノロジーをロジックに統合することで、プログラム可能なシステムソリューションなども提供していきたい」とアリ氏は語る。

 前述のように同社では、主にNOR型フラッシュメモリを中心に展開している。NORフラッシュメモリは不揮発性(電源を切ってもデータが消えない)であり、データ読み出し速度が比較的速い。ただし書き込み速度が遅いため、頻繁なデータ書き換えには不向きだ。そこで携帯電話やルータなどのファームウェアを格納するメモリなどに利用されている。一方、NAND型フラッシュメモリは不揮発性であり、ビットコストも低い。NORフラッシュメモリと比べ、データの書き込み速度も速いという特徴がある。このため音楽や映像などのメディアデータの格納に適している。

 最近ではNAND型を要望するユーザーも多くなってきているという。「そこでネットワーク、通信や、民生用機器、STB、デジタルTVなどの組み込みアプリケーション用途をターゲットに、NAND型メモリの展開を考えている」(アリ氏)という。同社ではNOR型メモリを補完するものとして、第4四半期にNAND型メモリのサンプル出荷を開始する。

 組み込みアプリケーション用途のNAND型フラッシュメモリには「SLC」(Single Level Cell)と「MLC」(Multi Level Cell)の2つの方式がある。前者の「SLC」は1つのセルの浮遊ゲートにある電子の蓄積量でビット(H/L)情報を記録する方式。後者の「MLC」は電荷量の違いを4つ以上の多値で判断することで、2ビット以上を記録する方式だ。アリ氏は両者の特徴を比較しながら、それぞれのメリットについて説明した。SLC NANDは耐久性・安定性・パフォーマンスに優れ、MLC NANDは大容量化・ビットコスト・発展性がメリットとして挙げられる。スパンションのNAND型フラッシュメモリはSLC方式を採用し、MLCと比較して10倍もの耐久性と、2倍のパフォーマンスを実現しており、特に組み込み用途に適しているという。

 またアリ氏は、NAND型フラッシュメモリのロードマップについても示した。まず年末に1GbのSLC NANDを提供し、来年末ぐらいまでに容量を2/4/8Gbまでに拡大していく方針だ。これらは、いずれも40nmプロセスとなる。現在開発中の20nmプロセスについては、2013年の下期に登場する予定。最後にアリ氏は「NOR型/NAND型に採用されているMirrorBitチャージ・トラップなど、我々が築いてきた技術を活用しながら、ハイパフォーマンス、高品質な製品のポートフォリオを揃えていく。NAND型に関してはライセンス供与という形で市場に提供したい。また組み込みシステムのコアであるワンチップマイクロプロセッサ/コントローラに隣接、またはオンチップに集積する形での展開も考えている。このような施策によって、次世代のエレクトロニクスを実現していきたい」と抱負を述べた。
《井上猛雄》
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