次世代組込み開発はUXにより差別化——Windows Embeddedロードマップ | RBB TODAY
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次世代組込み開発はUXにより差別化——Windows Embeddedロードマップ

エンタープライズ その他
マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンべデッド本部 シニアマーケティングマネージャ 松岡正人氏
  • マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンべデッド本部 シニアマーケティングマネージャ 松岡正人氏
  • Windows搭載組込み機器の市場
  • Windows系OSを組込み機器に搭載するメリット
  • クラウド時代の組込み機器、情報端末戦略。キオスク端末でさえリッチコンテンツを扱うことで差別化を図るようになるかもしれない
  • CE最後のバージョンとなるR3もSilverlignt対応。CE向けのSLコンテンツはブラウザ環境なしでも2.5D映像が楽しめるそうだ
  • Embedded製品と各ソリューションの関係
  • Window 7ベースの組込みプラットフォームのロードマップ
  • Windows Embeddedのラインナップ
 マイクロソフトは2日、Windows 7をベースにした組込み機器向けOSであるWindows Embedded Standard 2011をはじめとする、関連OSについて2010年のロードマップを含む記者説明会を開催した。Windows Embedded Standard 2011はコードネームがケベック(Quebec)と呼ばれていたもので、9月に米国で発表されたOSだ。今回の発表会は、その詳細を日本のプレス向けに紹介する目的で開かれた。

 説明を行ったのは、マイクロソフト OEM統括本部 OEMエンべデッド本部 シニアマーケティングマネージャの松岡正人氏だ。松岡氏は、パブリッククラウドを一般ユーザーが利用する代表的なシーンとして、写真や動画データをクラウドで共有、保存するようなサービスをあげ、今後このようにネットワークに接続する機器が増えてくるが、現在ではPC以外の機器でのインターネット接続は設定が面倒だったりするなど限定的であるとした。

 そのうえで、このような分野での組込み機器のチャンスについて、次のように述べた。グローバルにWindows搭載PCは数億台(IDC、ガートナー調べ)あり、Windows搭載スマートフォンは数十億台(IDC、全米家電協会調べ)あるが、Windows搭載の組込み機器は数百億台(VDC、IDC調べ)に達する。国内でもマイクロソフトは、USENのセットトップボックス(STB)、カラオケ機器、電子辞書などの事例があり、しかもPOS端末においては90%のシェアを占めており(JEITA調べ)、組込み分野でも決してマイナーなOSではないと説明した。

 その理由として、ネットワークに接続して高度なサービスを利用したり、エンタープライズ用途でも基幹システムやバックオフィス業務との連携部分でWindowsを搭載した端末との接続の容易さ、開発効率の良さなどを挙げた。今後、さまざまな機器がネットワークに接続され、業務システム、各種サービスとの連携が重要になる場合でも、Windows OS系のEmbedded、CEといったプラットフォームに優位性があることを強調した。

 続いて、9月に発表された一連のWindows Embeddedについて、それぞれの特徴をエンタープライズとコンシューマの適用分野に分けて説明した。

 エンタープライズ向けには、3種類のWindows Embeddedが発表されている。Windows Embedded Standard 2011(コードネーム:ケベック)は、産業機器や一般組込み製品を対象とした基本的なプラットフォームとなるエディションだ。これは、現在CTP(Community Technology Preview)が配布されている。Windows Embedded Enterprise ”Windows 7”とWindows Embedded Server 2008 R2は、それぞれの名前に含まれるWindows 7とWindows Server 2008 R2をほとんどそのまま組込み機器に搭載できるようにしたものと思えばよいだろう。この2つのエディションでは、デスクトップOSと同じアプリケーション環境や仮想化を含むサーバー機能を組込みシステムに実現できる(相応のハードウェアスペックは必要となる)。

 これらWindows Embeddedの特筆すべき点は、Silverlight、マルチタッチといった高度なユーザーエクスペリエンス(UX)をサポートできる点と、医療システム、制御機器、ロボットなどの応用を考えた「ロケーション&センサープラットフォーム」という機能を搭載している点だ。前者は、機器のユーザーインターフェイス部分で、Silverlightによる3D動画などが利用できるということを意味する。そのための開発環境として、Visual StudioやExpression BlendといったデスクトップWindowsでの環境やリソースが当然活用可能だ。こちらは主にコンシューマ製品の開発で威力を発揮するだろうとのことだ。

 松岡氏によれば、現在、デジタルテレビ、携帯電話、カーナビ、メモリオーディオ、DVDレコーダなどでは、データ管理などで、PCが接続先の中央に位置することが多いという。今後は、このPCからWindows Liveのようなクラウドコンピューティング環境に代わってくるとして、ここでもブラウジングやタッチパネルインターフェイス機能が充実した組込み機器(端末)が重要になるだろうと予想している。

 ロケーション&センサープラットフォームは、デスクトップOSとしてのWindowsと同様なデバイスドライバの共通フレームワークを提供するものだ。このフレームワークを利用すれば、センサーやアクチュエーター、その他の機器ベンダーは自由にWindows Embeddedシステム向けのデバイスドライバを開発できるようになる。

 これが意味するところは、たとえば製造ラインがあったとして、PCのマウスやキーボードを交換するような感覚、もしくは周辺装置を増設する感覚で、センサーなどを交換することが可能になる。そのために制御機器用のデバイスクラスも定義されるが、当初はかなりおおまかな分類になるものと予想されるが、製品が増えてくれば、デバイスクラスも拡張されていくだろうという。

 最後に松岡氏は、以上のEmbedded製品の今後のロードマップについて言及した。まず、2009年第3四半期、つまり現在はWindows Embedded Standard 2011のCTPがMSDN Embeddedとして配付されており、Windows Embedded CEの最終バージョンとなる6.0 R3のRTMが完成しリリースされようとしている段階だ。

 このあと第4四半期にはMicrosoft Auto 4.1、Windows Embedded Server 2008 R2、Windows Embedded Enterpriseの正式発表が控えている。年が明けて2010年第2四半期には、Windows CEはWindows Embedded Compactと名前を変えてWindows Embeddedに統合される。Compactのコードネームはシェラン(Chelan)だ。そして、このタイミングでWindows Embedded Standard 2011がリリースされる。

 2010年第3四半期にはMicrosoft Auto ”Motegi”(モテギ)がリリースされる。Motegiは、Microsoft AutoとWindows Automotiveが統合される形で、カーエンターテインメント向けソリューションとPNDなどのソリューションが共通のものとなるという。

 なお、組込み系Windows OSのラインナップで混乱しがちなのは、プラットフォームやソリューションの種類が多く、それぞれの位置づけがわかりにくいというものがある。簡単に説明すると、組込み向けのWindows系OSはWindows CEからの系譜となるWindows Embedded CEと今回発表のメインとなったWindows Embeddedという2つプラットフォームがあると思えばよい。CEはOSの機能やサイズも従来からの組込みシステムを意識したものだが、Windows EmbeddedはクライアントOSとしてのWindowsを組込み機器向けにチューンしていったものだ。

 そして、Windows Embedded POSReadyはその名前が示すとおり、POS端末、キオスク端末に特化した組込みソリューションの名前だ。Windows Embeddedのライブラリやツール、コンポーネントが、それらの業務向けに拡張されている。同NavReadyは同様にカーナビ端末向けのソリューションだ。Windows Automotiveはカーナビ、カーオーディオ製品向けのソリューションだが、日本での採用が多い。北米ではWindows Autoというソリューションが用意されている。こちらもカーナビ、カーエンターテインメントなど車内の情報、娯楽端末向けのソリューションとなる。
《中尾真二》
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