【インタビュー】3年以内に日本市場でトップ5に——ネットアップ代表取締役社長 タイ・マッコーニー氏 | RBB TODAY
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【インタビュー】3年以内に日本市場でトップ5に——ネットアップ代表取締役社長 タイ・マッコーニー氏

エンタープライズ その他
ネットアップ代表取締役社長 タイ・マッコーニー氏
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■新規投資よりも既存のインフラ活用に動く国内企業

——NetAppのアジア・パシフィックのヘッドは?

香港になる。しかし、サービス全体を統括しているのはシンガポールだ。また、セールスの拠点はオーストラリア、など分散した形で対応している。ただし、日本の市場はインストールベースで見ても、顧客ベースで見てもニーズが大きいので重要視している。

——リーマンショック以来、景気回復の実感がない。今後の市況をどのように見ていますか?

経済状況が悪化していくなかでも、NetAppのビジネスは強い状況をキープしている。理由のひとつは、こいう状況だからこそ、ストレージインフラに対して効率化を目指そうという取り組みがはじまっているからだ。実際、データレプリケーション、ディザスタリカバリへの要望は非常に高くなっている。また、データ量が増えていることもあり、ストレージのニーズ自体は堅固なものがある。昨年の弊社の売上げ成長率は3%だった。これは低い数字に思えるが、それでも他の企業と比べると堅調だ。新しい会計年度が5月からはじまっているが、日本のビジネスは現在のところはフラットだ。ただ、顧客の状況をみてみると、ストレージ運用の効率化に対する期待が高まるなかで、新しい需要が生まれてきているのも確かだ。

——しかし、企業のIT投資は減っているのではないですか?

その通りだ。全体の予算は縮小している。顧客はインフラ全体に対して設備投資するよりも、既存のインフラをいかに守っていくかに注力し、この部分に対しての投資が高くなっている。既存のインフラを活用してもっと多くのことができるのか、あるいはそこからコストをいかに削減できるか、という意識が高くなっている。ここに、NetAppのテクノロジーは非常に有益に働いている。既存のインフラが日立あるいはEMCのSANインフラだったとすると、それらを最大限に効率的に活用していくということが可能になっているからだ。

もうひとつ言えること、それは、今の投資の向かう方向性というのはストレージインフラの一元化、セントラライゼーションだ。ひと言で表現すると、社外のクラウドを利用するということではなく、社内にプライベートなクラウドを作ってストレージインフラの一元化を行っていくやり方だ。これまで分散されていたストレージやアプリケーションといったIT資産を統合し、一元化されたところから数多くのビジネスユニットにサービスを提供していくのがひとつのトレンドだ。そのために、仮想化であったり、シェアードストレージなどが利用されている。社内でのプライベートクラウドは、欧州や米国と比較しても日本企業の大きな特徴となっている。

——そこを攻めていくということなんですか?

我々の事業フォーカスは2つある。ひとつは各企業のストレージに対する様々な要件に答えていくこと。特にストレージインフラの効率化を図っていくことだ。もうひとつはサービスプロバイダー向けの要件に対応していくことだ。例えば富士通やIIJなどがストレージについても“Infrastructure as a Service”という形でサービスし、ホスティングしていくといった要件に対応していくことだ。

■ユニファイドストレージという強み

——その際に御社の武器になるものは?

弊社の強みはユニファイドストレージプラットフォームだ。例えばFCSAN、iSCSI、NFS、FCoE……様々なものに対してストレージ専用OS「Data ONTAP」で対応できる。競合他社のソリューションを見ると、アーキテクチャもプラットフォームも、ローエンド、ミドルエンド、ハイエンド製品とすべてが別々で、さらにNASやSANなど様々なものに対して別々なプラットフォームで提供されている。これを統合的に管理するということは大変なことだ。プロセスも別々になって複雑なため、ローエンドからミドル、ミドルからアッパーとマイグレーションしようと思っても非常に複雑で拡張も難しい。我々は拡張性も担保しながら、さらに管理性も非常に高いレベルを維持している。これらの点もホスティングビジネスには有益だ。

——重点政策としてファイバーチャネルを挙げているが

我々のFC SANビジネスに関しては、ワールドワイドで20%のボリュームがある。これはさらに大きく成長している分野だが、日本ではまだ低い。日本ではNASがまだまだ主流で、そのシェアは60%だ。しかしビジネスの機会は大きく伸びようとしている。統一されたストレージプラットフォームを提供することで、SANもNASも対応できる。これまでNASにビジネスが偏っていたというのは、(パートナーから見たときに)SANについては自分たち自身のプラットフォームやソリューションを、NASについてはNetAppという組み合わせが基本的なアプローチとなっていたからだ。しかし、お客様側にさらに効率的なストレージインフラが必要だという認識が高まってきた。ユニファイドストレージを富士通のOEMブランドとして積極的に取り組んでいこうという動きもある。今年の4月、ファイバーチャネルSANのビジネスのなかでは日本市場でも最大規模の400万ドルのディールをクローズすることができた。これは大手の銀行に対してのプロジェクトだったが実績も上がってきている。

もうひとつSANという領域に関しては、FC SAN(ファイバーチャネル)だけではなくてIP SAN(iSCSI)にも非常に着目している。FCoEについてもダイレクトコネクションをもっているのは我々だけという背景もあり、シスコとも協力しながら推進していきたいと考えている。

ホスティングを提供しているプロバイダーとしてはブリティッシュテレコム、ドイツテレコム、オーストラリアのテレストラがあり、インフラの効率化といった観点からiSCSIを推進している。しかし日本の市場ではFCoEとかiSCSIの普及が遅い。ただし、ここは非常にポテンシャルが高いところであるし、富士通などとともにiSCISやFCoEといったところで積極的に協業していく。

——7月下旬には「SANscreen 5.1」を発表しました

「SANscreen」は2年ほど前に買収したオナロ社の製品がベースになっており、米国で提供していた。これを日本の市場に導入したものだ。ソフトウェア製品で、基本的にはSANを管理するものと考えていいい。これらをフロントに置くことで、既存の他社ディスクを使っていながら、他のディスクの効率化も図れるものだ。

■GO GO GOストラテジー

——業種としてフォーカスしているところは?

我々には“GO DEEPER”、“GO WIDER”、“JUST GO”といった3つの戦略がある。さきほど挙げたNASのシェア約60%というのは製造業、金融・銀行、通信といった業界が占めている。ここに新しいテクノロジーを加えることによってさらに展開を広げていきたい。これが“GO DEEPER”。次にVシリーズやSANscreen、FC SANといったものをさらに利用してもらえる既存顧客を広げていく“GO WIDER”。3つめのJUST GOは今まで比較的手薄だった業界。公共分野とか医療、小売、教育などへの提供を強化していく。パートナーとともに新規顧客に製品を提供したり、IT as a Serviceとして製品を提供する企業をサポートしながらエコシステムを強化していく。これら3つをGO GO GOストラテジーといっている。

また、トライアングルストラテジーというものがある。我々の製品を富士通、IBMブランドとして取り扱ってもらう。例えば、IBMのSystem xとVMware、ネットアップのストレージを組み合わせることによって、ひとつの仮想化システムとして販売する。HPのサーバ、ネットアップのストレージブランド、VMWareを組み合わせてソリューションを展開する。基本的にはサーバーとストレージ、ソフトウェアを組み合わせながらソリューションとして提供することで新しい市場を開拓していくという戦略だ。

——“JUST GO”のところにいままでいかなかったのは理由があるのでしょうか?

公共分野などにネットアップが弱かったということではない。これまでは日本市場のなかで強い業界にフォーカスしてきたということだ。近年、政府関係や教育関係は潜在性が高いとわかってきたので、フォーカス部分を調性していきたい。まだまだ巨大なマーケットではないが、現状の景気下ではできるだけマーケットシェアをとることで、認知も強化していきたい。

■シリコンバレーの企業風土を日本法人にも

——日本法人の役割は?

米国本社としても、日本市場は非常に潜在的な期待値が高い。しかし、そこを我々のほうで開拓しきれていないという認識がある。まず日本の活動に必要な要件を本社に伝えて理解をさせる能力をもつことが大切だ。私の課題でもあるが、3年以内にストレージベンダーとして現在の7位をトップ5に上げていく。そのために事業の規模を2倍にすることを考えている。そして、グローバルなビジネスのなかで、日本の重要性を高めていき、日本に影響力のあるベンダーになることだ。

——アジアパシフィックといえば、中国のほうが潜在的な市場として注目してるのでは?

中国は成長しているが、利益を獲得するのは困難な市場でもある。いろいろな理由があると思うが、ひとつにコストコンシャス、なんでも価格となっている点だ。ビジネスモデル自体が成熟化していないということが背景にある。NetAppの取締役会においても何度も議論されているし、他のベンダーも利益が上がる状態にするまでには非常に長い期間が必要だった。それに比べ、ビジネスモデルの成熟性や健全性を考えたときに、日本の需要は非常に大きい。日本では、NASからSAN、FC SANに事業を拡張していかなければいけない。

——米NetAppはフォーチュン誌の「働きがいのある企業」調査でNo.1に選ばれました

日本法人にもネットアップの企業文化を根付かせていきたいと考えている。米国からはここ期待値も大きい。我々がこれまで成功してきたのはNetAppの風土というのがベースになっている。いかに売り上げが上がっても企業文化が失われては意味がないし、事業はそういうもに基づいていなければいけない。日本の企業ではあるが、シリコンバレーの風土を取り込んでいきたい。
《小板謙次》
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