【インタビュー】安かろう、良かろうで地域ナンバーワン——中部テレコミュニケーション代表取締役社長 牧俊夫氏 | RBB TODAY

【インタビュー】安かろう、良かろうで地域ナンバーワン——中部テレコミュニケーション代表取締役社長 牧俊夫氏

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代表取締役社長 牧 俊夫氏
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 中部電力系の通信事業会社として1986年に発足した中部テレコミュニケーション(CTC)は、今年4月1日に株式の一部をKDDIに譲渡してKDDI系列の光アクセスキャリア/ISPとなった。1988年に専用線アクセスサービスを開始して以来、順調に法人顧客を獲得する一方、PHSモバイル事業、映像伝送サービス、ISDN、ATM、データセンターなど多岐にわたる技術サービスを展開。2006年1月には個人向けFTTHサービス「commuf@(コミュファ)」を中部電力から承継した。コミュファは低価格で高品質なサービスで着実にユーザーを増やし、2007年のRBB TODAYブロードバンドアワードでも中部地域で各部門トップに輝くなど高い評価を獲得した。KDDIグループとなったコミュファの次の一手は何か。代表取締役社長の牧俊夫氏に伺った。

■中部地方の会社社長に就任して

——就任以前からプロバイダーの仕事も経験していらっしゃるんですね

牧氏:1年間ほどKDDI株式会社の執行役員としてリスク管理本部長を務めました。当時はプロバイダー事業の内部統制や情報漏洩問題に当たりまして、その前はKDDIの光プラスやメタルプラスなどのブロードバンド関連事業を担当してました。

——社長は東京電力のTEPCOひかりが「ひかりone」になったときもご担当でした。プロバイダーという仕事からみて、東京圏と中部圏で違いはありますか

牧氏:東京では個々が「光がいい」と判断したら積極的に動く。それに比べるとこちらのお客様は慎重ですね。周りが光に変えても、まずは様子を見ます。それから、東京はマンションを購入する人が多いですけど名古屋は戸建てです。東京はマンションを押さえていかないといけませんが、こちらの市場の中心は戸建てですね。

——乗り換えの顧客獲得で難しい点はありますか?

牧氏:すでに光を使っているお客さんなら、「会社が変わっても使用感はそんなに変わらないんでしょ、それなら月々1000円以上安くなるなら考えるよ」と言ってくれます。一方、「ADSLで12メガあれば充分だよ」というお客様に対して、私たちは光に変えませんかとお願いする。プロバイダを変更するということは、メールアドレスを変えたり面倒なこともあります。ADSLからの乗り換えの場合は配線も変える必要があります。ただし、インターネット接続料金だけではADSLと同じ価格帯ですが、電話サービス込みで考えるとコミュファのほうが安くなります。しかも速度はかなり上がります。そこをご理解いただく必要があります。

——ADSLユーザーの乗り換えにもシェアを取る余地がありますか?

牧氏:私はあると思います。NTTが一所懸命にNGNだ、光テレビだ、と光サービスの差別化をやってますが、まだどれもキラーコンテンツではない。IP-TVは技術的にはできていますけど、営業サービスとしては大変じゃないかな、と思います。一方、コミュファは現在のお客様に対してコストメリットを出しています。新規参入だけにネットワークの設備は新しく、シンプルな構成になっています。歴史を引きずった古いゴチャゴチャした構成ではありません。シンプルで新しいから速度も速くできる。それをお客様へのアピールポイントとして宣伝しているところです。今回のブロードバンドアワードでは、それが客観的に証明されたと考えています。

■KDDIグループになってどう変わるのか

——今回のCTC株取得に関して、KDDIがコミュファでシェア30パーセントを目指すとコメントしたそうです。その目標は現場としてはどのように捉えていますか。

牧氏:通信会社を立ち上げたからには、実現の時期はともかくとして、目標値はシェア30パーセントくらいを持っていないと存在感がない。光系のインフラとしてはNTTと電力系しか持っていない。その電力系から株を譲って貰って参入するからには3割は持っていきたい。3割を取れば設備やオペレーションのコストダウンの効果が出ます。収益性を上げればシェアの7割を持っているところと肩を並べられる。その意味で3割なんです。KDDIは携帯電話でも当初から3割と言いました。そして達成しています。

——KDDI系列としてauのサービスと連携するサービスは始まりますか。現コミュファユーザーからの期待も大きいと思いますが

牧氏:早いうちにやりたいと思っています。お客様にメリットのあるサービスをどのように出していくか。ブランドの統合というよりも、実のあるサービスでメリットを出していきたい。その検討を始めています。

——ブロードバンドアワードはスピードや価格など、ユーザーの実利面が現れます。ブランドだけ見れば全国ブランドのNTTになるところが、ユーザーはきちんと見ている。ただ、ブランドの持つ実利もある。KDDIブランドですね。ケータイとつながったらいいなとか、セットで値段が安くなったらいいな、とか。

牧氏:ぜひ取り組みたいと思います。

——KDDIグループはau one netを全国で展開しています。中部地区はKDDI系列のプロバイダーが2社になります。グループ内で競合するのでは?

牧氏:将来はどうなるか解りませんが、当面は競争と協調でやっていきます。回線契約ではお互いの持ち味を活かしてお客様を獲得することが重要です。協調としては携帯電話を軸とした取り組みですね。あとは……マンションでしょうか。大規模なマンションはラックが大きいので競争できますが、小さなところは機器を置く場所がない。そういうところでは棲み分けが必要になるかもしれません。そこは協調が必要です。

——競争する部分で御社の強みはどこだと思いますか

牧氏:品質の良いものを安く提供している。これがお客様にもっともわかりやすいところですね。速度のアップは重要な話で、それが本当にお客さんのニーズに合うかどうかはともかく、CATVなどのライバルよりも速度の高いメニューがあって、そのぶん単価を上げられたら経営的にもありがたいと思う。ラインナップを増やさなきゃいけないと思います。

——他社ではギガビットサービスも始められていますね

牧氏:はい。今後は我々も進めたいと考えています。CATVもいまは160Mくらいまで上がっていますから。それを上回るメニューが必要です。どのユーザーも均等にネットを使うわけではなくて、一部のユーザーがたくさん使うという傾向があります。そうした方に、他の何処よりも速くしますからもっとお金をくださいと(笑)。

——法人サービスの面はいかがですか。私たちの調査では個人向け調査の色合いが濃くて、法人向けの評価が目立たないのですが。

牧氏:CTCは法人事業の歴史がありますから、今後ともしっかりやっていきます。コンシューマ系はTVCMなど広告が多いですから目立つんですが、CTCの収益は主に法人事業で出しています。ここはがんばらないといけません。特に我々はモバイル回線の足回りを担っています。auやソフトバンクモバイル、今後始まるUQコミュニケーションズの基地局ですね。今後とも良質で高性能な設備やサービスを用意していきます。私たちにはモバイルを後ろから支える会社としての責任があります。あとはソリューション系ですね。企業さんへの回線提供ですが、ここもしっかりやっていく。

——KDDIグループとなって、法人向けにはどんなメリットがあるのでしょうか。

牧氏:CTCは地域に特化した事業を行っています。全国的にはPNJグループという電力系ネットワークが相互に連携するサービスがあります。今度はそこにKDDIグループという、グローバルに展開するサービスが加わることになります。国際VPNの需要にまで応えられますから。そういう法人向けのメニューの拡充はKDDIグループの一員として進めます。まだこの体制が始まって3ヵ月ですから、これからの取り組みですが。

——中部東海地域は大地震が予想される地域ですね。災害への備え、御社の設備的なバックボーンはどのように強化されているのでしょうか。

牧氏:もともとCTCは電力系会社、つまり社会インフラなんですね。災害に備えてしっかりとした建物を造っているんですね。水が出そうな地域はあらかじめ嵩上げしたりですとか。そういう建物を作ってきた方々がいまも建物を設計しています。法人事業としてはこれも強みです。金融系では特にそうですが、企業ネットワークは災害などの対策として回線を二重化しています。これは私たちのようにキャパシティの大きなネットワークを持つ会社にはチャンスなんですね。NTTを主回線として使い、私たちを副回線で使って頂く。もちろん逆でもいいんですが、副回線でも使って頂ければ評価して頂けます。使っていないところに「いいですよ」って言うだけではダメです。信頼性とキャパシティで応えていきたいです。

——データセンターはいくつありますか

牧氏:現在は1拠点です。もうそこは全て埋まっていますので、次の拠点を考える時期です。いまは体制が変わったばかりで設備投資計画を見直しています。まだ具体的には発表できません。しかし、もともと電力会社系として耐震設備の良い建物を使っていますし、もちろん電力供給としても安定した環境の建物が多い。当たり前ですが停電に強いわけですから、(新規に建物を造ると言うよりは)そういう建物を活用していこうと考えています。

——22年間の歴史とのことですが、ネットワークインフラ機器の信頼性や性能がどんどん向上しています。

牧氏:我々の会社はサービス保守も商品だと考えています。良い機械、故障しない機械、世界のスタンダードである機械を調達して故障率を減らしていこうと考えています。今まではコストダウン優先という傾向が強かった。それを稼働期間を含めたトータルのコストとして見るように切り替えようと思っています。機械が安くても故障が多ければダメですから。「安ければいい」から「いいものを導入する」という方向にしたいです。

——すると、今回のKDDI系列になることによって、顧客側から見ると今すぐに変化があるわけではなくて、むしろバックボーンとか、内側の変化が大きそうですね

牧氏:変えるところは変える。良いところは続けるということです。

■0AB〜Jの光電話が強み。コンテンツよりもインフラに注力する

——営業されているエリアは中部4県ですか

牧氏:CTCとして光ファイバーの幹線があるエリアは愛知、三重、岐阜、静岡西部、長野県です。コミュファの営業エリアは長野を除く4県です。長野はすでに幹線があるので、設備投資をすればすぐにコミュファのサービスができます。いまの世帯サービスカバー率が約270万世帯ですから、東海4県(愛知、三重、岐阜、静岡)下の半分強ですね。投資効率を考えて、人口の多い都市から着手しています。

——エリア拡大とギガビットサービスとの優先順位は?

牧氏:どちらも重要です。エリアを広げていくことも、スピードの需要にお応えすることも。それは平行して考えていきます。それがトレンドであればやらなければいけない。

——ギガビットにしたとしてもキラーコンテンツがないという状況があります

牧氏:ギガビットというよりも、光そのものにキラーコンテンツがないんですよ。だから我々は値段で勝負だと考えています。でも決して値段が主目的ではない。値段でシェアを取っていけば、そこからいろんなことができる、ということです。NGNはキラーコンテンツがないと言うけれど、長い間かけて普及すればいろんなサービスが出てくる。例えば動画と携帯との連携とかですね。3Gだって最初は何するんだって言われていたけれど、ようやく携帯ナビだとかいろいろ出てきたわけでしょう。映像や音楽でもキラーコンテンツと言われるようになった。まずインフラをしっかり整備して、それからどうするか。日本では3GでもNGNでも拙速に事を進めようとしますね。欧米はまだまだADSLで高いし。通信というのは、値段が安くなきゃいけない、まずはそれからだと思います。

——コミュファはCATVに対抗する映像サービスはありません。テレビ放送やペイチャンネルの再配信とか。これもシェアを取ってから考えていくということですか?

牧氏:まだですね。映像系は我々にとって商売になりにくいんです。映像配信に投資するなら、我々はもっと増速とか、エリア拡大に力を入れたい。基本的な部分に投資すべきだと思っています。

——CATVと競合したくないとか

牧氏:そうではなくて、まずインフラの会社として本業のやるべきことをしっかりやらなくてはということですよ。コンテンツは閉じた世界ではないと思いますし、コンテンツを売る側としてはNTTだけに出すというのは意味がない。いろいろな媒体に出して広めたいでしょう。だから、そこで他のプロバイダーに少し遅れたとしても問題はないと思っています。

——ただ、先ほどの「乗り換えに慎重なお客様」のお話で、すでにケーブルテレビがあってインターネットができる。その家にコミュファを売りに行くのは大変だろうと思います。ライバルはBフレッツだけではなく、ケーブルテレビのインターネットオブション料金との戦いになりませんか

牧氏:そのためにも、ベースとなるインターネットと電話の部分をしっかりやるべきでしょうと。

——電話と言えばNTTの番号ポータビリティをやっていらっしゃいますね。

牧氏:これはいいサービスです。契約者の約8割が利用しています。コミュファ光電話ではアダプタ利用料を月に315円払うだけで、コミュファの会員同士は無料で通話できるんです。050ではなくて、0AB〜J、つまりNTT市外局番の番号でもコミュファ回線なら無料です。だから親戚や兄弟も全てコミュファに入れば、親族の通話は全て無料です。こういうのがインフラにとってのキラーなんですよ。

——コンテンツは後、というお話もありますが、競争力という部分では不安はありませんか。同じ値段であればスピードを重視、という人もいれば、同じ値段ならコンテンツにアクセスしやすい、という人もいると思います

牧氏:そこはコミュファとしては割り切っています。というのも、KDDIがいま映像や音楽をはじめとして様々なコンテンツを集めていますから。携帯電話と共用のコンテンツも含めてですね。いざとなればそこから持ってくればいいわけです。KDDIとしてはそれを携帯電話に出す、CATVにも出す、コミュファにも出す、au one netにも出す。そういう流れになるでしょう。コンテンツはグローバルな視野でKDDIが担うほうがいいんです。そのおかげで、私たちはプロバイダーの本業として、安価で高性能な接続サービスに注力できるというわけです。

——ありがとうございました
《RBB TODAY》

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