おにぎり市場が加速している。インバウンドの追い風もあり、専門店の店舗数はこの5年で約1.7倍へ拡大。原材料の高騰で節約志向が高まる一方、“専門店レベルのこだわり味”を求める層も増えており、いま消費者は、節約したい日もあれば“こだわった味を選ぶ日”もある。その時々で選び分ける時代に入っているようだ。こうした中、コンビニエンスストアのローソンは11月11日より、東京・浅草に店を構える連日行列の老舗おにぎり専門店「おにぎり浅草 宿六」監修商品を全国で順次発売する。
二極化するおにぎりニーズとローソンの戦略

11月4日に行われたローソンの「おにぎり新戦略説明会」では、実質賃金の低下や3000品目以上の食品値上げが続く中、市販のおにぎり価格が「高くなった」と感じる人が9割以上にのぼるというデータが示された。一方で、専門店的なこだわり系のおにぎりは売上好調で、2025年7~9月期には前年同期比107%と市場は伸びていることも紹介された。ローソンはこうした市場背景を踏まえ、「特別感」と「価格への工夫」の両軸で商品の幅を広げることで、節約派とこだわり派どちらのニーズにも応えていく方針だ。
東京で最も古いおにぎり専門店「おにぎり浅草 宿六」
「おにぎり浅草 宿六」は、昭和29年創業とされる東京で最も歴史のあるおにぎり専門店のひとつ。観光地・浅草という立地もあり、海外から訪れる客も多く、連日行列が絶えない老舗だ。三浦氏は「自分が美味しいと思うものをお客さんに出すこと。具材に関しては、ただ美味しいだけじゃダメ。海苔の強さに勝つ素材が重要。めっちゃバランス大事です。」と、おにぎりへのこだわりを語っている。
「おにぎり浅草 宿六」監修の紅鮭おにぎり

新商品の「プレミアムおにぎり 紅鮭ほぐし(柚子胡椒仕立て)」(279円)は、「おにぎり浅草宿六」店主 三浦洋介氏が味付けを監修した。製造工場で丁寧に焼き上げた紅鮭を粗めにほぐし、柚子胡椒で味付け。ご飯は国産銘柄米ブレンドし、海苔は瀬戸内海産を採用したという。
三浦氏は今回の監修について「日本古来のものを出したいと思っていました。凄くアレンジではなく、シンプルに。さらに宿六では出していないものを、ディスカッションして開発した。」とコメント。ローソン商品本部 シニアマーチャンダイザー 内田恵美氏も「コンビニエンスストアでは、美味しいが一番のこだわりでありつつ、幅広い品ぞろえで提供できることを強みだと思っています」と述べた上で、「普段は足し算で開発するところを、今回は“引き算”でアドバイスを受けた。大量生産の難しさもあったが、最後は納得のいく商品に仕上がった」と振り返る。
さらにこの商品はコンビニ初となる“おにぎり協会認定”を得た。一般社団法人おにぎり協会 代表理事 中村祐介氏は「持続的に食べられるか?米だけ、具材だけ。ではなく、1口目から料理として食べられるか?の2点を踏まえ認定した」と語った。
専門店監修のコンビニのおにぎりの味はいかに?実食!


粗めにほぐした鮭の粒立ちがはっきり感じられ、後半で柚子胡椒の香りがふっと抜ける。海苔の存在感と、具材の塩味・香りのバランスがとても良く、専門店のニュアンスが確かに宿っていると感じた。家庭ではまず再現に難航しそうな味わいだ。さらに驚いたのが“握りの空気感”だ。コンビニおにぎり特有のギュッと詰まった硬さではなく、ふっくらした余白がある。その仕上がりはローソンが導入した「立体成型方式」によるもの。人が手で軽く握ったときのような自然なふんわり感を機械で再現している。
11月以降は黒毛和牛カルビや炙りサーモン×いくらなど「特別感」強化系、138円の“だし系”や“もち麦系”など「手に取りやすい価格帯」の系統も続々追加されていく。ローソンは“節約”と“こだわり”が分岐する新たな時代のおにぎり市場で、双方が選べるラインアップ強化を進めていく構えだ。









