7月1日、KDDIはau回線の新サービス「au 5G Fast Lane」(以下、ファストレーン)を開始した。同サービスは、混雑時でも5Gデータ通信において優先的に基地局側の周波数を割り当て、駅のホームや大型イベント会場などでも、動画視聴やSNS投稿をより快適に利用できるというものだ。つまり同じ基地局に利用者が集中して“帯域の取り合い”が起きていても、ファストレーンは一般回線より速度の低下や遅延を抑えられる。
対象は5G SA契約かつ「auバリューリンクプラン」「auマネ活バリューリンクプラン」「使い放題MAX+ 5G」「auマネ活プラン+」などのプランで、ファストレーン料金は月額利用料に含まれる。利用には事前の「利用開始手続き」が必要で、一度手続きすれば5G通信時に自動で適用される。提供エリアはauの5Gエリアで、5G通信時のみファストレーンが適用される(4G LTE通信中は対象外となる)。
では、ファストレーンは実際どの程度“つながりやすく”なるのか。今回、RBB TODAY編集部はJR山手線の年間の乗降客数が多い“特に混雑する10駅”でファストレーン適用のau回線(5G)と非適用のau回線(5G)の通信速度を比較計測した。

【調査概要】
調査日時:2025年9月14日(日)18:00~20:00
調査対象端末: ①端末A(iPhone 12、ファストレーン非適用/au回線)②端末B(iPhone 14 Pro、ファストレーン適用/au回線)③端末C(iPhone 16 Pro Max、ファストレーン適用/au回線)
調査場所:JR山手線 主要駅ホーム(渋谷、新宿、高田馬場、池袋、上野、秋葉原、東京、新橋、品川、大崎)
計測アプリ:RBB SPEED TEST
計測方法:5G接続時に各端末の下り(ダウンロード)速度を計測。各駅で各端末5回ずつ計測し、平均値を算出した。
ファストレーンの速度をチェック!どれくらい差が出た?

端末A(ファストレーン非適用) | 端末B(ファストレーン適用) | 端末C(ファストレーン適用) | |
渋谷駅 | 45.98Mbps | 10.00Mbps | 29.01Mbps |
新宿駅 | 74.29Mbps | 125.94Mbps | 138.69Mbps |
高田馬場駅 | 126.69Mbps | 307.69Mbps | 297.47Mbps |
池袋駅 | 54.35Mbps | 142.26Mbps | 107.38Mbps |
上野駅 | 21.92Mbps | 92.21Mbps | 162.28Mbps |
秋葉原駅 | 154.09Mbps | 284.59Mbps | 138.47Mbps |
東京駅 | 185.94Mbps | 405.74Mbps | 307.72Mbps |
新橋駅 | 173.13Mbps | 249.26Mbps | 333.89Mbps |
品川駅 | 165.56Mbps | 257.73Mbps | 286.03Mbps |
大崎駅 | 68.23Mbps | 228.12Mbps | 202.00Mbps |
結果は上記のとおり。まず実測値で見ると、ファストレーン適用端末は多くの駅で200~300Mbps台に達し、最高は東京駅の端末Bで405.74Mbps、次いで新橋の端末Cが333.89Mbps、高田馬場の端末Bが307.69Mbpsと、主要駅で300Mbps前後を複数回記録した。一方、非適用の端末Aは概ね50~180Mbps台にとどまり、東京185.94Mbps、高田馬場126.69Mbps、新橋173.13Mbpsなど、良好な場面でも200Mbps未満が中心だった。
一見するとファストレーン適用端末の速度は速く見えるが、300~400Mbps級は条件次第でLTEでも到達し得る水準である。そう考えると、適用端末でも多くの計測が200~300Mbps台にとどまったのは物足りない。ファストレーンの狙いが「混雑時の低下抑制」にあるとはいえ、もう一段の速度向上を期待したいところだ。さらに、適用端末でも計測駅の4割程度が200Mbps以下にとどまった点は残念である。
また、すべての駅で常にファストレーンが最速とは限らない。渋谷では非適用端末のほうが速い結果となり、秋葉原でも端末によって逆転が見られた。場所によっては、ファストレーンの効用が表れにくいケースもあるのだろう。
参考までに、各駅でファストレーンを適用すると通信速度がどれだけ(何倍)速くなるのかも検証した。ここではファストレーン適用2端末の下り速度の平均を算出し、非適用端末との比較から駅ごとの変化率(倍率)を求めた。

変化率 | |
渋谷駅 | 0.42倍 |
新宿駅 | 1.78倍 |
高田馬場駅 | 2.39倍 |
池袋駅 | 2.30倍 |
上野駅 | 5.80倍 |
秋葉原駅 | 1.37倍 |
東京駅 | 1.92倍 |
新橋駅 | 1.68倍 |
品川駅 | 1.64倍 |
大崎駅 | 3.15倍 |
結果は上記のとおり。多くの駅でおおむね1.6~2.4倍の伸びが見られた。ただし、この倍率は下り速度(Mbps)の比を示すだけで、体感の快適さに直結するわけではない。本当に重要なのは混雑時でも滞りなく使えるかだ。具体的には、動画がすぐ再生し、途切れず、投稿や送信がストレスなく完了するかという点だ。

筆者は電車内でYouTubeを視聴することが多いが、新宿駅などでは再生開始が重い場面にしばしば遭遇する。そのためYouTube Premiumに契約いて動画を自宅保存し、通勤時に視聴することもあるが、やはり不便だ。通信インフラとして、通勤時間帯や混雑エリアでの速度低下が常態化する現状は看過できない。確かに、多少はファストレーンによって再生待ち時間は短縮されるかもしれない。しかし、ファストレーン適用端末でも計測駅の約4割が200Mbps以下という結果を見る限り、まだまだ通信環境の改善が必要と言えるのかもしれない。
RBB SPEED TEST(アプリ版)について
2012年5月にスマートフォン向けの無料アプリとしてリリース、Android版とiOS版の提供を開始しました。累計ダウンロード数は約200万となっており、年間約180万件の計測を記録している。
【RBB SPEEDTEST(iOS版)】
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