石黒のデビュー作は、小説家・宮本輝の同名小説を原作とした連続ドラマ『青が散る』(同系)。大学のテニス部に集う若者を描いた青春ものだったが、彼はここでいきなり主演を務めたという。
この作品に出合う経緯として彼は、元プロテニス選手で父の石黒修さんのもとに、テレビスタッフから「誰かテニスのできる若い人、ご存じないですか」という打診があったと説明。
この後、父・修さんから原作を渡されて読んだという石黒。当時高校3年生でテニスばかりしていたが、一方でテレビドラマへの好奇心からプロデューサーと面会。そこではテニスの腕前を披露し、ひとしきり雑談したという。
すると約1週間後、いきなりプロデューサーから「(主演が)君になったから明日から毎日TBSに来なさい」と告げられたという。オーディションも何もないままの大抜擢に、加藤浩次が驚きながら「芝居経験1回もない?」と聞くと、石黒は「まったくないですよ」と力を込めた。
その後の3か月は、学校終わりに芝居のレッスンを兼ねた台本の読み合わせをしていたという石黒。実際、撮影が始まっても「人生の経験の1つ」と考えて役者を続けようとは考えていなかったが、カメラマンが、「(立ち位置を気にしなくてもいいから)どこ行っても撮ってやる」と、寛容な態度で接してくれたのだとか。石黒は「いい環境に恵まれた。あれ(『青が散る』)が最初ではなかったら、間違いなく今は(役者を)やってないだろう」と振り返っていた。