【仏教とIT】第7回 クラウドファンディングと新しい寺院運営のシステム | RBB TODAY

【仏教とIT】第7回 クラウドファンディングと新しい寺院運営のシステム

「浄土双六ペーパークラフト」を作ろう!

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「浄土双六ペーパークラフト」を作ろう!



 2011年、日本におけるクラウドファンディングの走りとなった「READY FOR?」や「CAMPFIRE」のサービスリリースを聞いたとき、これがお寺でも使われるようになれば、お寺の在り方が変わるだろうと思った。同時に、寄付文化が根付かない日本で、クラウドファンディングが果たして定着するだろうかという思いもあったから、過度な期待は寄せていなかった。

 それから、7年が経った。お寺の日常の護持運営そのものにクラウドファンディングが利用されるケースはまだ聞かないが、お寺が新しいプロジェクトを立ち上げるときの資金調達に利用する事例は増えてきている。



 今年一番話題になったのは、仏教の世界観を遊べる・学べる「浄土双六(すごろく)ペーパークラフト」を作るためのクラウドファンディングだろう。仏教界きってのボードゲームデザイナーである陽岳寺(臨済宗妙心寺派)副住職の向井真人さんは、江戸時代に実際に存在したボードゲーム「浄土双六」にインスピレーションを受け、これを現代にリバイバルさせたいと発願した。そして今年1月にその資金をクラウドファンディングで募り、1ヵ月あまりをかけて目標額の100万円を無事に達成した。参加者へのリターンは、「浄土双六ペーパークラフト」本体や、これを作り上げるワークショップへの参加権などになっている。





 「浄土双六ペーパークラフト」は、先日ようやく完成。9月16日には支援者へのリターンを発送するための箱詰め作業が、陽岳寺にて行われた。クラウドファンディングに支援した人をはじめ、向井さんのプロジェクトを応援する人たち30人が集まり、一緒に作業をして後日に出荷された。ともすれば事務上の負担となりがちなリターン発送作業さえも、楽しみに変えている。お寺が活性化するための仕組み作りとして、クラウドファンディングを活用している良い事例といえるだろう。


リターン偏重への違和感



 しかしながら、クラウドファンディングは、なかなか手がかかる。寄付を募っているあいだは、話題を喚起し続けなければいけない。さらには、リターンが魅力あるものにできるかも成功のカギを握る。本来、寄付というのは見返りを求めるものではないから、リターンが重視されるのは本末転倒ではないかと思う。この点、フレンドファンディングアプリ「polca(ポルカ)」で展開されているプロジェクトは、目標額の設定が概して低いためもあるが、リターンがシンプルになっていることが多くて気持ちいい。

 「お寺から紙ストローを広めたい」も、「polca」で企画されていたプロジェクトだ。鹿児島県の浄土真宗のお寺の僧侶acoacoさんの発案らしいが、私とacoacoさんはツイッター上のつながりしかなく、その人となりなどまったく知らない。ただ、「プラスチックのストローではなく、紙ストローを使うことで地球環境のことを考えたい」というのは純粋に良い話で、寄付を拒む理由などない。しかも、私がこのプロジェクトを知ったのが目標額の15,000円まであと500円というタイミングだった。せっかくの縁なので、500円だけ寄付して、プロジェクト達成を祝福した。



 リターンはツイッターでのお礼の言葉だけ。企画者にリターンの手間をかけさせてない分、寄付らしい寄付をしたという納得感が残った。その後も、「お寺から紙ストローを広めたい」がどう展開されているのか把握していないが、私としては寄付をして功徳を積んだからその時点で目的は果たされている。仏教でいう布施とは本来そういうものである。


新しい寺院運営のシステム



 私自身も、クラウドファンディングに直接関わったことがある。2015年から毎年秋に実施されている、念仏体験を中心にしたアートフェス「十夜フェス」の運営資金調達のためのクラウドファンディングである。2016年と2017年に1度ずつ行った。

 実施したからには、目標額に到達するよう最大限の努力をしなければならない。もっとも効率のよい努力は、親しい知人への「おねだり」である。「おねだり」を繰り返すのは心苦しいときもあるが、その分、自分自身襟を正してプロジェクトに臨もうという想いが強くなる。また、「おねだり」をした人以外でも、思いがけない知人や親戚が寄付してくれたりすることもあった。私が気づいていないだけで、日頃付き合いのある檀家だけでなく、多くの人々がお寺を応援してくれていると知れたことは大きな収穫だった。

 私は幼いころに、「一億円をかけてお堂を建てるときに、一人の大富豪が全額寄付するよりも、一万人から一万円を募るほうがはるかに価値がある」と父から習った。その父は、本堂が火災で焼失したあとに、全国を托鉢して再建の寄付を募った。落成した本堂は、多くの人々の帰向する場となった。

 慣例的にはお寺を支えるのは檀家ということになっているが、クラウドファンディングが普及したいま、あえてその慣例に固執する必要はないだろう。お寺という公益性の高い組織を維持していくうえでは、広く社会全体の協力を求め、つながりを深めていくのが自然な姿である。お寺とクラウドファンディングの関係はまだ始まったばかりだが、すでに新しくそして適切な寺院運営のシステムを生み出す可能性を見せている。


池口 龍法氏
池口 龍法氏

【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。
■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
■Twitter https://twitter.com/senrenja
《池口 龍法》

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