【仏教とIT】第36回 日本初のオリジナルブッダマシーン「天界」爆誕! | RBB TODAY

【仏教とIT】第36回 日本初のオリジナルブッダマシーン「天界」爆誕!

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【仏教とIT】第36回 日本初のオリジナルブッダマシーン「天界」爆誕!
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魅惑の仏具、ブッダマシーン



「ブッダマシーン」という仏具をご存じだろうか。
木魚やおりんが仏具のメインストリームであるとすれば、それとは対極にあるサブカル仏具である。中国をはじめ東南アジアで広く生産販売されていて、電池を入れてボタンを押せば、チープで怪しい筐体が光を放ち、スピーカーから読経や民謡などが流れる。残念ながら輸入されて仏具店などの店頭に並ぶことはないから、私たちが普通に暮らしていればまず目にすることはない。しかし、不思議なことに仏教のサブカルに興味がある人は、必ずと言っていいほどブッダマシーンを知っている。そして、私が「ブッダマシーンを持っている」と言おうものなら、大変うらやましがられる。なぜなら、名前や見た目など魅惑的な要素は満載なのに、日本では流通量が極端に少なく、欲しいのに買えない「ブッダマシーン難民」がいっぱいいるからである。

光を放ちながらお経を奏でるブッダマシーン



この仏具がブッダマシーンという名前で呼ばれるようになったのは、2005年にさかのぼる。北京で活動する現代音楽ユニット「FM3」が、当時すでに流通していたお経が流れる機械に、お経の代わりに自分たちの音楽を収録し、ブッダマシーンという商品名をつけて売り出した。このガジェットが評判を呼び、日本でも雑誌に取り上げられたりした。これ以降、もともとのお経が流れる機械のほうも、ブッダマシーンの名で知られるようになる。

FM3のブッダマシーン




ブッダマシーンに恋して



日本でいまやブッダマシーンの第一人者が、光と音のハオハオハオさん(31、以下ハオハオハオさん)である。FM3のブッダマシーンに興味を持ち、インターネットで調べていくと、そもそも中国にはお経を流す機械が存在するという目からウロコの事実に出会った。日本には馴染みのない姿の仏具の向こう側に、人々の信仰の形が垣間見え、どうしようもなく心惹かれた。

しかし、ブッダマシーンへの恋路は険しかった。日本ではどこを探しても、お経が流れるほうのブッダマシーンは販売されていない。手に入らないと余計に欲しくなる。仏教国タイに旅行したときに仏具店が並ぶ仏具通りを探し歩いたが、見つからなかった。インドネシアでも中国人街の仏具店で見つけられず、途方に暮れながら「ブッダマシーンありませんか」と聞いたらようやく奥から出してくれた。待ち臨んだブッダマシーンとの感動の対面である。その存在を知ってから数年が経過していた。

購入のノウハウを学んだハオハオハオさんは、仕事の合間を縫って東南アジアに旅行してはブッダマシーンを買い集めるようになった。一口にブッダマシーンといっても仕様は多種多様で、見た目はオーソドックスでも収録曲数の多さを売りにしたものもある。木魚をかたどったものや、昔の携帯電話型のものなどもある。しかも、各メーカーが尖ったブッダマシーンを作ろうとするから、バリエーションは年々豊かになっていく。コレクター魂に火が付いた。

木魚タイプのブッダマシーン。ストラップがついているのでカバンなどにぶら下げることもできる


こちらは按摩機型のブッダマシーン。バイブレーション機能も搭載



初めて見かけたタイプはもちろん、すでに持っているブッダマシーンでも、なかなか購入できないから旅行先で見かけたらつい買ってしまう。自宅はどんどん倉庫となっていく。ふと「かつての私みたいに、ブッダマシーンが手に入らなくて悲しがっている人もいるはず」と気づいた。2017年、「光と音のハオハオハオ」としての活動を開始。ネットショップを立ち上げ、ギャラリーを借りての展示もするようになった。


日本初のオリジナルブッダマシーン「天界」爆誕!



ハオハオハオさんの知名度が高まるにつれ、ブッダマシーンの輸入販売を真似する人も増えた。「ブッダマシーンで儲けたいわけじゃないので、もう私がやらなくてもいいかな」と肩の力が抜けた。「本当にやりたいことってなんだろう」と自問しているうちに、「大好きな本家のブッダマシーンをリスペクトして、日本オリジナルのブッダマシーンを作りたい」という気持ちが募っていった。2020年、コロナ禍で海外に買い付けに行けなくなったから、時間に余裕もできた。「今だ」と思った。
通訳を介してOEMを引き受けてくれる中国の会社と交渉。いったん話がまとまったはずが、製造開始を目前にして断られるという波乱にもくじけず、前例のないチャレンジに突き進んだ。デザインや音にもこだわり抜いた。ボディの仏像のイラストは漫画家の天久聖一さんに依頼し、収録する音源もアートユニットの明和電機さんなどに参加してもらうなど、ハオハオハオさんが夢見たとおりのブッダマシーンが出来上がった。5宗派のお坊さんの読経も収録されており、浄土宗のパートは担当をしたのは実は私である。レコーディングは本堂でスマホアプリを立ち上げて読経するだけの作業だったが、ブッダマシーンとして世に出回ることを想像すると妙に緊張した。
そして、今年2月6日、日本初のオリジナルブッダマシーン「天界」を発売開始。やはりファンからの注目度は高く、注文が殺到してわずか2日間で完売。その後、東京での展示は盛況のうちに終わり、3月5日からは大阪での展示が予定されている。展示会場では、オリジナルブッダマシーン「天界」も購入できるという。

オリジナルブッダマシーン前面。スケルトン仕様はハオハオハオさんのこだわり


背面には全収録曲が所狭しと印字されている



念仏機ツアー大阪編
日程:2021/3/5(金)~3/28(日)
会場:月台 大阪市中央区谷町六丁目3-15 越野ビル201
営業時間:12:00-19:00 (金・土・日のみ営業)

オリジナルブッダマシーン「天界」と光と音のハオハオハオさん。念仏機ツアー東京編にて


発売開始と同時ぐらいに、ハオハオハオさんから私もとにゆうパックが届いた。品名欄には「ラジカセ」と書いてあるが、開けてみると想像通り「ブッダマシーン」だった。ハオハオハオさんに「ラジカセ」と書いた訳を聞くと、「ブッダマシーンだと郵便局員に伝わらない」からだという。「でも、ストリーミングで音楽をなんでもダウンロードしてスマホで聴くのが当たり前の時代に、わずかな音楽しか聴けない機械が手元にあるのってぜいたくな楽しみだと思いませんか」とも教えてくれた。ブッダマシーンへの愛に溢れた言葉だった。



池口 龍法

【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。

■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
■Twitter https://twitter.com/senrenja
《池口 龍法》

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