【VRと中小企業】建設工期短縮でコスト相殺!ジェットコースターのVR体験がヒントに | RBB TODAY

【VRと中小企業】建設工期短縮でコスト相殺!ジェットコースターのVR体験がヒントに

ビジネス 経営

実写さながらのリアリティなVR画像の一例
  • 実写さながらのリアリティなVR画像の一例
  • 施工現場を建機のオペレーター目線で見たVR画像の一例
  • 実際の施工現場の様子
  • 現場見学会の様子
  • 市民にVR体験を実施したときの様子
  • 坂下淳一課長
【記事のポイント】
▼事前の施工シミュレーションで工期短縮、安全性を向上
▼導入コストに見合うコストパフォーマンス
▼高い成績評価点の獲得で、今後の入札を有利に


■ジェットコースターのVR体験がヒントに

 仮想現実を意味するバーチャルリアリティ(VR)の登場により、3Dの仮想現実での疑似体験が可能となりつつある。これをビジネスに活用しようという動きも始まっている。北海道で土木・建築工事やインフラ維持・管理を請け負う一二三北路(ひふみきたみち)の取り組みだ。

 同社では事前の施工検討会により、工程ごとに施工内容の把握や不安全な箇所の抽出・確認などを徹底。その際に設計図書をもとに3D CADを使った図面を別途で作成。それをパソコン用の3Dモデリング・ソフト「SketchUp(スケッチアップ)」で3D化し、安全性や品質、生産性の向上を図っていた。

 しかし、スケッチアップなどの3D画像だけでは、シミュレーションのリアリティさに限界がある。そんなとき、VRのゲームソフトでジェットコースターの乗車体験を疑似的に体感した同社代表取締役の熊谷一男社長が、「これを仕事にいかせないか」という“鶴の一声”を発する。同社土木部の坂下淳一課長は、当時を次のように振り返る。

「ジェットコースターのゲームソフトを開発した(株)岩崎様に協力してもらい、検討を重ねました。すると、スケッチアップの3Dデータを加工すれば、VRで工程ごとに施工をシミュレーションできることがわかったのです」

■冬場の工事現場で着氷・着雪しやすい箇所もシミュレーション

 VRによる施工シミュレーションの第1号は、2015年2月に施工した札幌市水道局の発注による、自然湧水を浄水施設に導く導水管橋建設工事。3Dゴーグルをかけて周囲を見回すと、まるで施工現場の中にいるような“没入感”に襲われる。3D映像は工程ごとに移り変り、工事が完成するまでの流れを体感できるわけだ。

 施工検討会は、1人のスタッフが3Dゴーグルをかけてのぞいた映像が会議室正面の画面に大きく映し出される仕組みとした。これで参加者の全員がVRによる施工シミュレーションを体感できる。スケッチアップなどの3D画像に比べてリアリティにあふれるため、参加者一同は驚くとともに、以前にも増して議論が活発だったという。

 例えば、安全対策において作業の足場を確保する際、事前に計画を立てておいても、実際の施工時に計画通りにいかず、現場で足場の位置を変更する調整が必要なる、といったケースがないわけではない。しかし、施工検討会でVRを導入したことで、実際の施工の様子を3Dで見て確認できる。そこで計画通りに行かないことに気づき、足場の位置の計画を変更できるため、よりいっそう、実施工をスムーズに進められるようになるわけだ。

「よりリアリティになったことはもちろん、建設機械のオペレーターさんや職人さんが各自の目線で施工の様子を確認できるほか、異なる持ち場で働く人の目線、つまり相手の立場になって作業を体感できるようになった点も効果的です」

 他にも、1か所にまとめて置く予定だった資材は、その資材を使う相手の立場になると2か所にわけて置いたほうが作業効率が向上する、といった気づきにつながるなど、さまざまな意見が飛び交うようになった。「次の作業にはどのような危険があり、どのような段取りと施工が一番安全で早いか? というような議論も必然と生まれ、工程そのものが円滑化されたように思います」という。


 VR空間では気象条件などを入力すると、それもリアルにシミュレーションされる。冬場の施工ということもあり、降雪時のリスクを検討し、事前に予防する処置を講ずることができた。

 例えば、あるベテラン技士が、こういう冬場では鋼橋桁上フランジに着氷しやすくなると指摘して、実際のVRのシミュレーションで確認すると、そこに着氷することがわかったため、着氷しているかどうかをチェックして着氷を除去する作業を計画に加えたという。

■VRの広報活用が施工現場の“改善”にもつながる

 VRによる施工シミュレーションは、広報活動にも役立てられた。例えば、説明会や現場見学会を開催した際、VR映像で施工状況や完成までの流れを視覚的にわかりやすく公開したところ、クライアントとより厚い信頼関係を築けたほか、地域住民に対しても工事内容についての理解も深められたという。またなによりも、まだなじみのない最新技術のVRに強い関心が持たれ、現場見学会が他の施工案件よりも多く開催された。

 現場見学会は、その対応で現場スタッフへの負担が決して少なくないが、VRの導入により見学会参加者の興味が高まり、参加者は単に見学するだけではなく、現場スタッフと積極的に交流されるようになった。すると、自分の仕事に興味が持たれていることで現場スタッフのモチベーションが上がり、また、現場を少しでも良く見てもらおうと清掃に力が入り、建設機械や工具類を整理して保管するなど、「整理」「整頓」「清掃」のいわゆる3S活動が現場で自発的に活発化していったという。

■高い成績評価点の獲得で今後の入札を有利に

 同案件では3D CADの図面を自社で制作。スケッチアップは一部を外注し、VRの作成は岩崎様へと発注した。とはいえ、3D CAD図面とスケッチアップの作成は従来から行っていたので、VRの導入時の新たな負担は岩崎への発注分のみで、予算は約100~500万円になるという。

「施工検討会での検討が以前よりも充実し、工期の短縮化やコストの削減で大きな成果を得られるようになったと感じます。実際、導水管橋建設工事は工期を約1か月短縮できましたので、それだけでもVR導入費をペイできました」

 とはいえ、一般的な工法による施工や、安全性のリスクがそれほど高くない施工は、従来通りに3D CADの図面とスケッチアップの作成のみ。特殊な工法や危険性の高い、難易度の高い施工についてのみ、VRによる施工シミュレーションで万全を期す。これによって、特殊な、危険性の高い、難易度の高い施工にも対応し、受注の幅を広げることができた。

 同社は導水管橋建設工事が実績として高く評価され、札幌市の成績評価点は80点台で上出来と見なされる中で、異例の95点という高得点をマーク。これが今後の入札に有利となることが期待される。土木・建築工事やインフラ維持・管理の現場では、VRの導入により中小企業のビジネスチャンスを大きく広げられるようだ。

【VRと中小企業:2】建設工期短縮でコスト相殺、安全性向上!

《加藤/H14》

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