【The 転職 Vol.2】「転職」が県を救う!? 全国で2番目に人口が少ない島根の人材獲得戦略 2ページ目 | RBB TODAY
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【The 転職 Vol.2】「転職」が県を救う!? 全国で2番目に人口が少ない島根の人材獲得戦略

エンタープライズ その他
公益財団法人ふるさと島根定住財団UI推進課の安原光男参事(写真右)と、植田和枝課長代理(同左)
  • 公益財団法人ふるさと島根定住財団UI推進課の安原光男参事(写真右)と、植田和枝課長代理(同左)
  • JR松江駅前のビル内にある、ふるさと島根定住財団
  • ふるさと島根定住財団のオフィスには、キャリア・サポートを行う「ジョブカフェ」が併設
  • 島根県の転職関連の冊子やチラシ
 さらに同財団は、U・Iターンによる転職の大きなバックボーンとなる住環境問題についても、画期的な取り組みを行っている。「しまね暮らしお試し体験」では、各市街地に設置した空き家を、「お試し暮らし」として週15,000円から貸し出している。利用期間は3カ月間だが、利用者のなかにはその間に就職活動を行い、内定をもらう人もいるそうだ。また、「まずは知ってもらうことから」と財団が助成し各市町村などが企画実行する旅行ツアー風の「しまね暮らし体験プログラム」もある。

「一度島根に来てもらい、島根のファンになってもらう。それから試しに住んでもらって、そして仕事を探してもらえたら」(植田氏)

 支援を受けてU・Iターンを果たした人は、ここ2年だけでも約1,500人。その言葉の通り、一連の道筋を体系的に用意するという戦略は、転職においても、人口増の点においても、充分に成功していると言えるだろう。

■県が一丸となって取り組む、転職への連携と情報発信

 同財団が主催する、各地で行われているU・Iターンフェアの資料を見ると、バラエティ豊富な内容と、参加している団体の多さに驚かされる。例えば、仕事相談には農業振興公社や福祉人材センター、建設業協会、と各分野それぞれの専門の団体が参加。そこに、教育委員会や住宅供給公社、中山間地域研究センターといった暮らしのバックボーンにかかわる団体が加わる。さらに、先輩として、実際にさまざまな形で島根に移住した20人のU・Iターン経験者が構えるブースも準備されるなど、U・Iターンを全方位から支援し成功させようという姿勢がうかがえる。チラシそのものも親しみやすいデザインで構成されてあり、ありがちなお役所的なチラシに何役も兼ねるようなブース、といったフェアとはまったく違うのが印象的だ。

 先に挙げた体験事業も実際の企画実行は各市町村が行なっていたりと、財団が中心にありながらも、各団体や市町村が積極的に参加をしていることも特出すべき点だ。人口減少への危機感が「ひとごと」でなく「じぶんごと」として、広く浸透しているからなのかもしれない。

 また、「ふるさと情報登録」と称し、島根へのU・Iターンを検討中の登録者へ情報発信も行なっている。求職登録者にはDM(ダイレクトメール)を定期的に郵送しているが、U・Iターンフェアなど大切な情報を送付するときは開封を促すためにあえて封筒を変えて宛名を手書きするなど、小さな工夫も欠かさない。フェアにはここ数年毎年3割増の参加者が訪れるなど、「ふるさと情報登録」の効果も目に見えて出ているという。

■島根県のこれからのU・Iターンについて

 同財団では、U・Iターン者やフェアの来場者などについて、年齢層や現住所など細かな分析を行っているが、その中で見えてきたのは、20代の若年層と、60代の定年後の層の増加だ。都市の大学を出て数年仕事をした若者たちのUターン、定年後の安住の地を探してのIターンという構図だが、今後は移住から転職も含め、その2つの層を狙った対策を練っていくつもりだという。

 「財団という形なので、県そのものが動くより全てが速く、何でも進めやすい」(植田氏)という言葉通り、同財団が行う事業やフェアは、先駆的で目をひくものが多い。分析に基づいた企画を、市町村や各団体への声かけで肉付けし、親しみやすい形でそれを目にしたものに浸透させ、あらゆる手を使って体験させ、最終的に島根に定住させる、という一連の流れは現在効果的に身を結んでいる。

 島根県の、危機的状況ゆえに戦略的に考え抜かれたU・Iターン「転職」策、イコールで結ばれる人口減少抑止策には、同じ状況ながら具体的な手を打てず手をこまねいている各県にとって、U・Iターン戦略「先輩」県として学ぶことも多いだろう。
《築島 渉》
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