IIJといえば1992年設立で国内初のインターネット接続サービス会社といわれている老舗ISPだ。通信の自由化に伴い、いち早くインターネット市場に参入した同社が、電力事業の自由化に際して、新たな事業展開を発表したことは象徴的でもある。 発表会で鈴木幸一会長は、「M2Mのプラットフォームではエリクソンが市場展開しているものがあるが、日本国内ではおそらくこのPMSサービスプラットフォームが初めてのものとなるだろう。リスクは当然あるが、電力に限らずガスや水道なども統合できるサービスプラットフォームとして新しいインフラのしくみを作っていきたい」と新事業の抱負を語っていた。 IIJでは、2015年度はトライアル提供期間とし、PMSサービスプラットフォームを、主に小売りを行う新電力事業会社に無償で提供するとしている。トライアル期間でシステムの完成度を上げ、具体的なサービス開発を行っていくという。2016年度に正式サービスとして、デマンドレスポンスを含む各種のサービスをビジネス展開する。2017年度以降は課金代行、HEMSシステム連携、ビッグデータ解析と応用範囲を広げるというロードマップを描いている。■IIJの取り組みが新電力市場を活性化 今年は電力の小売りが一般家庭にも開放される予定だが、自前でクラウドインフラや通信回線を持たない事業者は容易な参入がしにくい。現状でも工場やビル・マンションなどを対象とした新電力小売り会社が、電力の見える化、HEMS連携などの付加価値ビジネス、デマンドコントロールなどを提供しているが、これらの会社は、独自にクラウドやネットワークを持っている。 大口需要家であれば、インフラ投資が必要でも参入意義はあるが、個別の需要家向けのビジネスとなるとインフラまではなかなか自前で用意できない。しかし、PMSサービスプラットフォームのようなしくみを使えば、契約数に応じたサーバーや回線の動的な利用契約が可能になるかもしれない。新電力市場の刺激になることは間違いない。 PMSサービスプラットフォームは、当面は電力小売り事業者向けのビジネスとして考えているとのことだが、将来的には、IIJのISP事業との連携(例えば、小売り会社の契約とインターネット接続やモバイル回線の契約をセットにするなどが考えられる)も考えたいとしている。東京電力は通信事業から撤退しているが、地方の電力会社は地域に根付いた通信事業を続けている。新電力ビジネスは、通信事業を巻き込む形で新しいステージを迎えている。