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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第65回 航空機内Wi-Fiを体験してみた

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Wi-Fiが使える航空機は、機体上部中央に取り付けられている白いドーム状の衛星アンテナがある。
  • Wi-Fiが使える航空機は、機体上部中央に取り付けられている白いドーム状の衛星アンテナがある。
  • JAL SKY Wi-Fi対応機材のシートポケットに入っている説明書。
  • 機内モードの状態でWi-FiのみをONにするのがポイント。
  • 「30分プラン」またはつなぎ放題となる「フライトプラン」を選択できる。
  • ポータル画面では、自機の飛行中の場所や到着までの時間が表示される。
  • RBBスピードテストでは、下り1.65Mbpsほど。衛星通信にしては十分な速度であろう。
  • 木暮祐一氏。青森公立大学 准教授/博士(工学)、モバイル研究家として活躍し、モバイル学会の副会長も務める。1000台を超える携帯コレクションを保有。
■国内線にも登場した機内Wi-Fiサービスを利用してみた

 従来、国際線の一部でしか利用できなかった機内W-Fiサービスが、いよいよ国内線でも利用できるようになった。日本航空(JAL)は、2014年7月23日からこのサービスをスタートし、順次対応機材を増やすとともに、就航路線も序々に増やしているところだ。同じく全日本空輸(ANA)もすでに国際線では機内Wi-Fiサービスを行っているが、2015年4月以降順次国内線でもサービスを導入するとしている。

 先行しているJALは『JAL SKY Wi-Fi』という名称で、東京(羽田)~福岡線、東京(羽田)~札幌(新千歳)線、東京(羽田)~大阪(伊丹)線、東京(羽田)~鹿児島線、東京(羽田)~沖縄(那覇)線、東京(羽田)~松山線、東京(羽田)~山口宇部線、東京(羽田)~熊本線、東京(羽田)~小松線に就航中。ただし同区間のすべての便というわけではなく、対応機材を使った便のみで利用が可能である。また今後も導入路線は順次増えていく。
 このJALのサービスは、アメリカのgogo社のシステムをベースにした衛星通信システムを利用しており、ユーザーは利用時にgogo社のアカウントを作成する必要がある。登録は簡単で、メールアドレスやパスワード等の必要事項を登録するだけである。次回の利用からはユーザーID(メールアドレス)とパスワードを入力するだけで利用できる。利用料金は、30分単位で400円の時間制(30分プラン)か、搭乗中つなぎ放題となるプラン(フライトプラン)かを選ぶことができる。つなぎ放題となる「フライトプラン」は飛行マイルに応じて料金が異なり、東京(羽田)~大阪(伊丹)など450マイル以内を飛ぶ便では500円、東京(羽田)~札幌など451~650マイル区間は、スマートフォンが500円、ラップトップやタブレットは700円、東京(羽田)~沖縄(那覇)など651マイル以上の区間ではスマートフォンが700円、ラップトップやタブレットが1,200円となる。また、これはあくまでも1フライトごと、そして1端末ごとの決済となり、複数の端末を利用する際や、同日中でも別フライトで利用する場合はその都度料金が必要となる。

 実際の使用方法であるが、機内に搭乗後は当然のことながら「機内モード」など電波を発しないモードに設定する必要がある。離陸後は、たとえばiPhoneの場合は「機内モード」の状態で「Wi-Fi」をONにし、SSIDで「gogoinflight」を選択する。その後ブラウザを開くとJAL SKY Wi-Fiポータルサイトが開くので、そこでgogo社のアカウント設定(クレジットカード登録など)や、コースの選択をすれば利用可能となる。

 筆者はiPhoneで利用したが、メールの送受信やfacebookやLINEなどのソーシャルネットワークの利用に関してはストレス無く利用が可能だった。また、JAL SKY Wi-Fiポータルの画面では、飛行中の現在地と到着までの時間などが表示された。これを見ているだけでも面白い。

 じつは世界では、航空機上で携帯電話やインターネットの利用を可能にしようという試みは2000年代初旬から検討されてきた。2004年には米国ボーイング社の系列企業が「Connexion by Boeing」の名称で通信衛星を利用した機内インターネット接続サービスを開始し、JALをはじめ世界の主要航空会社がこれを採用するなどしていた。しかし、まだこの時代はノートPCの活用が中心で、一部のビジネスマンを中心にニーズはあったが利用は伸びず、の2006年にはサービスが休止されてしまった。

 その後はGoGo社が設置する地上アンテナと航空機側下部に付けたアンテナとで通信を行うシステムなども考案され米国内の航空会社で使用されてきたが、これでは陸地では利用できても海上では通信が利用できないということで、再度衛星通信を利用した機内通信システムが注目されるようになった。JALでは、国際線で再びこの衛星通信を利用した機内Wi-Fiサービスを2012年7月より、一部の路線で運用を開始。そして本年7月からは国内線への導入も開始した。かつては一部のビジネスマンがノートPCでWi-Fiを利用するというものであったが、その後携帯電話からスマートフォンへのシフトや、タブレットなど手軽にインターネットを利用するシチュエーションが増え、Wi-Fiを必要とするユーザー層が一般の消費者に大きく広がったことも、再び機内Wi-Fiサービスが必要とされるきっかけになっていったのであろう。

 機材と衛星間で通信をするためのアンテナは、機材中央上部に取り付けられている。白いドーム状をしていて、この中には衛星を自動追尾する可動式のアンテナが収められている。機体のこのアンテナと通信衛星とは「Kuバンド」と呼ばれる12ギガ~18ギガヘルツの周波数で通信を行っている。

 日本航空によれば、機体上部へのアンテナ設置は高度な技術を要し、かつ細心の注意を必要とする作業を伴う。また、航空機の機体にアンテナを装着すること、機内にアクセスポイントを設置することは「航空機の改修」となるため、米国連邦航空局(FAA)と国交省航空局(JCAB)の承認が必要となるため、国際線向けの最初の機材を改造するために費やした期間は約2カ月もかかったという。その後ノウハウを蓄積して2機目は約2週間で完成。以後、着々と増備され、いよいよ国内線でも利用できるところまで来た。

 筆者が最も利用する東京(羽田)~青森間は、まだ来年前半の計画にも入っていないが、こうした地方路線にもぜひ拡げてもらいたいものである。
《木暮祐一》
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