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【木暮祐一のモバイルウォッチ】第50回 Google Glassはブレイクするのか? Part3「Google Glassをめぐる課題を考える」

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Google Glassを試す筆者
  • Google Glassを試す筆者
  • 端末の小型化と共に、技適マークは小型化し、さらに昨今では「電磁的表示」つまりディスプレイなどへ技適マーク表示することも可能となった。
  • iPhoneなど、グローバル端末では「電磁的表示」によりディスプレイ内に技適マークを表示させる事例も出てきた。
  • Google Glassの基本設定画面のキャプチャ。顔をわずかに上に上げるとスリープしていたGlassを自動的に起動させることができる。この状態でウィンクをすれば静止画撮影ができてしまう。
  • Google Glassのウィンク撮影機能のキャリブレーション画面のキャプチャ。画面の動画に合わせてウィンクを数回行う。
  • キャリブレーションによりユーザーのウィンクを記憶し、撮影などの動作を行う機能がONとなる。そのうち「ダブルウィンク」なんて機能もサポートするようになるのか?!
  • タクシー移動中に、ウィンクして風景撮影を楽しんだ。掲載画像では画像サイズが縮小されているが、オリジナル画像では標識やタクシー内に貼られたステッカーの文字も十分に判読が可能だ。
■Google Glassがもたらす新たな情報モラル問題

 Google Glassには、500万画素のカメラが備えられ、静止画撮影のほかに720pでの動画撮影も可能である。Glass本体上部のボタンをプッシュすれば直ちに撮影できる他、あらかじめキャリブレーションを行っておけばGlass内側の赤外線センサーで感知して、ウィンクするだけでカメラ撮影ができてしまう。骨伝導スピーカーであるし、ボリュームを下げておけばシャッター音を消音させることもできるので、周囲に気付かれずに写真撮影も簡単である(他のグローバルスマートフォン同様、日本で正式に発売される日本向け製品では強烈なシャッター音が備えられてしまうのだろうが)。

 本連載第48回(Google Glass part1)でもカメラ機能に触れたが、カメラは比較的広角なレンズが備えられ、人間の視線で「この辺りを撮影したい」と考える範囲よりも広い風景を切り取るような作例になってしまうが、画質は良好で、撮影画像を見るとそこに映り込んでいる標識の文字なども拡大するとある程度読める画質で撮影できている。

 これほど簡単に、しかも周囲に気付かれずに画像や動画を撮影でき、しかも撮影後は簡単にSNSにシェアできてしまうとなると、必ず議論になるのが撮影画像に写り込んだ内容のプライバシー問題だ。

 じつは韓国では画像撮影に関しては日本以上にシビアで、写っている本人の承諾無しにインターネットに画像を投稿した場合、写っている人から訴えられると投稿者が罰せられる法律もあるという。ブロードバンドの普及率もこの十数年間、世界トップを維持しており、国民のインターネット利活用に関するリテラシーも高い。したがって、韓国でもまだGoogle Glassは発売されていないにも関わらず、Google Glassへの認知度は非常に高く、社会人層のほとんどの方はこういうウェアラブル端末がすでに米国で販売されていることを知っており、また知人たちの話でも、韓国内の大都市圏では時々見かけることもあるということだった。さらに驚いたことに、すでにパブリックなスペースでGoogle Glassの着用を禁止するホテル等も出てきている。日本に比べ、カメラ撮影に対する情報モラルは先に進んでいるという印象だ。

 カメラ機能を活用したGlasswearも今後たくさん登場することであろう。たとえばすでにGlasswearとして提供されている「Word Lens」は、Google Glassのカメラ機能を通じて文章を表示させると、それを別の言語に自動翻訳するものである。カメラ機能がなければ成り立たないアプリだ。また、前回の記事でも触れたが、Googleでは公式Glasswearに顔認識系アプリケーションを認めていないが、案外キラーコンテンツとして期待されるのが顔認識系のサービスなのかもしれない。NTTドコモは今春スペインで開催されたMobile World Congress 2014で、ヘッドマウントディスプレイを通じて対面に居る相手の顔を認識し、その相手の名前やその他の情報が表示されるアプリケーションのデモを行っていた。実際に筆者もこれを体験させていただいた機会があったが、パーティー会場などで過去に名刺交換したことのある人と出会って「この人はどなただったっけ?」と迷うことは筆者にもよくあり、そんなときに自分自身の記憶を補完してくれるアプリケーションとして期待できそうだ。法人向けのサービスとしても、たとえば取引先企業の方と会う際に、自分自身や他のスタッフがその相手先とどのようなやり取りをしているかを顔認識で瞬時に取り出せたら有用であろう。

 そんなわけで、Google Glass登場と同時に、カメラ機能の是非はケータイにカメラが標準搭載されるようになった時以上に沸騰しそうだ。カメラが無ければGoogle Glassの魅力が半減してしまうが、場合によってはカメラレスモデルの登場もありえるのだろう。

 Google glassを使用していて、唯一使いにくいと思ったのは、Glass Glassに蝶番がなくテンプル(つる)の部分を折り畳めないこと。。メガネのように折り畳めれば、胸ポケットなどにサッと収められる。あるいは、メガネを首からぶら下げられるようなメガネチェーンが取り付けられる工夫が欲しい。今後、Google Glassが市販され、ある程度普及して行けば、韓国同様に「Google Glass着用禁止」の場所やシチュエーションが増えて行くはず。さっと取り外してポケットに収納したり、首からぶら下げられるようにしたらとても便利だろう。一般向けの製品化時にはぜひ検討してもらいたい事項だ。

■Google Glassは本当にブレイクするのか?

 これまで、携帯電話黎明期からモバイルサービスの動向を傍観して来た立場として、とにかくGoogle Glassはモバイルサービスの大きなターニングポイントとなるものと確認している。前回の記事でも記した通り、筆者はこれまで様々なスマートフォン連携機器やヘッドマウントディスプレイなどを触って来たが、Google Glassは単なるスマホアクセサリにも、ヘッドマウントディスプレイにも該当しない。これ自体が、ユーザーに“その時、その場所で必要となる”情報を提示したり、時にはユーザーの記憶を補完するツールとなったり、これまでに無い新しい情報機器として広く浸透するのではないかと考える。モバイルサービスの大きなターニングポイントをいくつも見て来たが、1999年にiモードが発売開始された時や、2007年にiPhoneが(米国で)発売開始された時ぐらいのインパクトを持ち得るデバイスである。これはいくら記事に文章で書いてもなかなか表現しきれない。まずは多くの人たちにGoogle Glassを体験してもらいたい。

 米国サンフランシスコにて、来る6月25日、26日にはGoogleの開発者向けイベント「Google I/O 2014」が開催される。もしかしたらここでGoogle Glassの市販に向けた何か新たな発表があるのかもしれない。わが国で、すでに4月の時点でGoogle Glassの型式認定、技適取得を終えているということは、国内でいつでも販売できる状況にある。いずれにしても、日本での販売開始が待ち通しい端末である。
《木暮祐一》
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