放射性物質を除染する技術や装置を多数展示……「環境放射能除染・廃棄物処理国際展2012」 | RBB TODAY
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放射性物質を除染する技術や装置を多数展示……「環境放射能除染・廃棄物処理国際展2012」

エンタープライズ フォトレポート
ケルヒャーが販売する搭乗式全天候型4輪駆動の業務用シティクリーナー
  • ケルヒャーが販売する搭乗式全天候型4輪駆動の業務用シティクリーナー
  • 「環境放射能除染・廃棄物処理国際展2012」
  • 三協興産のバキュームブラスト・ロボットシステム
  • スタンダードタイプのバキュームブラスト・ロボットシステム、横から見たところ
  • このような研掃材を路面に向かって投射し、ブラストする。粉塵は吸引されるので環境にも優しい
  • 路面用のドライアイスブラスト除染装置
  • 研掃用のドライアイス粒子。すぐに気化するため、路面を汚さず、傷もつけない
  • モバイル端末で効率的に位置と線量のデータを蓄積。クラウドを利用するデータ処理法は必須技術
 千代田区北の丸公園の科学技術館において、9月末に「環境放射能除染・廃棄物処理国際展2012」が開催された。昨年3月の東北地方太平洋沖地震に伴う東京電力福島第1原子力発電所事故が発生し、汚染土壌の除染は被災地と日本の復興を図る上で、喫緊の国家的課題になっている。

 同展示会は、除染やそれに伴って発生する土壌・廃棄物の処理に関する国内外の技術・装置などを一堂に紹介したものだ。今後、日本を救ってくれるであろう除染関連ソリューションの展示とデモに来場者の注目が集まっていた。ここではユニークな除染関連技術や機器、大手ゼネコンの取り組みなどを中心にレポートする。

■汚染土壌の除染技術で、いち早い東北の復興を

 まず目を引いたのが、除染を効率的に行なうためのロボットだ。三協興産は「除染工法新革命」を掲げ、バキュームブラスト・ロボットシステムによる放射能除染作業について紹介していた。このロボットは、アスファルトやコンクリート面などに研掃材を投射して路面をきれいに磨く役割を果たす。ロボット本体にはバキュームユニットが付いており、噴射された研掃材とダストは回収される仕組み。この研掃材はダストと分離した後、繰り返し投射されるため、研掃材の消費を抑えられるというメリットもある。周辺に粉塵が飛散しないため、並行して路面の検査が行えるため、作業の短縮も期待できる。遠隔操作で安全に操作が可能であるため、今後いろいろなシーンで活躍するだろう。

 大成建設も同様の装置を出展。これは道路を対象にしたドライアイスブラスト除染装置で、最大の特徴はブラストにドライアイスの粒を利用すること。舗装面にパウダー状のドライアイス粒子を吹き付け、路面に付着した放射性物質を剥ぎ取る。ドライアイス材はすぐ気化するため、汚染水・汚泥などの除去物が発生しない。また粉塵はトラックに搭載した集塵機にて回収される。このほか同社は、高所樹木枝打ち装置もパネルで紹介していた。これはチェーンソーを備えた高所樹木枝打ち装置で、リモコンによって遠隔操作して樹木や枝葉を剪定するもの。作業員の被爆量を低減する目的があるという。また、こうした除染業務を効率化するために、スマートフォンやタブレット端末を駆使した独自システムも構築。土地や建物の位置と線量の現地調査を行う際に測定した、膨大な線量と場所のデータを迅速に処理するためにクラウドを利用するという。

 清水建設は、実証実験において、ショットブラストや高圧水洗浄による除染効果が高いことを確認。同社のブースでは除染用の可搬式超高圧ポンプユニットと清掃機などを展示していた。高圧水洗浄を実施する際に、放射性物質をフィルタリングする装置を採用し、汚染水をできるだけ少なくする工夫が凝らされていた。

 鹿島は、石巻地区などで実際に行なわれている災害廃棄物の処理業務と、それに伴う2つの関連技術について紹介していた。石巻で集積された瓦礫は、粗破砕機によって一次破砕を行なう。細かく粉砕された瓦礫を振動でふるい、100mm以下の瓦礫に分ける。次に手選別によって可燃物を分別する。さらに100mm以下の瓦礫は、ハンマー破砕によって二次破砕する。また同様に振動ふるいにかけ、30mm以下の瓦礫に分別する。最後に風力選別機にかけて可燃・不燃物などを比重差で分別してから可燃物を焼却する。これらの中間処理を行なった後で、有価売却を含むリサイクル・最終処分を行なうという流れだ。

 もう1つの技術は中間処理物を搬出する際の技術だ。これは、搬出するダンプトラックやコンテナ車の空間線量率(μSV/h)を高速に計測し一元管理するもの。トラックが処理施設から出る際に、トラックスケールで重量を計測しながら、空間線量率も自動計測して、もし何か問題がある場合には搬出を中止することも可能だ。

 ドイツに本拠地を置くケルヒャーは搭乗式の全天候型4輪駆動の業務用シティクリーナーやバキュームクリーナーのデモを実施していた。シティクリーナーは、前面にあるサイドブラシ×2本と、強力なバキューム、500Lの大容量タンクを備え、運転しながら効率的に清掃が行なえる。フロート式のブラシで床面に多少の凹凸があっても粉塵を逃さずにスイープできる点が特徴だ。

■放射線量測定・モニタリング機器や、放射性物質の処理装置も展示

 放射線量を測定することで、危険なホットスポットを見つけられる技術や装置なども展示されていた。日本原子力研究開発機構(JAEA)は、プラスチックシンチレーションファイバ(PSF)を用いて、放射線分布を把握する測定器を開発しており、その改良版を出展。放射線の検出方法は、放射線を感じて発光するPSFの両端に光センサー(光電子増倍管)を付け、そこで入射された放射線量をカウントするというもの。放射線の入射による発光を両端の光センサーで検知し、その時間差から検出部の発光位置も特定できる。

 同測定器では、線量の検出部に直径1mmのPSFを19本ほど束ねており、10m以上の長さで対象箇所を一気に測定できるという特徴がある。さらに曲げたり、水中内での測定も行なえるため、泥状の田畑、川底の線量測定にも対応。現在、検出長さを20mまで対応できるように、商品化に向けた改良を加えているところだ。

 福島第一原発の高濃度汚水処理システムで世間に知られるようになったフランスのAREVA社は、フィールドモニタリングビークルなどを展示。このビークルの車載下には、前述のプラスチックシンチレーションファイバ(PSF)が取り付けられており、地面をスキャンして線量を一気に測定できる。また測定しながら汚染場所をマーキングできることも特徴の1つだ。ビークルは自走式でないため、トラクターなどで牽引していく。

 ガンマ線の方向と強さを2次元的に可視化する装置を展示していたのは東芝ブース。「Gamma Camera」は、2次元に配置された128個の放射線センサでガンマ線を測定し、除染作業前後の汚染状況をビジュアル的に確認できるポータブル測定機だ。可視光カメラで撮影した画像と、16×16のマトリクスで処理したガンマ線の分布図をカラーで重ね合わせてを表示する。遠くの位置から目的の場所に向かってカメラを向ければ、ガンマ線の分布がすぐに分かり、放射線スクリーニングの際にホットスポットの早期発見につながる。

 このほかにも同社では、汚染された土壌・焼却灰から放射線セシウムをその場で除去できるモバイル式土壌除染処理装置「SARRY-Soil」や、避難区域内外の各所に存在する汚染水をその場で除去できるモバイル式汚染水処理装置「SARRY-Aqua」のミニモデルなども展示していた。

 今回の展示会で分かるように、いま国内企業は、除染や原発の廃炉に向けた技術や装置の開発を急ピッチで進めている。福島と東北地方のいち早い復旧・復興に向け、日本全体が一丸となって英知を結集して、この難局を乗り越えられるように祈念してやまない。
《井上猛雄》
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