【関西スマホレポート(前編)】関西にも本格的なスマートフォンブーム到来、これをどう見るか | RBB TODAY
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【関西スマホレポート(前編)】関西にも本格的なスマートフォンブーム到来、これをどう見るか

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Android女子部/株式会社ブレイブテクノロジー 日高未紗子さんと筆者・木暮祐一(武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家/博士(工学))
  • Android女子部/株式会社ブレイブテクノロジー 日高未紗子さんと筆者・木暮祐一(武蔵野学院大学准教授で携帯電話研究家/博士(工学))
  • Android女子部/株式会社ブレイブテクノロジー 日高未紗子さん
  • (図1)スマートフォンユーザー歴
  • (図2)ガラケーに戻したいと思うか
●関西地域でスマホの販売動向に変化が

 筆者は関東だけでなく、九州や四国、東北などの大学で講義をしているが、それぞれの地域の学生の様子を見ていて感じることは、地域によってスマートフォンの普及率や利用傾向が明らかに違うということ。当然のことながら、首都圏の大学生はそのほとんどがスマートフォンを利用している。筆者独自の調査でも、今年1月時点で首都圏主要大学の学生の70%がスマートフォンを所持していた。また、25%の学生が2台以上のモバイル端末を利用していた。しかし、関東以外の地域では、まだまだスマートフォンの利用率が低いと感じる。

 では、首都圏同様な地方都市ならスマートフォンが同程度普及しているのかというと、必ずしもそうではなく、微妙な地域差があることが分かっている。たとえば、2011年7月22日にBCNランキングが公表した家電量販店・ネットショップにおける実売データでは、スマートフォンの販売比率が東京圏68.2%、名古屋圏60.9%なのに対し、どういうわけか関西圏では37.6%と、スマートフォンの販売が振るっていなかった。

 しかし、その関西エリアにおいて、今年に入ってからスマートフォンの販売動向に大きな変化が出てきたことが明らかになった。今年6月にKDDIコンシューマ関西支社が発表した調査資料によれば、昨年後半以降、関西においても急激なスマートフォンシフトが始まっているようだ。

 たとえば「スマートフォンユーザー歴」の調査結果では、「半年未満」のスマートフォンユーザーが39.7%もおり、関東よりもはるかにこの部分の割合が高くなっている。(図1)また、スマートフォンの満足度をみる項目で「ガラケーに戻したいと思うか」という設問があったが、これをみると関東では14.1%のユーザーがガラケーに「戻したい」「どちらかといえば戻したい」と回答しているのに対し、関西ではこの割合がわずか7.0%となっている。(図2)

 こうしたデータから想像できることは、関西エリアのユーザーはこの1年ぐらいの間に急激にスマートフォンにシフトしていった上に、その満足度も高いということだ。低調気味だったスマートフォンシフトが昨年後半以降急激に加速し出した理由はなぜか。またそうしたユーザーの満足度が高いというのはどういう理由からなのか。

●Android女子部の日高未紗子さんに聞く

 今回は、京都生まれ京都育ちの生粋な関西人で、関西のスマートフォン事情に詳しい、Android女子部の日高未紗子さん(株式会社ブレイブテクノロジー)にその理由を伺ってきた。日高さんはAndroidアプリの開発を行うエンジニアでもある。(写真)

 関東に比べ、関西の人たちはお金にはシビアという話を聞くが、まずこの視点は正しいのだろうか。日高さんいわく、

「よくそのように言われますが、お金を払うべきものにそれだけの価値があるのかどうかをより慎重に見極めているのが関西人の特質ではないかと思います。ですので、価値があると判断すれば、高価なものでもお金を投じます」

 なるほど、無駄なお金を使わないというよりも、きちんと製品やサービスを見極めた上で動くということなのだ。

 KDDIコンシューマ関西支社の調査はKDDIユーザーを対象にしたものだが、KDDIには指定ブロードバンド回線とセットで契約することで、家族全員のスマートフォンの通信料を1回線あたり月額最大1,480円値引いてくれる「auスマートバリュー」がある。この利用者を比較しても関西のほうが満足度が高い(関東が90.1%に対し、関西は96.0%)。関西の人たちはサービスや割引内容の価値をしっかりと見極めて利用しているからこそ、自身の選択について満足度も高くなるのだろう。なお、携帯電話とブロードバンドをセットで利用することで割引を行うこのような施策はソフトバンクモバイルにも「スマホBB割」がある。割引額もKDDI同様、月額最大1,480円となるが、KDDIは光インターネットが利用できるほか、地域のケーブルテレビ事業者との組み合わせも可能と有利になっている。

 関西では昨年後半以降、急激にスマートフォンへのシフトが始まっているが、このあたりの理由を日高さんはどのように考えているのだろう。

「関西の人は周りの人に使い方を尋ねたり、逆に教えたりし合うのがすきなのです。つまり周りの影響を受けることが多い。スマートフォンが登場した後も、話題にはなるのですが『ちょっと難しそうだから、やめておいたほうがいいんじゃないの』みたいな話が広まってしまって、少なくとも昨年ぐらいまでは『普通のケータイでも十分』みたいな風潮がありました。しかし、周りでちらほらとスマートフォンを使いこなす人が出てくると、『それいいね! ちょっと教えてよ』という話題でスマートフォンへの関心が高まっていき、これが逆に口コミ的効果を発揮して、一気にスマートフォンへのシフトに火がついたのではないでしょうか」

 最初は慎重でも、広がりだすと一気にブームになる可能性をもつ、関西特有の口コミマーケティングがあるということだ。それだけではない。日高さんいわく、関西人にしか分からない関西特有の「ノリ」も重要になってくるという。

「関西特有のノリというか、関西的ユーモアが要所要所に必要なのでしょう。たとえば関西人には関西人のセンスで作ったスマートフォンアプリが必要なのかもしれません。私もAndroidアプリを専門に開発していますが、関西にもアプリを開発するベンダーは数多くあります。こうした、関西発のベンダーが、関西人の心に響くアプリを次々にラインアップしてくれたことで、スマートフォンユーザーのスマートフォン活用の満足度も日に日に高まっていってるのではないでしょうか」

 振り返れば、携帯電話が普及をはじめた1995年前後、関西エリアは携帯電話普及率で東京を上回って常に1位だったと記憶している。会話することを何より大切にする関西人にとって、携帯電話は最適なツールとして評価され、親しまれていったのであろう。ところがその関西人は当初はスマートフォンに対しては慎重だった。しかし、昨年後半以降は満足度でようやくGOサインが出たということなのだろう。

 筆者の個人的な見解だが、関東のユーザーはどちらかというと新しいものに敏感で、スマートフォンのブームとなり始めた2010年以降、いち早く新しいツールを使ってみようと多数のユーザーがスマートフォンに機種変更していった。しかし正直なところ、初期のスマートフォンの満足度は決して高いものとはいえなかった。国産メーカー各社の端末は、はじめてAndroid OSに挑戦するところも多く、新しいジャンルの製品開発に対して試行錯誤しているという感じが端末からも伝わってきた。スマートフォン開発に手馴れていた海外メーカーにしても、基本的にグローバルモデルをそのまま日本語対応させただけのものが多く、おサイフケータイやワンセグなど、日本の独自機能が搭載されていなかったために、中途半端さを感じたユーザーも多かったはず。

 しかし、2011年冬・2012年春モデル、そして2012年夏モデルのラインアップを見ると、国産メーカーもスマートフォン開発にこなれてきて、非常に完成度の高い製品を出荷するようになった。海外メーカーにおいてもしっかりと日本市場を研究し、国内独自サービスにしっかり対応させ、またカラーリングや端末サイズなども日本人の好みに合わせた豊かなバリエーションをラインアップするようになった。早い話、2011年以前にスマートフォンに乗り換えたユーザーは、満足度が必ずしも高かったとは言えなかったが、昨年冬以降にスマートフォンにシフトしたユーザーは、端末に対する不満は少なく、結果的に満足度が高まっているのだろう。

 とくにKDDIの最新ラインアップを見ると、たとえばURBANO PROGRESSO(京セラ製)は、Androidスマートフォンとしての完成度も高いが、音声通話も重視し、ディスプレー部をスピーカーとしてダイレクトに振動させる「スマートソニックレシーバー」を搭載し、雑踏でも明瞭に相手の声を聞くことができる。会話によるコミュニケーションを重視する関西人にとって、まさに満足度につながる機能といえよう。

 またHTC J ISW13HT(HTC製)は、グローバルメーカーであるHTC社が本気で日本市場を意識し、ローカライズを果たした製品。HTCといえば黒々した端末ラインアップでいかにも「オトコの使う道具」という雰囲気をかもし出していたものだが、レッドやホワイトといった、“HTCらしからぬ”ポップなカラーリングもラインアップさせている。こうした日本での利用環境や、日本人の好みまで考えたスマートフォンが昨年後半以降続々と登場してきた。今後のわが国のスマートフォンシフトに注目したい。
《木暮祐一》
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