【対談】モバイル、新興市場、スマートシティで確実に進むIPv6接続 | RBB TODAY
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【対談】モバイル、新興市場、スマートシティで確実に進むIPv6接続

ブロードバンド テクノロジー
Infoblox 副社長 クリケット・リゥ氏とエバンジェリストのトム氏
  • Infoblox 副社長 クリケット・リゥ氏とエバンジェリストのトム氏
  • インターネット総合研究所 代表取締役社長 藤原洋氏
  • Infoblox 副社長 クリケット・リゥ氏
  • InfobloxのIPv6エバンジェリストであるトム・コフィン氏
 DNSの第一人者でありInfoblox 副社長 クリケット・リゥ氏の来日にあわせ、インターネット総合研究所 代表取締役社長 藤原洋氏の対談が実現した。ネットワーク管理者ならバッタの表紙の本は読んだことがあるだろう。クリケット・リゥはその本、DNSのバイブルと呼ばれる「DNS & BIND」(O'Reilly Media刊)の著者でもある。

 Infobloxは、高可用性DNS/DHCPアプライアンスのベンダーとして、先のInterop Tokyoでは、IPv4およびIPv6に対応したDHCPルータなどをShownetに提供し、アワードも受賞している。また、ナノオプトグループは、そのInteropを主催しており、IPv6の普及に国内外で尽力している企業だ。

 IPv6は、これらかの事業やサービスにおけるコアネットワークにとって、両者とも重要キーワードになるとの認識を持っており、対談では、IPv6のこれからの世界市場についての議論が交わされた。対談には、両名の他、InfobloxのIPv6エバンジェリストであるトム・コフィン氏も参加して行われた。


藤原氏:米国は他の国や地域に比べてIPv4のアドレスがとても多く割り振られていますが、IPv6はそれほど積極的ではなかった。なぜでしょうか。

リゥ氏:米国は潤沢なIPv4アドレスによって長い間、IPv6を無視していられました。今年の2月にIANAはIPv4のアドレスがなくなり、4月にはAPNICが最後の/8のアドレスを振り出しました。おそらく年末か来年の早い段階で、IPv4アドレスの全ての払い出しが終わるでしょう。その後は、IPv6アドレスがどんどん増えていきます。IPv4アドレス空間も20年くらいは存続するでしょうが、アジア圏などこれから伸びる市場はIPv6アドレスの市場になるといえます。米国もそれらの新しい接続を無視するわけにはいきません。大きな変化はこれから起こります。
コフィン氏:それに、モバイルデバイスの急速は普及も忘れてはなりません。これらのデバイスすべてをインターネット接続させる場合、IPv4アドレス空間では足りません。プライベートアドレスでまかなうにしても技術的な問題があります。ベストなソリューションはIPv6ですが、この場合、既存のIPv4アドレス空間と拡大していくIPv6アドレス空間をやり取りするブリッジの問題もあります。

藤原氏:私の認識では、欧米ではまだIPv6の普及率はそれほど高くありません。しかし、中国、インド、アフリカなどは普及率が上がっています。新興市場はIPv6の市場という見方も可能です。このことは、Infobolxのビジネスに影響はありますか?

リゥ氏:非常に重要なポイントです。IPv4のアドレス割り当て比率でいくと、米国が全体の27%で1位です。2位は10%の中国なのですが、中国での人口比でのインターネット普及率は高くありません。潜在的な接続人口のほうが多いのです。インドやアフリカなども同様で、残りの人たちがインターネット接続を得るときはIPv6アドレスになります。

コフィン氏:10年前はPCやノートPCのことを考えていればよかったのですが、現在は一人のユーザーが多数のデバイスを持ち、そのすべてがIPアドレスを必要としています。

藤原氏:その新しいデバイスですが、スマートフォンによって、モバイル機器が電話からインターネット端末に変わってきている現実があります。スマートフォンがIPv6に与える影響はどんなものがありますか。

リゥ氏:トムが指摘したとおり、一人当たりに必要なIPアドレスが複数になります。私個人もすでに2台のノートPC、iPhone、iPadと持っていますが、一人がいくつものIPアドレスを消費するようになります。例えば、アフリカなどでは、日本や米国のように通信インフラが整備されていませんが、コストのかかる有線よりも無線ネットワークが基本となるでしょう。これらの国では、IPv4アドレスの在庫がまだありますが、無線ネットワークの整備とスマートフォンの普及によって急速に不足していくるかもしれません。

藤原氏:Blackberryは、いまとなってはゲートウェイを経由した制限の多いインターネット接続といえるものですが、IPv6普及に影響を与えませんでしたか。

リゥ氏:Blackberryについては、プロキシでインターネットに接続しているようなもので、古いスタイルのスマートフォンといったところです。ビジネスにはインパクトを与えましたが、iPhoneやAndroid端末はコンシューマ製品として市場に普及したので、IPv6への影響という意味では、数量による影響が大きいと思います。

コフィン氏:ゲートウェイやプロキシという意味では、Blackberryは、NATによる接続に似ているかもしれません。しかし、IPv6では、ピア接続というインターネット本来の特徴も持っています。NATを介さずダイレクトに端末どうしを接続することができます。これは、IPv6インターネットのサービスやビジネスの新しい可能性を広げるものだと思います。

藤原氏:Blackberryは、コンシューマにスマートフォンというスタイルや機能を教えるという役割を果たしたという意味では重要なマイルストーンだったのでしょう。

 次の質問ですが、M2MもIPv6の応用領域として注目されています。M2M市場は米国ではどうですか。自動車の車車間通信やITSなどでは、さまざまな通信モジュールとインターネット接続が期待されています。例えば、私の予想だと、今後10年で10億台の自動車が世界中で製造されると思っています。そして、これらの車にはおそらく10個くらいずつIPアドレスが割り当てられることになると思います。この規模のアドレス空間はIPv6アドレスでなければ対応できません。

リゥ氏:そのとおりですね。M2Mの市場は米国でもこれからですが、衝突回避システムへの応用など研究が進んでいます。M2Mのネットワークはフラットである必要がありますし、/64のセンサーネットワークの空間の利用についてはいろいろな研究がされています。電力計のスマート化、パスポートなどへの応用が考えられています。面白い例では、ディズニーがFastPassの発行にIPv6を利用できないかと興味を持っています。すべてのアトラクションの乗り物1台1台にIPv6アドレスを割り当てて、混雑状況や運行スケジュールなどとあわせて、適切な時間のFastPassを発行するシステムです。

藤原氏:ところで、日本市場はいろいろ参入障壁があるかと思います。大企業は閉鎖的だったり、新しいことをやりたがりません。Infobloxは日本市場で成長していると聞いています。秘訣はなんですか。

リゥ氏:現在、Infobloxのグローバルでの売上は1億5000万ドルあり、そのうち10%が日本市場での売り上げです。非常に重要な市場ですが、日本法人を設立して、日本人によるパートナー戦略を重視しています。秘訣のようなものはとくにないです(笑)。

藤原氏:中国はどうでしょうか。中国には政治的な障壁だけでなく、情報を制御するグレートファイアウォールがあります。日米ともに中国で成功しているIT企業は多くありません。グーグルやアマゾンでさえ失敗しています。私は、Infobloxの製品のような、IPv4/IPv6のデュアル構成で相互接続性の高い製品が中国でも普及すれば、民主化が進むのではないかと期待しています(笑)。

コフィン氏:それについては、興味深い話があります。Hurricane Electricという会社がフリーのIPv6トンネルを提供しているのですが、中国のユーザーがこれを利用して、グレートファイアウォールを超えて外国のIPv4ネットワークにアクセスできています。

リゥ氏:すでに中国には拠点を進出させています。日本、中国を含むアジア地域8の国や地域(日本、中国、香港、シンガポール、オーストラリア、マレーシア、タイ、インドネシア)の売り上げ合計は、グローバル全体の20%を占めています。その期待に添えるように努力したいと思います。
《RBB TODAY》
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