【テクニカルレポート】持続可能性を高める行動を促す情報技術“Sourcemap”(前編)……ユニシス技報 | RBB TODAY

【テクニカルレポート】持続可能性を高める行動を促す情報技術“Sourcemap”(前編)……ユニシス技報

日々のビジネス活動において、CO2排出量に代表される環境に配慮した製品作りや工程の実践はもちろんのこと、環境問題への貢献目標・貢献度を示すことの重要度が増している。

エンタープライズ その他
図1 ノートパソコンのソースマップの例
  • 図1 ノートパソコンのソースマップの例
  • 図2 ソースマップに挿入されたビデオ
  • 図3 Google Earth 上のソースマップ
要約 
日々のビジネス活動において、CO2排出量に代表される環境に配慮した製品作りや工程の実践はもちろんのこと、環境問題への貢献目標・貢献度を示すことの重要度が増している。また、環境貢献を示す対象は「数値データ」だけではなく、製品を製造・販売する上で必要となる原材料や工程も含まれるべきである。原材料や工程を可視化することにより、希少金属など再生や代替が不可能といわれる貴重資源の枯渇防止への貢献や、原材料発掘拠点、加工拠点における地域社会と環境の問題を浮き彫りにし、解決のための行動を促すことができるからである。

 米国マサチューセッツ工科大学メディアラボは、研究テーマプロジェクト「Sourcemap.org」を手掛けている。Sourcemap.org は、快適安全な生活を営むことのできる環境、そしてそれを取り囲むビジネス、社会、文化全体が持続する可能性(持続可能性:Sustainability)を高め、人類の未来を守ることを目指す。プロジェクトの核となるのは環境へのインパクトを可視化し、見る者に持続可能性を高める行動を促すことによりその考えを実践するオープンソースWeb アプリケーション「Sourcemap」である。本稿ではSourcemap の概要、Sourcemap 誕生の礎となったビジネスシナリオの紹介、そしていくつかの技術説明を通して情報システムが人類の未来を守ることにどのように寄与できるか言及する。

1.はじめに

 日本ユニシスは産学連携R&D 活動として、世の中を変えうる新技術の芽生えにアンテナを張り、共同研究も行っている。その一環として2008年以来、表現とコミュニケーションに関するデジタル技術の殿堂ともいわれる、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのスポンサー企業として、教授・研究生らとのコネクションを構築する年二回のスポンサーミーティングへの参加、あるいは個別ディスカッションなどを通し、最新研究テーマに関与している。

 2009年のスポンサーミーティングにおいて、MITは新プロジェクト「Sourcemap.org」を発表した。Sourcemap.orgとは、人々が、普段目にしている製品について「どこから来たのか」、「どんな材料で製造されたのか」、そして「どのような工程で製造されたのか」を知る権利がある、という信念のもと、人々に行動を促し、人類あるいはビジネスの持続可能性(Sustainability)の実践を目指すプロジェクトである。

 本稿は、Sourcemap.orgの核となるWebアプリケーション「Sourcemap」の概要を説明し、続いてビジネスシナリオの考察、最後に主要機能についての簡単な技術説明を行う。
2.Sourcemapとは
 2.1.Sourcemapの目指すゴール

 普段は表に現れない環境へのインパクトを認識させ、未来に渡り人類文明が持続するための行動を促す情報システムがSourcemapの目指すゴールである。そのための方法として、製品やサービスを構成する原材料の源およびルート(ソースマップ)を示し、その上でそれらが引き起こす環境へのインパクトを視覚化する。対象としている具体的な環境へのインパクト、およびそれらを認識した結果実行される行動の効果としては次の二つが挙げられる。

1)不要なCO2 排出とその抑制
 製造工程において組み立て拠点と部品の製造拠点の距離が離れていることはめずらしくない。遠く離れていればいるほど移動に要する輸送手段のCO2排出は膨大なものとなる。しかし、このことは普段から十分認識されているとは言えないであろう。製品やサービスにまつわるルートと輸送手段、そしてそれが排出するCO2が示されれば、製造拠点の近隣に組み立て拠点を設置するなどの行動を促し、CO2排出抑制につながる。

2)希少資源の過剰消費とその抑制
 精密機器の製造には、20カ国以上から取り寄せた、50を超える原材料が必要と言われている。材料の中には、一旦溶解されてしまうと、元の個体に戻ることができない希少金属が使われている。例えば液晶ディスプレイに使われるインジウム、ハードディスクに使われるアンチモンは2020年頃には枯渇すると言われる。これら希少金属のリサイクルに関しての国際的な条約や規制はなく、最終的に各国のリサイクル法などの規制により処分、あるいは蓄積されているのが現状である。こうした希少金属の使用実態が明らかになれば、消費抑制行動を促し希少資源の保護につながる。

2.2.Sourcemapの特徴
 2.2.1.直観的なユーザインタフェース

 まず、典型的なノートパソコンのソースマップを図1に示す。数字の書かれた円はノートパソコンを構成する原材料を示しており、「+」のついた円は組み立て拠点を示したものである。各原材料の円をクリックすることで、原材料の名称、仕入先、重量、そしてCO2 排出量(CFP)の内容を確認することができる直観的なインタフェースとしている。画面左上には、製品のソースマップへのリンクを持つQRコードがある。また、CFPのバーチャート表示、原材料の一覧表示、製造・輸送・利用時の各工程におけるCFPのデータをそれぞれ、画面右上の「Bar Chart」、「Made Of」、「Receipt」ボタンで容易に確認することができる。

 2.2.2.製品やサービスに対する親近感を促すための工夫

 Sourcemapは各原材料の採取工程や組み立て工程などの映像をソースマップ上に挿入するインタフェースを備えている。製品の裏側にあるストーリーを伝えることにより、製品やサービスに親近感を持たせ、情報をより深く知ることを促すことができる(図2)。

 2.2.3.多彩な外部連携機能

 作成されたソースマップをエクスポートしてGoogle Earthの衛星画像と連携する機能を備えている(図3)。これにより、実際の希少資源の採掘所や原材料の出荷場所、製造工場などをズームインして確認することができる。Sourcemapには他にも複数の外部連携機能がある、これらについては4 章の「地図データのエクスポート」を参照願いたい。

 2.2.4.オープン性

 SourcemapはGPLライセンスに基づいたオープンソースであり、ソースコード、ならびにユーザの貢献で蓄積されたソースマップは全てコピー、配布、改造、修正をすることができる。また、現在登録済、あるいはこれからユーザの貢献で蓄積されていく原材料のデータについても、PDDLに基づいたライセンスとなり、同様にコピー、配布、改造、修正をすることができる。


執筆者紹介 
・山崎治彦(Haruhiko Yamazaki)
 1991年日本ユニシス(株)入社.UNIXシステムの周辺機器制御システムの受入保守,プロダクト開発に従事.1998年よりASP事業の立ち上げに参加.2001年からは海外ビジネス支援を担当.2007年よりNUL システムサービス・コーポレーションに出向後,米国内研究開発機関との連携をベースとした日本ユニシスグループのR&D 推進に従事中.

・岩下忠資(Tadashi Iwashita)
 1997年日本ユニシス(株)入社.米国Unisys 製2200シリーズの基本ソフトウェア主管業務を担当する.2004 年4 月ユニアデックス(株)に転籍.その後OSS関連作業,メインフレーム新機種の開発・受入に従事し,2010 年2 月NUL システムサービス・コーポレーションに出向.Unisys プロダクトリエゾン業務と米国大学研究機関の調査活動に従事.

・Leonardo Bonanni
 マサチューセッツ工科大学メディアラボ内プロジェクト「Kitchen of the Future」に発明者,産業デザイナー,アーキテクトとして従事.現在はニューヨークのParsons School of Design およびマサチューセッツ工科大学メディアラボにてSustainable Designを教える.また同所の「Tangible Media Group」にてPostdoctoralResearch Associate として従事中.Sourcemap.org の創設者,CEO.


※同記事は日本ユニシスの発行する「ユニシス技報」の転載記事である。
《RBB TODAY》

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