マツダの“魂”が立体になるとき……クレイモデラーというお仕事 | RBB TODAY

マツダの“魂”が立体になるとき……クレイモデラーというお仕事

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クレイモデラー
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  • “魂動”オブジェ
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 次期『デミオ』になると予想されるコンセプトカー『跳(ハズミ)』を発表したマツダは、これまでにも『CX-5』から『アテンザ』『アクセラ』と魅力的なプロダクトを発表し続けている。マツダのデザインがどのように生み出されるのか? 広島にあるマツダ本社でマツダデザインの秘密に迫った。

 『CX-5』以降、新しく発表されるマツダのデザインは、“魂動”と呼ぶデザイン言語をもとに統一した世界観を持っている。“魂動”は動物の動きがもつ躍動感、例えば“獲物を狙う肉食獣”といった、筋肉の緊張感をモチーフとした造形美を目指している。

●カタチに魂を吹き込むクレイモデラー

 今回、カタチに魂を吹き込むクレイモデラーの仕事を見学するため、広島本社にあるデザインスタジオを訪れると、玄関には“魂動”を立体的に表現したオブジェが展示されていた。これには、マツダが目指すデザインを立体化して目立つ場所に示すことで、デザイン開発に関わる人がインスピレーションを得られる狙いがあるという。同じ場所にはコンセプトカー『シナリ』が展示されていたが、改めて見るとコンセプトカーで目指していた表現が、量産車において忠実に反映されていることに驚かされる。

 自動車の新型車開発のプロセスでは、まず初めにその車のコンセプトが決められる。そのコンセプトを元にデザイナーがイメージスケッチを書き、クレイモデラーが2次元のイメージスケッチを3次元の立体モデルに仕上げる。その後、デザインが決定した立体モデルは、実際に工場で生産できる形であるかなどを検証してデータ化、製品化がすすめられる。

 マツダでは、イメージスケッチを立体化する作業は、デザイナーとクレイモデラーとの二人三脚で行なわれる。まずは、小さな4分の1の立体モデルを作って、様々な試行錯誤が繰り返される。4分の1モデルでデザインが決まると、今度は実物大のモデルを制作してデザインを確認していく。

 2次元のイメージスケッチを3次元の立体にする時に使われるのが、クレイと呼ばれる粘土。クレイは暖めると柔らかくなり、いっぽう冷えると木のように固くなり、削ることも可能。緊張感のある今にも動き出しそうな形を表現するため、マツダでは冷えた時に硬めになるよう、クレイのメーカーに調節してもらっているという。

●クレイモデラーの作業を体験

 クレイモデルを仕上げるスタジオにはコンセプトカー『シナリ』の実物大のモデルが展示されていたのだが、そのコンセプトカーを使って実際にクレイを削る作業を体験させてくれた。

 暖められたクレイを手にすると肉まんのようにホカホカで柔らかい。ほんのりと硫黄のようなニオイがするが嫌なニオイではない。クレイは暖かいうちに削っていった方が作業がしやすいというので、スクレイパーと呼ばれる切削具を使って削っていく。鰹節を削った時のような削りカスがスルスルと出来上がり、これはなかなか気持ちがいい。しかし、盛りつけたクレイを周りの面に合わせて滑らかに仕上げるのは難しい、一人前になるには相当な訓練が必要となりそう。現役のクレイモデラーたちも、先輩の仕事を見ながら日々勉強しているという。

●立体をデザイン

 近年はコンピューターを使った3Dモデリングの技術も進んでいるが、マツダでは立体を目の前にしたデザイン開発に時間をかけ、力を入れているという。

 “なぜ実物のモデルにこだわるのか?” この疑問に、マツダデザイン本部デザインモデリングスタジオ・クレイモデルグループの助川裕さんは「コンピューターを使ってイメージスケッチを立体化する技術も進んでいますが、デザイナーとモデラーが一緒になって立体で確認しながらデザインを仕上げていくことで、様々なトライができるメリットがあります」と答える。

 「また、設計開発陣もすぐに集まれる環境にありますので、デザインを確認してもらうといった時にも、立体があるほうが説得力が違います。やはり、目の前に実物のカッコいいデザインがあると、他の開発陣も“これを現実のものにしよう!”と頑張ってくれます」

 確かに、平面のディスプレイで見るのと実物のモデルで見るのとでは迫力が違う。このスタジオではステアリングやダッシュボードといったインテリアもクレイで制作している。スケッチやコンピューターの画面だけでは確認できない、手に触った時の感触を確かめながら立体に仕上げていけるのは、やはり現実世界でしかできない作業といえる。

 オーディオの世界では、デジタルで収録されたCDを使いつつも、真空管のアンプを用いて暖かい音色を楽しむ人たちがいる。マツダのデザインには、人の手で削り出し確認するようなアナログな部分に時間をかけることで、数値化できない魅力が織り込まれているのかもしれない。
《編集部》

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