【テクニカルレポート】高信頼・大量データの情報通信サービスを支えるブロードバンド光ネットワーク技術――日立評論~後編 | RBB TODAY

【テクニカルレポート】高信頼・大量データの情報通信サービスを支えるブロードバンド光ネットワーク技術――日立評論~後編

ブロードバンド 回線・サービス

図4:10G-EPONを用いた映像配信システム
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3.10G-EPONシステム

3.1 特長

 現在普及しているGE-PON(伝送速度:1Gビット/s)の10倍の通信帯域の提供が可能な10G-EPON(伝送速度:10Gビット/s)の標準化がIEEE802.3avとして進められ、2009年9月に最終承認された。同一光ファイバ内で現行GE-PONと共存使用が可能なように、10Gビット/s伝送用に専用の波長を割り当て、波長多重して伝送を行うことが標準仕様として規定されている。

 日立グループは、10G-EPONの標準化活動に初期段階から参画するとともに、実用化に向けた技術開発を行っている。2009年3月には、通信距離20km、家庭用送受信器32台を接続した環境において、高信頼仕様を満たすビット誤り率10-12での通信品質を達成し、双方向高精細映像通信を実現した。

 現在開発中の10G-EPONの特長として、現行GE-PONと共存使用する場合に、1Gビット/sと10Gビット/sの光バースト信号を同時に受信可能なデュアルレート受信機を用いる点が挙げられる。

 今後は、10G-EPONの普及をめざし、同時収容できる加入者数を32から128に増やすことでOLT(Optical Line Terminal)数を削減し、低コスト化や省電力化を図っていく。そのためには高感度化技術や、また高品質な映像配信サービスを提供するためのコア網と連携した帯域保証技術も必要とされており、これらの課題に取り組みながら2011年度製品化をめざし、研究開発を推進していく。

3.2 10G-EPONを使用したサービスの形態

 次世代の光アクセスでは、インターネットだけでなく、高品質な映像配信サービスが期待されている。10G-EPONのブロードキャスト技術を用いることにより、ハイビジョン映像(1チャネル20Mビット/s)を約500チャネル同時に各加入者に配信できる(図4参照)。

 また、通信事業者から映像配信するだけでなく、加入者からさまざまな情報をリアルタイムで収集することで、ホームセキュリティサービス、健康管理や双方向インターネット教育などを高精細映像でより快適に実現できる。ビジネス領域では、高精細映像による監視サービスやマーケティングへの応用が現在検討されている。さらに、街頭やコンビニエンスストアで映像を映し出すデジタルサイネージ広告を光ファイバを用いて提供することも考えられている。

4.標準化動向と日立グループの取り組み

 MPLS-TPは当初T-MPLS(Transport MPLS)という名称で、ITU-Tにおいて標準化が開始された。その後、以前からIETFで標準化されていたMPLSとの互換性維持のため、標準化の場をITU-TからIETFに移した。議論の結果、IETFのMPLSをパケットトランスポートとして拡張することで両団体が合意し、プロトコル名称をMPLS-TPに変更した。現在は、要求条件などMPLS-TPの骨組みとなる草案が正式文書として承認され、OAMやプロテクションなどの詳細メカニズムに議論が進みつつある。このような中、日立グループは、装置ベンダーとして実装にかかわる提案活動を活発化し、MPLS-TPの標準化を加速する施策を開始したところである。今後は標準化の進行状況を注視しながら、標準対応装置のプロトタイピングを行い、国際的な相互接続団体に参画することで開発を加速する。これにより、標準準拠装置を早期に市場投入し、MPLSTP市場の立ち上げおよび拡大に尽力していく。

 PON(Passive Optical Network)の国際標準は、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)とITU-Tの2団体によってそれぞれ策定されている。IEEE標準では2009年に上り1Gビット/s ・10Gビット/s、下り10Gビット/sの10G-EPON(IEEE802.3av)の標準化が完了している。日立グループは標準化開始当初から参画し、積極的に提案活動を実施してきた。特に光リンクバジェットに関する提案は一部標準化規格に採用されている。さらにPONのシステム仕様の標準化のため、IEEE1904委員会が2010年3月から開始され、そこにおいても標準化に貢献しながら開発を加速していく。また、ITU-T標準では下り10Gビット/s、上り2.5Gビット/sのXG-PONの検討が進められており、2010年に勧告化される予定である(図5参照)。日立グループはPONの標準化開始当初からのメンバーであり、現在はIEEEとITU-Tの物理層規格の共通化に向けて積極的に活動している。

5.おわりに

 ここでは、今後の情報通信サービスが必要とする高い信頼性と大容量通信を実現するブロードバンド光ネットワーク技術におけるMPLS-TPネットワークシステムと10G-EPONシステム、および標準化動向と日立グループの取り組みについて述べた。

 安全・安心・快適な社会の実現に向け、今後さまざまな情報通信サービスが生まれてくる。そのためには公衆通信網だけでなく、情報通信サービスの提供企業のネットワーク(例:データセンター内通信ネットワーク)、利用企業のネットワーク(例:オフィス内ネットワーク)を含めた、サービスにかかわるネットワーク全体で技術課題の解決が求められる。日立グループは、上記の情報通信サービスが必要とする通信品質を実現するための課題解決に取り組み、今後も情報通信ネットワークの発展に寄与していく。

 なお、10G-EPON開発の一部は独立行政法人情報通信研究機構委託研究「集積化アクティブ光アクセスシステムの研究開発」によるものである。


■執筆者(敬省略)

・松本 謙尚
1992年日立製作所入社,情報・通信システム社 通信ネットワー
ク事業部 ネットワークシステム本部 パケットトランスポートプ
ロジェクト 所属
現在,パケット光トランスポートシステムの開発に従事
電子情報通信学会会員,情報処理学会会員

・西野 良祐
1996年日立製作所入社,情報・通信システム社 通信ネットワー
ク事業部 ネットワークシステム本部 パケットトランスポートプ
ロジェクト 所属
現在,パケット光トランスポートシステムの開発に従事
電子情報通信学会会員

・池田 博樹
1995年日立製作所入社,中央研究所 情報システム研究センタ
ネットワークシステム研究部 所属
現在,光アクセスネットワークの研究に従事
博士(工学)
電子情報通信学会会員,IEEE学会会員,通信方式研究会幹事

・遠藤 英樹
2004年日立製作所入社,中央研究所 情報システム研究センタ
ネットワークシステム研究部 所属
現在,パケット光トランスポートのシステム開発とその機能開発
に従事

※同記事は日立製作所の発行する「日立評論」の転載記事である
《RBB TODAY》

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