【クチコミ分析最前線】年800万人を集客、USJのソーシャルメディア戦略 | RBB TODAY

【クチコミ分析最前線】年800万人を集客、USJのソーシャルメディア戦略

エンタープライズ ソフトウェア・サービス

USJ マーケティング・営業本部 マーケティング部 インタラクティブマーケティング 課長の大森研治氏
  • USJ マーケティング・営業本部 マーケティング部 インタラクティブマーケティング 課長の大森研治氏
  • NECビッグローブ メディアサービス事業部 シニアエキスパートの渡辺純子氏
  • ソーシャルメディアマーケティングの役割
  • クチコミは起こせない(仮説)
  • ブログ分析の例
  • アトラクションの反応を感゜Reportで調査
  • ツイッターによりいち早く問題点を把握し、改善に結び付ける
  • USJに関するつぶやきや書き込みを調べると、2010年2月ごろから、ツイッターの書き込み件数がブログを上回るようになった
 ソーシャルメディアが、マーケティングツールとしても注目を集めている。その活用方法はさまざまだが、ブログやツイッター(Twitter)をマーケティング調査に活用している企業がある。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを経営するユー・エス・ジェイ(以下、USJ)がそれだ。

 USJでは、NECビッグローブのネットリサーチ・クチコミ分析サービス「感゜Report(かんどれぽーと)」を利用し、ブログやツイッターに書き込まれている情報を分析することで、アトラクションの評価、キャンペーンの効果測定などを行っている。担当するのは、USJ マーケティング営業本部 マーケティング部 インタラクティブマーケティング 課長の大森研治氏だ。

 感゜Reportは、特定キーワードがネット上でどのように書かれているかを分析し、話題の商品やトレンド、特定商品やサービスの市場の評価を分析・可視化する機能がASPとして提供されるサービスだ。これまでブログが主な分析対象だったが、新たにツイッターを分析対象に加え、いつくかの先進的な企業に対し、キャンペーンやブランド意識・トレンドの把握を目的として、提供を開始している。USJでは、この感゜Reportの新機能開発プロジェクトとして、ツイッター分析も利用している。

■USJでの様々な取り組み

 USJでは、来場意向を高めるという目的のため、テレビ、新聞などのマス広告のほか、公式サイト、ネット広告などWebプロモーションも積極的に展開してきた。たとえば、AKB48を使ったプロモーションでは、PCサイト、SNS、ツイッター、携帯サイトを多角的に活用するなど、新しいメディアの利用も活発だ。また、達人ユーザが一般ユーザの疑問や質問に答えるQ&A(パークの知恵袋)や投稿、特典付きのオフィシャルレポーターによるアトラクションの評価レポート掲載といったサイト戦略も早くから展開している。

 USJでは、こうしたマスメディア、Webプロモーションに対して、2008年12月から感゜Reportによる分析を導入している。感゜Reportを使い始めたのは、どのような理由からだったのだろうか。大森氏によれば、「USJでは年間800万人の来場者を想定したビジネスを展開しています。当社のようなテーマパークでは、必然的にマスを対象にしたマーケティング戦略が不可欠です。そのため、従来からのパネルを使ったマーケットリサーチや本格的な調査・分析も欠かせないのですが、もっと小回りのきく調査・分析や新しい調査手法へのニーズもありました。感゜Reportは、その目的に合致したのです」とのことだ。

 クチコミ分析を始めて、新たな発見があったという。それは、「結局のところクチコミは結果であり、仕掛けて起こせるものではないということです」と大森氏。USJでは、数々のWebメディアでのプロモーションやキャンペーンに、クチコミの拡大を期待したものの、感゜Reportによって実際に話題になっているキーワードが盛り上がっているのかを分析してみると、「メディア情報への反響」と「ブランド体験の共有」に大別されるということだった。

■USJのSMM戦略=生活者の声の重視/自然発生的なクチコミの収集

 大森氏は、そのような分析を経て、現在では次のような考えに至っている。公式サイトに訪問する人は、来場意向が高いため、この層へのサポートは当然重要であるが、新規顧客の開拓には別の施策が必要ということになる。それは、従来からのマスメディアであったり、公式サイト以外のサイトやメディアである。つまり、USJに興味がある、すでに行きたいと思っている層以外にアピールするには、もっと別分野でカテゴライズされているメディアに露出させなければならないということだ。

 一例として、「おおさか遊ぶろぐ」という、娯楽全般を扱うブログサイトの利用があげられる。このサイトの運営にUSJは間接的に関わっているが、サイト内のコンテンツはUSJとの紐づけはそれほど強くない。パーク体験の結果として起こったクチコミに耳を傾け、自然な形でその内容を多くの人に見せる取り組みである。また、パーク体験自体をクチコミが発生するほどの価値に高めるため、現場スタッフが来場者に積極的にコミュニケーションをとる「マジカル・モーメント・プロジェクト」も発足した。

 さらに、ブログやツイッターの活用を、短期的なビジネス効果を上げるという目的において期待しているという。一般に、Webやソーシャルメディアを使った戦略は、顧客とのエンゲージメントなど長いスパンで考えるべきものという意見があるが、大森氏はWebメディアの広く、深くという特質に着目し、短期的なビジネスでの可能性を模索しているという。

 具体的な内容は現時点では公開できないそうだが、ソーシャルメディアを活用するいくつかの取組みを検討しているという。ブログには、体験した後に出来事や評価が比較的冷静に記述される。これはナレッジとして後から再利用するデータベース的な意味合いが強い。これに対してツイッターは、その場で感動なり感情を表現するツールといえるので、リアルタイムかつエモーショナルな情報発信に絶大な効果を発揮する。両者をバランスよく分析することで、効果的なマーケティングデータが得られそうだ。

 そのために、感゜Reportのブログ分析のほかにツイッター分析も必須の機能だと大森氏は言う。

■ツイッターデータ分析

 NECビッグローブでは、具体的にはどんな分析機能を用意しているのだろうか。この疑問には、同社 メディアサービス事業部 シニアエキスパートの渡辺純子氏が、答えてくれた。

 感゜Reportはブログの定点観測データを数値化することで発見的なツールとして評価を得ており、これをツイッターに広げたとしても、そのコンセプトや機能は大きく変わらない。ただし、ブログ分析では、ノイズを除去し分析精度を上げるための絞り込みの機能をチューンしているが、ツイッターは大森氏が言うように感情のメディアでもあるので、なるべく網羅的な集計を行うようにしているという。

 またツイッターは、リツイート(RT)やハッシュタグにより、ブログよりも繋がりが広がる傾向があるので、キーワードごとの連鎖や繋がりをネットワーク図のように可視化する機能も実現される予定だ。このネットワーク図は個々のつぶやきや引用されたサイトを示すノードをURLなどにドリルダウンすることもできるそうだ。あるいは、タイムラインごとのビュー機能、RTだけを抽出し、たどっていく機能なども検討しているという。

 これらの機能は、実際にUSJのプロモーションの効果測定などに利用されながら開発が進められている。大森氏は、すでにいくつかの発見をし、実際のビジネスへのフィードバックも実践できたと言う。たとえば、あるアトラクションと携帯電話が連動したサービスを展開した際に、システムの改善すべき点をツイッターの分析から把握でき、実際のシステム改修を迅速に行うことができたそうだ。このスピード感は、従来のマーケットリサーチでは実現できないものだそうで、季節キャンペーンの効果測定やアトラクション評価などでは効果を発揮するという。

 トレンド分析的な発見としては、2010年の2月下旬から、USJ関連キーワードの出現件数がブログよりツイッターのほうが上回り、その傾向は現在まで続いているという。大森氏は、これらの結果は、ツイッターのメディアとしての伝播性の高さを示唆するものとして、感゜Reportの分析能力の広がりに期待を寄せている。
《中尾真二》

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