スピーカーであるマイクロソフトのWindows Embeddedビジネス担当の松岡正人氏よりまず、組み込み開発の特徴が紹介された。組み込み開発では、汎用のCPUではなく、CPUコアを含むSoC(Systems on Chip)を始めとして専用設計のハードウェアを使用することが多い。CPUの種類が多く、複数のアーキテクチャが混在するため、開発ツールも様々に組み合わせて使用する必要も生じる。また、コストや電力消費量などの課題から、利用可能なメモリが劇的に少ないケースも多い。さらには、PC開発で言うところのデバイスドライバやブートローダー、BIOSなど、OS自体も開発対象となってくるため、コード数が膨大になる。まさに、ハードウェアとOSの両方の世界を知っていなければ、手が付けられない世界である。
マイクロソフトの組み込みプラットフォーム「Windows Embedded CE」「Windows XP Embedded」「Windows Embedded for Point of Service」では、いずれもVisual Studioと.netの開発環境が使えるため、例えば、Windows MobieやWindows CE向けのアプリケーションを、エミュレータを使って実機レスで開発でき、同じテクノロジーを使用していることによるメリットが大きいと言う。
以上の説明の後、Windows Embedded MVPの奥村正明氏(富士通ソフトウェアテクノロジーズ)より、KIOSK端末をターゲットとしたWindows XP Embeddedによる組み込み開発のデモが行われた。
こうしてプラットフォームの構築を終えると、次はアプリケーションの開発に移るが、ここで奥村氏より、Windows XP Embeddedの独自機能である「Write Filter」が紹介された。ディスクへの書き込み要求を、フィルターを通して退避領域へ書き込ませることができ、ストレージの寿命延長やデータシステムの保護といった効果につながる。実際に、この機能を目的としてWindows XP Embeddedを採用するベンダーも多いと言う。同氏は「Write Filterとうまく付き合いながら、アプリケーションの配置や更新を設計することが必要」と言及。デモでは、KIOSK端末の運用開始後にアプリケーションを更新する必要が生じたと想定し、端末にあらかじめ作成した管理画面から「C:Program Files」フォルダをライトスルー設定する様子を紹介した。
次に、サードパーティが提供している様々なソリューションの中から、Windows Embedded MVPの金井典彦氏(東京エレクトロンデバイス)より、ハードリアルタイムを実現するIntervalZero社の「RTX」や、ファイルの保護やホワイトリストによるアクセス制御を可能にするSolidcore Systems社の「S3 Control Embedded」、BIOSカスタマイズによるPhoenix Technologies社のOS高速起動ソリューションが紹介された。
最後に松岡氏より、Windows Embedded製品を顧客の要件ごとに分類し直し、新しい名称体系に移行する旨の説明があった。従来のWindows XP Embeddedは「Windows Embedded Standard」となり、また同製品を含む汎用向けが「General Embedded製品群」、特定用途向けが「Connected Device製品群」となる。
《柏木由美子》