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【Tech・Ed 2008 Yokohama】組込み開発ではリアルタイム性とミドルウェアの標準化が重要

エンタープライズ その他
マイクロソフト株式会社 Windows Embeddedビジネス担当 シニアエグゼクティブプロダクトマネージャ 松岡正人氏
  • マイクロソフト株式会社 Windows Embeddedビジネス担当 シニアエグゼクティブプロダクトマネージャ 松岡正人氏
  • Tech・Ed 2008会場内の「Windows Embeddedタッチ&トライコーナー」では、Windows XP Embeddedを搭載したTAITO社のアーケードゲームを無料試遊できる。
  • Windows Embedded製品は、汎用向けと特定用途向けの2つのカテゴリに分かれ、新しい名称体系となる。
 マイクロソフトがワールドワイドで展開しているテクニカルコンファレンス「Microsoft Tech・Ed 2008 Yokohama」(8月26〜29日、パシフィコ横浜)にて27日、組み込み機器開発の入門セッションが開催された。

「ITデベロッパーのための組み込み開発入門」と題した本セッションは、PC開発とは異なる組み込み機器開発の技術やツールなどを、組み込み機器開発経験のない開発者にデモを交えながら紹介する90分のセッション。

 スピーカーであるマイクロソフトのWindows Embeddedビジネス担当の松岡正人氏よりまず、組み込み開発の特徴が紹介された。組み込み開発では、汎用のCPUではなく、CPUコアを含むSoC(Systems on Chip)を始めとして専用設計のハードウェアを使用することが多い。CPUの種類が多く、複数のアーキテクチャが混在するため、開発ツールも様々に組み合わせて使用する必要も生じる。また、コストや電力消費量などの課題から、利用可能なメモリが劇的に少ないケースも多い。さらには、PC開発で言うところのデバイスドライバやブートローダー、BIOSなど、OS自体も開発対象となってくるため、コード数が膨大になる。まさに、ハードウェアとOSの両方の世界を知っていなければ、手が付けられない世界である。

 加えて、「ぜひ覚えて帰って欲しい」と聴講者に向けて松岡氏が強調したのは、組み込み開発では“「リアルタイム性”がキーワードになるという点である。特に、遅延がいかに少ないか、ネットワークの世界で言うところのQoS、が求められる「ハードリアルタイム」要件を満たすことが、組み込み開発では重要になると言う。

 次に、組み込み開発の市場トレンドが紹介された。前年度比出荷成長率では、デスクトップPCが4%、モバイルPCが19%。これに対して、組み込み機器のうち、PNDを含むコンシューマ系が50%、PCベースのATMやPOS、KIOSKなどのエンタープライズ系が23%で、組み込み市場が急成長していることが分かる。

 しかし組み込み開発の現場では、機能の増加と開発期間の短縮により、プロジェクトが破綻するといったことが起こっていると言う。自動車の開発費の約半分をソフトウェアが占めると言われるほど、組み込み開発においてソフトウェアに比重が大きくなっており、こうしたコードの増加に対抗するには、「プラットフォームとアプリケーションを分離し、プラットフォームや開発環境、ミドルウェアにかけるコストを減らす(つまり標準化する)ことが必要になってくる」と松岡氏は言う。そしてその上で、魅力的なUI、適切な電力管理、ストレスのない応答速度など、顧客視点による「デバイスシナリオ」の構築が求められる。

 マイクロソフトの組み込みプラットフォーム「Windows Embedded CE」「Windows XP Embedded」「Windows Embedded for Point of Service」では、いずれもVisual Studioと.netの開発環境が使えるため、例えば、Windows MobieやWindows CE向けのアプリケーションを、エミュレータを使って実機レスで開発でき、同じテクノロジーを使用していることによるメリットが大きいと言う。

 以上の説明の後、Windows Embedded MVPの奥村正明氏(富士通ソフトウェアテクノロジーズ)より、KIOSK端末をターゲットとしたWindows XP Embeddedによる組み込み開発のデモが行われた。

 デモでは、(1).デバイス情報の取得、(2).コンポーネント作成、(3).コンポーネントの登録、(4).OSイメージのビルド、(5).ターゲットへの展開、といった一連の作業を、各種ツールを使って紹介。例えば、「Target Designer」に用意されている「Kiosk/Gaming Console」テンプレートのマクロコンポーネントを使ってコンポーネントを追加したり、コンポーネントの依存関係をチェックして足りないコンポーネントを追加するなど、およそ10分間で組み込み開発の疑似体験を提供した。

 こうしてプラットフォームの構築を終えると、次はアプリケーションの開発に移るが、ここで奥村氏より、Windows XP Embeddedの独自機能である「Write Filter」が紹介された。ディスクへの書き込み要求を、フィルターを通して退避領域へ書き込ませることができ、ストレージの寿命延長やデータシステムの保護といった効果につながる。実際に、この機能を目的としてWindows XP Embeddedを採用するベンダーも多いと言う。同氏は「Write Filterとうまく付き合いながら、アプリケーションの配置や更新を設計することが必要」と言及。デモでは、KIOSK端末の運用開始後にアプリケーションを更新する必要が生じたと想定し、端末にあらかじめ作成した管理画面から「C:Program Files」フォルダをライトスルー設定する様子を紹介した。

 次に、サードパーティが提供している様々なソリューションの中から、Windows Embedded MVPの金井典彦氏(東京エレクトロンデバイス)より、ハードリアルタイムを実現するIntervalZero社の「RTX」や、ファイルの保護やホワイトリストによるアクセス制御を可能にするSolidcore Systems社の「S3 Control Embedded」、BIOSカスタマイズによるPhoenix Technologies社のOS高速起動ソリューションが紹介された。

 最後に松岡氏より、Windows Embedded製品を顧客の要件ごとに分類し直し、新しい名称体系に移行する旨の説明があった。従来のWindows XP Embeddedは「Windows Embedded Standard」となり、また同製品を含む汎用向けが「General Embedded製品群」、特定用途向けが「Connected Device製品群」となる。
《柏木由美子》
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