「無料ファイルスペースとホスティングはビジネスモデルが違う」——HOSTING-PRO 2008パネルディスカッション | RBB TODAY

「無料ファイルスペースとホスティングはビジネスモデルが違う」——HOSTING-PRO 2008パネルディスカッション

エンタープライズ その他

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO) 田中邦裕氏
  • さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO) 田中邦裕氏
  • カゴヤ・ジャパン株式会社 代表取締役 北川貞大氏
  • 「Cold isle Sealing」概念図
  • 「Hot isle Sealing」概念図
  • 「Cold isle Sealing」試験写真
  • 空調効率が20%UP
  • トータルコストも削減
  • 株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ 代表取締役副社長 鴨川比呂志氏
 2月14日、東京秋葉原にてインターネットホスティング業界を対象にしたイベント「HOSTING-PRO 2008」が開催された。会場には多数のホスティング業者やベンダーのブースが出展され、各社のサービスや新技術の紹介等が行われた。また、最新の業界動向を解説するコンファレンスもいくつか開催され、多くの観客を集めていた。

 中でも日本を代表するホスティング会社の首脳陣が多数参加した「ホスティングビジネスに明るい未来はあるかないか?」と題されたパネルディスカッションでは、ホスティング業界の今後の展望について、興味深い論議が行われた。

 パネルディスカッションでまず話題となったのは、競争力を上げるための様々なコストダウンの試みについてだ。さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO) 田中邦裕氏は「重要なのは積み上げ方のコストをいかに下げるかです。例えば弊社ではラックにマウントしたサーバー本体のカバーとファンを取り外し、その代わりにラックの下部に大きなファンを付けてすべてのサーバーを一気に冷却しています。これだけで1サーバーあたり20W、1ラックには40台のサーバーがありますから800Wを節約しています。また、使っていないラックの電源を切る、品質を下げずにサーバーの稼働率を上げる、といった細かい努力を重ねることでコストを下げることに成功しています。(田中氏)」と語った。

 空調にかかる費用はコストダウンに直結する。カゴヤ・ジャパン株式会社 代表取締役 北川貞大氏は、データセンター内の空調効率を上げるために、空気の流れをコントロールする試みを発表した。ラックにシールド処理を施して冷気が逃げないよう閉じこめる「Cold isle Sealing」という技術を使うことにより、15%の空調効率アップが確認されたという。現在は実証実験の段階だがパッキングを完璧にすることによって将来的には20〜30%まで引き上げられる見込みだと言う。また、あわせて暖気がこもる場所を隔離する「Hot isle Sealing」という技術も実験中とのことだ。

 また、「空調効率を上げることによって電気代の削減効果に加えて、発電機や受電設備といった設備費の削減効果も期待でき、それによってデータセンター運営の固定費を落とすことができる。(北川氏)」とも語った。加えて、コスト面だけではなく環境適合性の面からもサーバーそのものの消費電力低下の重要性を強調した。

 続いて、コーディネーターの国際大学グローバル・コミュニケーション・センター主幹研究員 新谷隆氏による「マイクロソフトやGoogleなど、主に外資系企業が提供する無料サーバースペースなどの新しいサービスはホスティング会社の競合になるのか?(新谷氏)」という問いかけに対し、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ 代表取締役副社長 鴨川比呂志氏は「このような無料のサービスは昔から存在しました。それぞれのサービスのユーザーは求める物が違うので、両者は競合せず棲み分けができると思います。(鴨川氏)」と、かわした。

 さらにファーストサーバ株式会社 代表取締役社長 岡田良介氏は「そもそもビジネスモデルが違います。広告宣伝費で稼ぐ無料サービスと違い、我々ホスティング会社は品質の高いプラットフォームを安価で提供するとことによって対価を得ています。無料サービスを利用するユーザーは、汎用性の高い高品質なサーバーを求める我々のお客様とはまったく別のセグメントだと思っています。(岡田氏)」と重ねて否定した。

 ただし、対企業に対しては別のところが競合になると言う。それは顧客に対してインフラとソフトウェア両面から高度にカスタマイズされたシステムを提供するSI会社(SIer)だ。

 「ある程度規模の大きな企業のお客様になると、単にサーバーをお貸しするのではなく、ユーザーが必要とする様々な業務に対応したプラットフォームを提供するということになり、SI業者と事業領域が似通ってきます。ただ、彼らとの違いは汎用性にあると思います。SI会社はひとつのお客様に対してオーダーメイドでソリューションを構築しますが、我々は多数のお客様が汎用的に使用できる安定した環境を作ることを目的としています。高度なカスタマイズが必要なお客様にはやはりSI業者が必要かとは思いますが、我々もできる限り汎用性を高め、多くの企業のニーズに応えたいと思っています。(田中氏)」

 また、SI会社とは競合として敵対するのではなく、共存の道を探るべきという意見も出た。「我々はSI会社に対しても安価で安定した環境を提供することができます。SI会社とタッグを組むことによって、細かい顧客のニーズに応えつつも安価なシステムを提供することが可能になります。このことによって日本でSI案件の価格革命を起こしていけるのではないだろうかと思っています。(岡田氏)」

 株式会社クララオンライン 代表取締役社長 家本賢太郎氏はこれからのホスティングサービスのあり方について「今までのように単に高品質なウェブやメールのサービスを提供していくだけでは生き残れません。従来パッケージで売られているソフトなどをSAAS(Software as a Service)やASP(Application Service Provider)という形で提供するなど、様々なインターネットサービスを使うための総合的なプラットフォームを提供していくべきだと思います。(家本氏)」と語る。

 さらに「世の中には用途がニッチなためあまり流通していない優秀なパッケージソフトウェアが多数存在します。シンクライアントという考え方もありますし、このようなソフトをSAASとして世の中に放っていく役割をホスティング会社が担えないかと考えています。弊社ではこれをデベロッパーズプラットフォーム構想と呼んで推進しています。(岡田氏)」という意見も出た。

 90分もの長時間にわたるディスカッションでは、この他にもこのスペースではとても報告しきれないほど様々な建設的な意見が交わされた。

 さて、ホスティング業界に明るい未来はあるのだろうか?
《田口和裕》

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