「フラット化」、「Web2.0」や「あちら側」などのキーワードが多数のメディアをにぎわしているが、世の中すべての事象がウェブによって完結するとして、それでも残る疑問に「ウェブサイトを見るのはブラウザやRSSリーダのような機械(PC)なのか人間なのか」というものがある。 アフィリエイト広告やキーワード広告などの市場が拡大し、SEOが必須マーケティングスキルとなっているが、ビューやクリック優先のサイトづくり、“なんでもWeb2.0”(などの流行語)にひっかけるページづくりに、あえて一石を投じるような書籍が7月12日に発行される。 「ヤコブ・ニールセンのAlertbox −そのデザイン、間違ってます」(RBB PRESS刊)だ。著者のヤコブ・ニールセンはウェブユーザビリティの世界的権威であり、10年以上も自分のサイトで「Alertbox」という人気連載コラムを続けている。このコラムから主だったものをピックアップして書籍として編集したものだが、例えば、1998年10月4日付けの「過大評価されるパーソナライゼーション」では、パーソナライゼーションは、ナビゲーションしにくいサイトの裏返しであると切って捨てていながら、10年後なら「日刊あなた新聞」を提供するようなしくみが重要になるかもしれないと述べている。当時としての問題点や危険を指摘しつつ、(8年後だが)現在のRSSやブログによる個人サイトの台頭を予言するかのような鋭い洞察を見せてくれる。 あるいは、氏の(いまだに賛否両論が尽きない)「Flash有害説」をもって「Alertboxは古い」という意見も少なからず存在する。マーケティング、PRにおいて「認知」や「記憶」は重要である。そのためにトレンドや最新ツールやスキームを利用するのを安易に否定するのは愚かしい。だが、トレンドやツールは流動的ですぐに陳腐化する。その先で差別化をしっかりつけたいなら、ユーザビリティも無視してはいけないだろう。