海外ドラマ『GCHQ』で製作総指揮を務めた英トップクリエイター ピーター・コズミンスキーのインタビュー公開 | RBB TODAY
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海外ドラマ『GCHQ』で製作総指揮を務めた英トップクリエイター ピーター・コズミンスキーのインタビュー公開

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(C)Playground Television UK and Stonehenge Film s MMXVIII. All Rights Reserved.
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 スター・チャンネルが運営する「スターチャンネルEX」では、ドラマ『GCHQ:英国サイバー諜報局』(全6話)が独占配信中。このほど、同作を手掛け、BAFTA(英国アカデミー賞)を7度受賞した英国エンタメ界の重鎮、ピーター・コズミンスキー(監督・脚本・製作総指揮)のインタビューが公開された。

 英国諜報機関・GCHQを舞台に現代のサイバー戦争の脅威をリアルに描いた同ドラマ。スターチャンネルEX内の7月の視聴者数では、No.1を記録するなど人気を博している。

 主人公サーラを演じるのは新星ハナー・ハリーク=ブラウン。レイフ・ファインズやマシュー・マクファディンの映画デビュー作を手掛け新人発掘に定評のあるピーター・コズミンスキーが抜擢した若手女優だ。彼女は優秀なインターン、サーラ役を演じるにあたり2ヵ月間で2つのプログラミング言語を独学、サイモン・ペッグ、マーク・ライランスらと引けを取らない複雑な主人公を演じた。

 ほか、英国初の黒人首相役にエイドリアン・レスター、GCHQ長官役にアレックス・ジェニングス、そしてロシア人スパイなど主要な役どころにはフレッシュな俳優がキャスティングされている。以下、ピーター・コズミンスキーのインタビュー。

ーー『GCHQ:英国サイバー諜報局』はどのようなドラマなのでしょうか?

『GCHQ:英国サイバー諜報局』はフィクションですが、何年間も徹底調査した事実に基づいています。主人公はGCHQでインターンとなった大学生のサーラ。諜報活動は未経験のWebコーダー(※Webサイトをコーディングする職業)ですが、勤務初日に発生したサイバー攻撃で、誰もが見落としたマルウェア(※悪意のあるソフトウェア)の隠し部分を発見。一躍注目されます。このドラマは、彼女が様々な葛藤の中、マルウェアを解明してゆくストーリーです。

ーーこのプロジェクトが誕生した経緯はどのようなものでしょうか?

私たちは空戦、海戦、陸戦という考え方に慣れていますが、サイバー領域というまったく新しい、そして非常に活発な紛争領域が存在します。この“宣戦布告なき戦争”は、国家機関によって今まさに行われているにもかかわらず、誰もそのことを知りません。私たち劇作家の仕事は、このようなあまり知られていない、そして今後ますます私たちに深刻な影響を与える公共政策の分野に光を当てることです。

ーーどのようなリサーチをしましたか?

詳細はお話しできませんが、本作がしっかりとした事実に基づいていることを重要視し、この分野の調査に何年も費やしました。2024年前後に社会としてどのような課題に直面しそうなのか、どんな物語なのか、かなりリサーチしました。その結果、何よりも注意喚起の物語になったと思います。

これは一つの可能性のある未来であり、様々な意味で憂慮すべきものです。このような物語を語るときはいつも、人間の最高と最悪の例を見ることになります。人間がお互いにし得る最悪の行為の中でも、本当に恐ろしいものを目にすることになります。しかし本作では、若い主人公たちの大いなる優しさとヒロイズムも見ることができます。

また、『GCHQ:英国サイバー諜報局』は、私たちが直面する可能性のある未来に警鐘を鳴らす物語であると同時に、ラブストーリーでもあり、あらゆる困難に立ち向かう工夫と勇気の物語でもあります。

ーードラマの中心となる脅威は、どの程度現実的なのでしょうか?

このドラマで描かれている脅威は残念ながら、非常に現実的なものだと思います。私たちは徹底的に研究し、これが現実にはありえないファンタジーではないことを重要視していました。それどころか、あまりにも現実的なことなのです。サイバーセキュリティ界では今まさにドラマのような“ウォー・ゲーム”が起こっています。私が描いたことは、可能性のある結論を推定し、可能性のある動機を推測したに過ぎません。

ーーキャスティングはどのように行われたのでしょうか?

新人の俳優とベテランの俳優が一緒に仕事をするという、面白いキャストです。ロシアとイギリスを舞台にした物語なので、それぞれの地域で2人の若い主役を用意しました。イギリスでは、サーラとキャシーが登場します。サーラはイギリス人の大学生で、GCHQのインターン。キャシーは、アメリカのNSA(アメリカ国家安全保障局)で経験を積んだ分析官です。2人はGCHQの中で唯一の有色人種であることもあり、親しくなります。

ロシアでは、2人の若いキャラクターが登場します。ヴァディームは裕福な武器商人の息子で、父親に反発しています。マリーナは、シベリア生まれのシングルマザーです。父親は彼女が生まれる前に、北シベリアのガス掘削現場での事故で亡くなっていて、苦労しています。この育ってきた環境が違う2人が、思いがけず恋に落ちる。英国とロシアの若い4人のキャラクターには、比較的経験の浅い俳優をキャスティングしました。しかし、脇はベテランを揃えました。

サイモン・ペッグは、私が長年尊敬している俳優で、GCHQの作戦本部長であるダニーを演じています。英国首相を演じたエイドリアン・レスターも、長年一緒に仕事をしたいと思っていた俳優です。そして、過去2度一緒に仕事をした世界最高の俳優の一人、マーク・ライランスがGCHQのベテラン職員を演じてくれました。

ーー印象に残っているロケ地はどこですか?

通常、訪れた場所や、撮影で使わせてもらった建物をあげますよね。しかし、本作では、独自に作ったセットが最も印象的でした。なぜなら、GCHQの内部を既存の場所で再現することは非常に難しかったのです。GCHQは、「ドーナツ」と呼ばれる、3階建ての円形の建物で、約4,000人がそこで働いています。また、巨大な地下室があり、そこにはすべてのコンピュータ機器が置かれています。

このような特殊な建物のロケ地はなく、プロダクション・デザイナーのジリアン・デヴェネイ(『ライン・オブ・デューティー』)が素晴らしいセットを作ってくれたのですが、唯一作れなかったのが「ストリート」と呼ばれる、GCHQをぐるりと囲む地上階の大きな中央通路でした。

そこで、実際のGCHQのような曲線の廊下を見つけなければならず、不可能かと思っていましたら、幸運にもカーディフで見つけることができました。そこは大学でGCHQのような規模ではありませんが、非常によく似ているのです。もしかしたら同じ建築家が建てたのかもしれません。撮影を快諾してくれたので、学校の休みに合わせて撮影しました。

ーー『GCHQ:英国サイバー諜報局』について、視聴者を驚かせると思うことは何でしょうか?

「なんだ、サイバー戦争についてのドラマか」と思われた方、つまり、コンピュータの前に座ってタイピングする人がたくさん出てきて、理解できないコードのショットが画面上にたくさんスクロールし、ちょっとマニアックな人たちが意味不明な言語を話していると思われた方は、驚かれると思います。本作を制作する上で、最大の課題は、いかにして視聴者を退屈させないかということでした。キーボードの前に座り、理解できないコンピューターコードを見つめるシーンが延々と続くようなシリーズにはしたくありませんでした。そこでサーラの心の中に存在する“コードワールド”という別世界を作り、コンピュータの中でサーラがやっていることを、視聴者になじみのある非常にリアルな方法で表現しています。

ーー“コードワールド”のシナリオはどのように作られたのですか?

リサーチ中に発見した最も興味深いことのひとつは、サイバーワールドではニューロダイバースの人々が多く活躍していることでした。とてもキラキラしていて、明るくて、面白くて、恐ろしく知的で、非常に強い個性と、何が正しくて何が間違っているかという感覚を持った人たちです。

私のような凡人とは全く異なる考え方をする彼ら彼女らの頭の中に入ってみることが最も魅力的な挑戦で、それを“コードワールド” として描く方法を考えました。天才的なWEBコーダーは、コンピューターの中で何をしているのか、どのように想像するのか。このドラマでは、彼らはコンピューターを、無限に続く0(ゼロ)や1(ワン)、あるいは半導体の中を旅するようなものだとは思っていないようです。サーラは、それを一種の別世界と捉えています。彼女がコードの中で行っている行動は、現実の世界の出来事や行動で表現されています。

例えば、何行にもわたるコンピューターコードをスクロールする必要がある場合、彼女の頭の中では、狭い中庭に立って、テニスボールを壁に何度も当てて跳ね返しているという感じです。もうひとつ強く印象に残ったのは、この人たちが民間企業に就職すれば、GCHQで得ている収入の2倍、3倍を稼ぐことができるということです。彼らはお金のためにやっているのではありません。彼らは「ミッション」と呼ばれるもののためにやっているのです。「ミッション」とは、国民を守るという意味での「ミッション」です。なぜなら、間違いなく、私たちはサイバー領域で攻撃を受けているからです。商業が攻撃され、知的財産が攻撃され、生活様式が攻撃され、そして最も恐ろしいのは民主主義が攻撃されていることです。

これらの人々は、民間のセキュリティ企業で働けばもっと高い賃金を得られるのに、それを捨てて、GCHQでかなり厳しい時間働いて、我々を守り、我々の生活様式を守っています。私は、これはむしろ名誉なことだと思います。彼らの多くは本当に若く、理想主義的です。今回サイバーセキュリティの世界を調べてとても驚かされました。彼らは興味深いグループであり、本作での描写でも彼らを称えること
ができるよう、最善を尽くしたつもりです。

ーーリサーチをして他に何か驚いたこと、気になったことはありますか?

実は、このテーマを深く研究すればするほど、恐ろしくなってきたんです。私は人々を憂鬱にさせたくないし、『GCHQ:英国サイバー諜報局』は希望に満ちている作品になっていますが、私たちが直面しているサイバー世界のリアルな脅威の深さと即時性に驚きました。もちろん、気候変動に対する指導者の対応と同じように、私たちは砂に頭を埋めてそれがなくなることを望むこともできますが、そうはいきません。

リサーチを振り返ってみて、驚きと恐れを抱いたのは、脅威の大きさ、つまりサイバー領域ですでに戦争が起きていること、つまり、タイトルの通り「宣戦布告なき戦争(=原題「The Undeclared War」)」が起きていることでした。そして、視聴者の方たちを、私が調査中に経験したのと同じような旅に連れて行きたいと思いました。発見と目覚めの旅、つまり、私たちが直面している脅威に対して必ずしも完全に快い目覚めではありませんが、少なくともこのレベルでは、困難にもかかわらず、比較的、情けないほど小さな資源で、私たちを守るために最善を尽くしている人々がいるという安心感もあります。そしてそれは、私たちが誇りに思えることだと思います。

ーー視聴者にこの物語から何を感じ取ってほしいですか?

恐怖を与えたいわけではありませんし、それが目的ではありません。サイバー領域は、さまざまな理由から、敵対する多くの国にとって非常に魅力的です。サイバー戦争は比較的安価です。軍隊を世界の他の地域に派遣する必要がない。戦闘爆撃機や空母、原子力潜水艦を作る必要もない。サイバー領域では、個人の創意工夫によって、比較的安価に、大きな損害を与えることができます。

私は、私たちが国として、また文明として直面している危険、非常に現実的な危険について、人々に警告を発したいと思います。また、情報戦という分野にも光を当てたいと思います。ブレグジット(※イギリスのEU離脱)の国民投票の際にも、アメリカの大統領選の際にも、その一端を見ることができました。ソーシャルメディアは、世論に影響を与えるために乗っ取られ、最善の利益を考えない他者が仕組んだ目的へと私たちを誘導することができるのです。
《KT》
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