【仏教とIT】第31回 仏像モノマネ芸人と行く、日本文化への旅 | RBB TODAY

【仏教とIT】第31回 仏像モノマネ芸人と行く、日本文化への旅

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【仏教とIT】第31回 仏像モノマネ芸人と行く、日本文化への旅
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仏像になりたい!



お寺にお参りすると必ず出会う仏像。
本堂に座って手を合わせ、心を込めてただ拝む――というのは、ひと昔前のお作法かもしれない。最近だとスマホで写真を撮ってSNSのタイムラインにあげたり、そっくりに作られたフィギュアを購入して自宅に安置したりと、仏像との付き合い方も多様になってきた。若い女性にも仏像を愛する「仏像女子」は増えているというが、そんななかでも仏像になり切るのはこの人ぐらいである。



仏像に一番近い芸人・みほとけ(25)。本名・野口実穂の「実穂」と「ほとけ」をミックスして付けられた芸名である。芸人として笑いを届ける一方でストイックに取り組むのが、仏像のモノマネ。これまでに百体以上の仏像になり切ってきた。表情、姿勢、持ち物など、仏像の個性を細部まで表現しようとするとき、自らの小ささに気づいていくという。もはやひとつの「仏道修行」である。

みほとけさんのモノマネの面白いのは、身近なアイテムを使って仏像に変身するテクニック。以前、ワークショップに立ち会ったときに、「仏像の着物の質感に近いのがトイレットペーパーなんです」と教えてくれたことがある。トイレの備品を仏さまの着物にすることに多少の複雑な思いを抱きつつも、とらわれない観察力には感服した。


【「大般若経」転読に魅せられて】



みほとけさんがお寺にどっぷり漬かるようになったのは、慶應義塾大学在学中のこと。2016年にミス鎌倉に選ばれたみほとけさんは、2017年2月に建長寺の節分会に参加。その法要で、「大般若経」全600巻をお坊さんたちが一斉に手に取り、パラパラと転読する迫力の光景を目の当たりにした。衝撃が走った。法要中にもかかわらず「カッコいい!」と驚喜した。それまでお寺は法事や墓参りなど先祖供養の場と決め込んでいたが、先入観が崩れ去ったとき、お寺文化が持つはるかな奥行きに気づいた。威容を誇るお堂も、手入れが整った庭園も、張り巡らされた塀も、お寺はどこをとっても日本文化の粋が詰まっていると見えるようになった。

ミス鎌倉時代のみほとけさん


当時、アイドルグループWenDeeに所属していたみほとけさんは、ほどなくしてアイドル活動中にも「仏像好き」を公言。ライブで仏像モノマネをやってみたり、プライベートで作務衣を着こなしてみたりと、どんどんお寺文化にはまっていった。最初は、「お寺文化を採り入れることでアイドル活動に自分らしさを持たせたい」という下心もあったが、次第に「お寺や仏像を純粋に紹介したい自分がいることに気づいた」という。


作務衣を着こなそう!



WenDeeが2018年に解散したことにともなってアイドル活動は終わり、2019年からは芸人に転身したが、お寺文化を伝えるインフルエンサーとしての活動は変わらず続けている。

作務衣を着るのも当たり前の習慣になった。着心地の良さもさることながら、着ることで日本文化のなかに入れる気がして、テンションが上がるという。

「作務衣でお寺にお参りすると、やっぱりしっくりくるんです。仏さまのいらっしゃる空間に素直に入っていけます。お坊さんと同じように修行している気分になって、背筋も伸びます。もうちょっとスタイリッシュだったら……」

確かに、作務衣は、振袖や留袖のような和装と違って、紐を二か所結ぶだけで簡単に着れる。
お坊さんたちのなかには、ジャージ感覚で作務衣を気軽に着ている人は多いはずだ。私も日常生活のほとんどを作務衣で過ごすし、買い物や食事に出かけるときも作務衣を着ている。だが、若い女性が街中で着れるかというとかなり疑問である。

いまどき、呉服店や法衣店を訪ねないと和装が変えない時代でもない。ネット通販でお洒落な作務衣が手に入ればお寺文化はきっと身近になるはずである。もどかしさが募ったみほとけさんは、お洒落に着こなしやすいようにアレンジしたオリジナルの「みほとけ作務衣」を開発。上衣は丈を短く、かつ、袖の太さを抑えるなどダボっと見えないように工夫されていて、スカートなどにも合わせて着こなしやすい。値段も気軽に購入してもらえるように、1万円以内におさめた。「この作務衣を着て、お寺文化にどんどんのめり込んでほしい」と願う。

みほとけ作務衣。9,900円(税込)。コーディネート次第で、普段着にもお寺めぐりにも



日本のアイデンティティを訪ねて



芸人としてメディアに露出を重ねながら、空いてる時間にはお寺に足しげく通うみほとけさん。二つの活動は両立するのかと聞いたら、「私の芸に笑ってもらって、私に興味をもってもらえたら、その分だけお寺に関心を持ってもらえる。そのことが芸人として生きているモチベーションです」とさくっと答えが返ってきた。そして、「『自分の才能を見て』という視点で生きると他者を排除することになりますが、『面白いものを見て』という視点ならただ共感の輪が広がる幸せな世界なんです」と教えてくれた。仏教が2,500年の歴史を通じて、「自我」のぶつかりあいを離れて、「無我」の幸せな世界を求めてきたことと、まったく重なるカッコよく力強い言葉だった。

「どう考えても、日本文化を担ってきたのは仏教であり、お寺です。お寺こそ日本人のアイデンティティだと思っています。お寺が震災などの天災地変で失われたり、少子高齢化が進んで田舎のお寺が立ち行かなくなったりするのは、ひとりの日本人としてただ悲しいです。心ある人たちでなんとか守っていけたら、そして、私がそのサークルのリーダー的な存在を担えるなら、これほどやりがいのあることはありません」

Twitterでの仏像モノマネ、オリジナル作務衣のネット通販以外にも、YouTubeで毎週お寺情報を配信するなど、みほとけさんはITツールを駆使してお寺文化を日々斬新な切り口で伝えてくれている。お寺の入り口に、みほとけさんのような人が立っていてくれることを、お坊さんとしてすごく心強く思う。おそらくは世間一般の人々にとっても同じだろう。

皆さんも、みほとけさんと行くお寺文化への旅、始めてみませんか?なにげなく見過ごしていた日本の風景が、あなたの前に美しくそして楽しく現れてくるはずです。



池口 龍法氏
池口 龍法氏

【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。

■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
■Twitter https://twitter.com/senrenja
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