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【仏教とIT】第28回キャラバン勧進でコロナ大仏造立!!

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【仏教とIT】第28回キャラバン勧進でコロナ大仏造立!!
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人間の無力さ



ようやく緊急事態宣言が解除されたが、新型コロナウィルスは、人間の無力さというものを私たちに嫌というほどつきつけた。平時なら妖怪など迷信の産物に過ぎないのに、疫病退散に利益があるという妖怪アマビエの力がにわかに注目を浴び、多くの人がこの妖怪にすがろうとした。アマビエを描いた護符を新たに制作し、護符として授与しているお寺もある。

京都・金剛寺で授与されるアマビエの護符(画:絵師冬奇)


大仏に救いを求めたいという願いも高まった。ウェブアプリ「みんなで大仏建立ボタン」は、奈良・東大寺の大仏が延べ260万人によって造立されたことにちなんで、ウェブ上のボタンを260万タップすることで、バーチャル世界に大仏を建立していくプロジェクトである。ボタンは26種あり、「大仏を設計する」というがっつり造立に関わるものもあれば、「一握りの土で応援する」「とりあえず眺める」というささやかな応援もある。最初の1体は2018年9月の“着工”からおよそ1年2ヵ月かけて260万タップを集めて建立されたが。新型コロナウィルスが流行して以降にアクセスが急増し、3体目はわずか3日で建立された。


そして、コロナ大仏造立へ



とはいえ、「みんなで大仏建立ボタン」はユーモラスで楽しいが、あくまでバーチャル世界の試みである。コロナ禍の自粛生活の心の支えにはなるものの、“大仏造立”としてはなにか物足りない感が残るのも否めない。そんな風にもどかしさを抱いていたら、5月24日から「コロナ大仏造立プロジェクト」という挑戦的なクラファン(クラウドファンディング)がスタートした。発願したのは、曹洞宗僧侶でアーティストの風間天心さん(40)である。

風間天心さん(40)


このプロジェクトは「みんなの心を前向きにするためのシンボル」として大仏を造ろうというものである。周囲に相談したら、「いまさら大仏で救われるのか」「大仏だと仏教を信仰する人にしか届かない」といぶかしむ声もあり、風間さん自身不安だった。だが、クラファンが始まると反響は想像以上に大きかった。「『いまこそ大仏造立してほしい』という願いをひしひしと感じています。みんなが我慢を強いられ、滅入っている状況なので、気分が晴れる話題を無意識に求めているんでしょうね」と風間さん。「修学旅行で見学に行ったり、歴史の教科書で学んだりしているから、仏教徒であるかにかかわらず、大仏は日本人の意識の中に入り込んでいる」ということも、順調な滑り出しを見せている理由だと分析する。

コロナ大仏造立のクラファンは2回に分けて実施予定だ。

(1)第1弾「勧進キャラバン」への支援募集
(2)第2弾「コロナ大仏造立」への支援募集

このうち現在展開されているのは、第1弾である。クラファンで集まった資金をもとに、車で牽引できる大きさの仏像をつくり、その仏像を率いて日本全国を巡回する「勧進キャラバン」を行う。参拝者には、コロナ禍の残骸(中止になったイベントのチラシや、マスクなど)を仏像に貼り付けてもらって厄災を浄化する。そして、キャラバン中にいただいた意見などを参考に、大仏造立の場所や形態などを決めていく。プロジェクトの詳細や支援の方法はこちらに詳しく掲載されている。共感される方はぜひ支援してほしいと思う。

勧進キャラバンのイメージ



僧侶とアーティストの垣根を越えて



ところで、風間さんはなぜ、僧侶かつアーティストなのか。僧侶であることとアーティストであることは異質にも思われるが、矛盾しないのだろうか。風間さんは北海道のお寺に生まれたが、次男であり、跡継ぎではなかった。僧侶の道は視界のなかになかったので、武蔵野美術大学に入学した。しかし、アート表現を追求すればするほど、その表現を成り立たせている自分自身の内面、とりわけ信仰に目を向けざるをえなかった。風間さんの関心は次第に伝統仏教へと向かい、大学院を卒業する頃には永平寺で修行して僧侶になることを必然だと思うようになっていた。

「たとえば、大仏はなぜ信仰を集めるのか。それはやはり“巨大さ”ということと切り離せません。人間は、自分よりもはるかに巨大なものに対峙したとき、畏怖を感じたり、心が高揚したりします。つまり、どのような芸術表現をするかというのは、私たちの宗教感情と密接に結びついているのです。『作品に魂を込める』という言い方をしたりするのも、宗教とアートが本来不可分であることを示しています」

風間さんの作品「stand.」。一見自立している塔だが、ヘリウムガスの浮力で上から引き上げられている。私たちは何に依って立つのかを問いかける


しかし、僧侶かつアーティストとして、自由に世界を移動しながら生きている風間さんに対して、日本社会の視線は冷ややかだという。
「お坊さんといえばお寺の住職になってようやく一人前。だから、お寺をもたない私なんて仮に大仏造立が達成できても半人前です(笑) でも、仏教のルーツをたどればお釈迦さまは托鉢して生活してましたし、日本でも奈良時代の行基をはじめ、遊行する僧侶はたくさんいました。現代はとくに変化のスピードの速い時代ですから、“お坊さんイコール住職”みたいなステレオタイプはさっさと捨てたほうがいい。むしろ定住にこだわらない“キャラバン僧侶”こそ、最先端だと思うんですよねぇ(笑)」

パリからサンティアゴへ2ヵ月かけて巡礼する風間さん。道中は托鉢のみで暮らした



コロナ後の時代へ



風間さんのアート作品は、コロナ大仏をはじめ、手掛けているプロジェクトは攻めた表現ばかりなのに、話していると仏教の原点へと旅しているような不思議な感覚を味わう。
「祖父はどんな寒い雪の日も、徒歩で檀家さんの家にお参りに行ってました。今のお坊さんは車で移動します。当たり前ですよね、寒いですから(笑) でも、誰もが車に乗るようになったために、お坊さんの姿が見えない時代になっています。私が法衣のままコンビに行ったら、子供が『ママ、この人なに?』って言い出す始末です。アートも信仰も、楽して伝えようとしても普及しませんよね」
「仏さまを拝みたくても足腰が不自由でそれがかなわない人もいます。だから、キャラバンに仏像載せて全国遊行して結縁し、大仏造立を進めていきたいです」
「システム上どうしても無理だったのであきらめましたが、クラファンの支援受け付けはゼロ円からでもいいと思っていました。お金持ちしか関われない大仏造立プロジェクトにしたくないです」
クラファンで資金を集めて、キャラバン勧進。きわめて現代的な手法に目を奪われがちだが、そこには貴賤を問わずあらゆる人々に救いをもたらしてきた仏教の物語が、確かに受け継がれている。キャラバン勧進によって、仏教の物語に多くの人が出会い、仏教がコロナ後の時代を生きていく力となっていくことを願う。


池口 龍法氏
池口 龍法氏

【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。

■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
■Twitter https://twitter.com/senrenja
《池口 龍法》
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