【仏教とIT】第23回 “お寺×IT”でお寺本来の姿を | RBB TODAY

【仏教とIT】第23回 “お寺×IT”でお寺本来の姿を

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【仏教とIT】第23回 “お寺×IT”でお寺本来の姿を
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お寺はビジネスの空白地帯



「お寺がいま何に困っているのか。一般企業はまるで知りません。だからお寺業界をあげて抱えている課題を伝えていくべきなんです」

“寺院デジタル化エバンジェリスト”を名乗る小路竜嗣さん(33)は、強い意気込みをもってそう語る。



寺院とIT業界を架橋するエバンジェリストの意義を説く小路さん



「たとえば、会計ソフト。市販のソフトは基本的に一般企業向けに作られています。宗教法人の会計処理のためのソフト開発というのは、ビジネスの空白地帯です。ただ、利用できそうなソフトもあります。私のほうで魅力的だと感じているのは、中小企業向けのクラウド型会計ソフト『会計freee』です。やはり宗教法人には正式対応していませんが、開発元のfreee株式会社に詳しく話を聞くと、非対応なのは決算書のフォーマットのみでした。それも、エクセルなどを用いれば作成できます。もともとが中小企業や個人事業主に活用されてきたソフトなので、主に家族経営されている街中のお寺でも気軽に導入し、活用していける仕組みになっています。残念ながら、このような情報はまるで表に出てきません。だから、お寺に対しては無数にあるソリューションのうち役立てられるものを伝え、そして、一般企業には“お寺×IT”は参入の余地があるブルーオーシャンだと知ってもらうために、記事を書いたりセミナーを実施したりしています」
クラウド型会計ソフト「会計freee」はお寺でも使えるのか聞いてみた。


ITでお寺の困りごと解決



 一般家庭に生まれた小路さんは、子供の頃からロボットが好きだった。機械好きは大人になっても変わらず、大学卒業後は株式会社リコーに就職し、エンジニアとして勤務した。

株式会社リコー在職時代


 エンジニア時代に身についたのは、カスタマーサティスファクション(顧客満足)を考え、徹底的に課題解決に取り組む会社の姿勢だという。26歳のときに、長野県の浄土宗善立寺の一人娘と結婚して仏門に入って以降も、伝統をただ受け継ぐだけでなく、お寺が抱える課題を解決することに自然と目が向いた。ただし、ご年配のお寺の住職は、往々にしてITリテラシーが高くない。紙と筆で記録していくようなアナログな姿こそお寺らしいとプライドを持っていたりもする。したがって、若い世代が良かれと思って提案をしても、「私が住職やっているあいだはいまのままでいい」とかえってアレルギー反応を示され、改革が進まないのがよくある話。善立寺でも小路さんの立場はあくまで副住職であり、住職をつとめる義父はワードや一太郎が使えるぐらいだった。しかし、小路さんは、
「新しいソリューションを採り入れるのは、どうしても多少のストレスをともないます。それは、お寺だろうと一般企業だろうと変わりません。そこを乗り越えてこそソリューションと言えるのです」と臆することなく、住職が気づいていない困りごとを次々に見つけて解決していった。

 手始めは、境内墓地のマップだ。善立寺には紙に書かれたマップはあったが、それぞれの区画に番号がふられておらず、お墓にたどり着くまでが大変だった。そこで、エクセル方眼紙で地図を作り、「A-1」などの区画名を割り当て、そして檀家の名簿とも紐づけた。これによって墓地の検索が容易になった。

 檀家の住所もグーグルのマイマップ上にすべて登録した。そうすると、お盆のお参りのときに、どのルートで周ると効率的なのかがクリアにわかり、移動時間が30パーセントも短縮できた。お参りの進捗は、住職とリアルタイムで共有するようにしているという。

 防犯カメラも「Safie」というクラウド型の商品を使えば、広い境内にLANを張り巡らさなくても、wifi環境だけで手軽に導入できることを提案。お参りの方が来られるとスマホに通知が届くように設定してみたところ、家族からも喜ばれた。この防犯カメラは、法要の折に本堂に設置しておき、境内での焼香の様子をリアルタイムでチェックするなどの活用もしている。

https://www.rbbtoday.com/article/img/2019/12/26/175808/657219.html
スキャナを用いては寺のペーパーレス化にも取り組む。小路さん自身がPFUのScansnapシリーズの公式アンバサダーだ



布教に専念できるお寺づくり



 小路さんがITツールをお寺に取り入れていく本当の目的は、運営や事務を効率化することで、檀家に向き合って布教する時間を確保するためだと語る。

「お盆のおまいりの移動時間が減ると、その分だけ檀家さんと話す時間を増やせます。また、過疎地のお寺が無住になっていくのは避けられない流れですが、防犯カメラがあってリモートで映像が確認できたら、わざわざ足を運ばなくても、雪かきに行くべきかどうかなどの判断ができます。お寺の内部に入ってみて知ったのですが、会計処理、檀家さんの名簿管理、寺報の発行と送付など、事務作業はかなり多岐にわたります。でも、事務作業に煩わされるあまり、お寺本来の活動が疎かになっては、本末転倒です。肝心なのはITによってお寺が布教に専念できるシステムにしていくことですね」

Wordpress導入の講習会。ドメイン選びからサイト運用のコツなども伝え、お寺のホームページ開設を促した


 小路さんは、同じような問題で悩んでいるお坊さんは多いだろうと考え、今年6月には、お寺のIT活用について意見を交わす「テラテク!」を実施した。昨月には、さくらインターネット株式会社の協力のもとで、寺社向けWordPressインストール&サイト構築講習会も実施した。また、ツイッター上でも「#テラテク」がついたツイートは、漏れなく小路さんがリプライを送って、“お寺×IT”の輪を広げている。

「少しずつ“お寺×IT”の関心を高めるとともに、少しずつ伝えられるソリューションの幅を広げていきます。地道な作業です」と小路さん。来年以降も焦らずお寺のIT化を訴えていく覚悟だ。ITがもたらすさまざまなソリューションによって、お寺が本来のお寺らしくなっていく。小路さんの努力とともにそんな時代がやってくることを願う。

本年は「WORK ROBOT CONTEST 2019」の審査員をつとめるなど、活躍の幅を広げ続けている


池口 龍法氏
池口 龍法氏

【著者】池口 龍法
1980年兵庫県生まれ。兵庫教区伊丹組西明寺に生まれ育ち、京都大学、同大学院ではインドおよびチベットの仏教学を研究。大学院中退後、2005年4月より知恩院に奉職し、現在は編集主幹をつとめる。2009年8月に超宗派の若手僧侶を中心に「フリースタイルな僧侶たち」を発足させて代表に就任し、フリーマガジンの発行など仏教と出合う縁の創出に取り組む(~2015年3月)。2014年6月より京都教区大宮組龍岸寺住職。著書に『お寺に行こう! 坊主が選んだ「寺」の処方箋』(講談社)、寄稿には京都新聞への連載(全50回)、キリスト新聞への連載(2017年7月~)など。

■龍岸寺ホームページ http://ryuganji.jp
■Twitter https://twitter.com/senrenja
《池口 龍法》

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