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外食産業の生産性向上~テクノロジーを付加価値へとつなげるために

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外食産業において喫緊の課題である「生産性向上」。その答えのひとつであるテクノロジー活用について、ホットペッパーグルメ外食総研によりリサーチ結果が報告された「外食総研セミナー」
  • 外食産業において喫緊の課題である「生産性向上」。その答えのひとつであるテクノロジー活用について、ホットペッパーグルメ外食総研によりリサーチ結果が報告された「外食総研セミナー」
  • これからの外食産業には、テクノロジーの活用だけでなく、価値を量産するための仕組みを作り、そこにマーケティングやクリエイティブ、接客などの“人の力”を加えることが必要
  • ホットペッパーグルメ外食総研 上席研究員 稲垣昌宏氏
  • ホットペッパーグルメ外食総研 エヴァンジェリスト 竹田クニ氏
  • (左より)(株)すかいらーく マーケティング本部 デジタルマーケティンググループ ディレクター 小林克明氏、(株)イタリアンイノベーションクッチーナ 代表取締役社長 四家公明氏、(株)ダイニングファクトリー 九州男児 事業部長 砂岡祐也氏
【記事のポイント】
▼外食実施率・頻度・単価ともに減少傾向、「普段飲み」に中食を利用する消費者が増えた
▼「外食はレジャー」と考える傾向があり、コストと付加価値の二つが必要
▼「生産性イコール効率化」という旧来的な発想からの転換が必要
▼テクノロジーによる効率化+人の力による新しい付加価値の創造


 国内の消費低迷とともに伸び悩んでいるのが外食産業だ。近年では消費者の食への安全の意識が高まっていることに加え、“ブラック企業”と揶揄される労働環境の厳しさ、それに伴う人手不足の深刻化が、業界の成長に暗い影を落としている。

 このような状況の中で外食産業に求められている課題のひとつが生産性の向上だ。そのためには効率化や合理化が必要であり、それらを優先して取り込んできた企業は少なくないだろう。しかし効率化・合理化だけではもはや立ち行かなくなっているのも事実だ。

 それでは外食産業における生産性向上のためには何をすればよいのか? その答えのひとつである「テクノロジー活用」について、ホットペッパーグルメ外食総研主催の「外食総研セミナー」が2017年9月6日に開催された。外食市場の動向、そして外食産業における生産性向上について、セミナーの要約をお届けする。

■外食市場の最新動向

 まず現在の外食市場の動向について、ホットペッパーグルメ外食総研上席研究員の稲垣昌宏氏が解説した。

 ホットペッパーグルメ外食総研が毎月実施している調査によると、2016年度の外食市場(首都圏・関西圏・東海圏の3圏域計における夕食)は前年度に比べマイナス3.6%となっている。基準となる人口が減少しているということもあるが、外食実施率・頻度・単価ともに減少傾向にあることが分かる結果だ。

 業態別に見てみると飲酒主体の業態が特にマイナス幅が大きい。これにはいわゆる「普段飲み」に中食を利用する消費者が増えたことで、外食での飲酒が減っていることに影響があるようだ。

 次に首都圏で外食利用の多い街ランキングを見てみると自由が丘と新横浜、藤沢・辻堂が1~3位を占めており、都心部より縁辺部での外食が伸びている。これは会社関係や友人との外食が減り、家族や一人で外食をする消費者の増加を示している。

 また外食が減った要因として、自炊する消費者が増加したことが挙げられる。自炊の理由としては「経済的理由」が圧倒的に多く、「味」、「家族・健康のため」が続く。特に最近は働き方改革やプレミアムフライデーの影響もあり、外食よりも家で家族と食事をすることを望む人が増えているようだ。

 これらのことから消費者にとって「外食はレジャー」と考える傾向が強くなっており、今後外食産業はコストパフォーマンスと付加価値の二つの方向から消費者にアプローチすることが必要だと言えるだろう。

■外食産業における生産性向上とは

 続いてホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏とゲストによるトークセッション「外食産業の生産性向上~テクノロジーを活用していかに付加価値創出につなげるか~」が行われた。

 まず竹田氏が外食産業の生産性について解説。生産性とは分母に効率化・合理化、分子に付加価値向上や新市場開拓を当てはめた公式で表すことができるという。

 分母である効率化・合理化には厨房機器の「機械化・ロボット化」、共同配送や共同仕入れセントラルキッチン導入による「共同化・集中化」、バックヤード業務効率改善やセルフオーダー端末の導入などの「ICT活用」、主婦・中高齢者・外国人の雇用やEラーニング活用による「人材マネジメント」の4つが挙げられた。

 一方の分子である付加価値向上には「メニュー(調理・提供方法)」「食材の質」「ストーリー」「空間の魅力」「おもてなし」が挙げられ、「バブル崩壊後のいわゆる“失われた20年”の間に各企業が効率化を重点的に進めた結果、クオリティの高いものが安価に食べられるようになったが付加価値がなくなってしまった。これは「生産性イコール効率化」という業界に根付いた慣習によるもの」と竹田氏は話す。

 そこで「テクノロジーの活用により効率を高めるだけでなく、価値創造の取り組みや価値を量産するための仕組みを作り、そこにマーケティングやクリエイティブ、接客などの“人の力”を加えることが必要」と竹田氏は強調した。



■生産性向上におけるテクノロジーの活用事例

 ここで3社のゲストによる生産性向上におけるテクノロジーの活用事例が紹介された。それぞれが独自の方法で生産性の向上につなげた成功例である。顧客データの活用、調理へのテクノロジー導入、ICT利用など、どの施策も外食ビジネスにおいて参照すべきものとして一聴の価値があるものだ。

 まず株式会社すかいらーくマーケティング本部デジタルマーケティンググループディレクターの小林克明氏から話が始まった。同社はいわゆるV字回復で注目を集めたことは耳目に新しい。

「消費者の可処分時間の使い方が変わり、食事に使う時間が減っています。そこで消費者を理解して何を打ち出すか、データを使って検討する必要があります。例えば配布したクーポンをどういう人がどんな使い方をしているか、あるいはさまざまなフェアを仕掛けて想定ターゲットと購買の結果などをデータ化し活用しています。今後は消費者が外食に何を求めているのかを知ることが必要です。外食はおいしいものを食べるだけでなく、楽しい時間を過ごすといった部分に価値を感じるなど消費者のニーズが多様化してきているので、外食にしかできないことを考えていく必要があります」

 続いては、調理にテクノロジーを活用している株式会社イタリアンイノベーションクッチーナ代表取締役社長の四家公明氏だ。同社は「日本一おいしいミートソース」を打ち出し、いまメディアで引っ張りだこの存在である。

「確実に売れるキラーコンテンツの質と、店舗のオペレーション力を高めることができれば生産性を上げることができます。例えば外注で冷凍のミートソースを作ることで、シェフごとに発生する味のブレをなくすことができれば、労働時間を減らしつつ売上や給与をアップすることも可能です。もちろん無化調・無添加物などにこだわり安心・安全な食を提供することで付加価値向上にもつながります」

 最後にコメントしたのは、株式会社ダイニングファクトリー九州男児事業部長の砂岡祐也氏。同社はタブレット端末などICTの積極利用で21世紀型のマネジメントで業界の熱い注目を集めている。

「消費者への付加価値を上げることを目的に“おすすめブック”を作っています。これはICTを活用してお客様のオーダーした商品をデータとして蓄積し、お客様のオーダーに合わせてスタッフが次のおすすめ商品を提案するというものです。ICTだけでなく、人(スタッフ)の力を使うことでお客様・スタッフともに満足度を上げることができます」と語った。

 ゲストからのコメントを聞いた後、竹田氏は「テクノロジーによる生産性イコール効率化・合理化という議論に終止符を打ち、次の時代の生産性のあり方について考える必要がある」と結んだ。

 外食産業を取り巻く環境や、消費者が外食に求めるニーズは常に変化し続けており、従来の生産性(効率化・合理化)だけを高めるという考え方では時代の流れについていくことは厳しい。そのことを踏まえた上でテクノロジー導入による効率化、さらに人の力による新しい付加価値の創造こそが外食産業における生産性向上のためのポイントだと言えるのではないだろうか。
《川口裕樹/HANJO HANJO編集部》
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