“派手好き”インバウンド、演出の工夫を探る! | RBB TODAY

“派手好き”インバウンド、演出の工夫を探る!

 インバウンドの増加に伴い、その集客につながるような取り組みが観光向けの施設で増えている。中には、いわゆる外国人が考える“ザ・日本”を前面に打ち出した、写真映えのする派手な演出も少なくない。

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ふすまを開けると赤富士が目の前に。まさに驚きと感動の演出だ
  • ふすまを開けると赤富士が目の前に。まさに驚きと感動の演出だ
  • 伏見稲荷を模したゲートでは、ほぼ100%の外国人ゲストが写真撮影するという
  • 館内のフォトパネルの中でも、奈良の大仏前での写真撮影が圧倒的な人気
  • 大な赤ちょうちんと、歌舞伎画が描かれた凧を配したレセプション
  • 「客室内ではゆったりリラックスしてほしい」と控えめな配色に
  • 「派手な演出は、実は日本の方、特にお子様に好評」と話す女将の藤澤しずか氏
【記事のポイント】
▼旅行口コミサイトにある“外国人が見たい日本”をヒントにする
▼初訪日の観光客向けには、一目で分かる“日本”を
▼劇場的、サプライズのある瞬間を常に用意する


■わかりやすさ×外国人が見たい日本=派手な演出

 インバウンドの増加に伴い、その集客につながるような取り組みが観光向けの施設で増えている。中には、いわゆる外国人が考える“ザ・日本”を前面に打ち出した、写真映えのする派手な演出も少なくない。日本人からすればやりすぎでは?とも思えるが、海外観光客の要求に応えることが集客につながることは確かだ。問題はどこまでがOKでどこからがNGなのか? そのさじ加減の参考になりそうなのが、“日本の魅力を一度に味わえるエンタメ旅館”をコンセプトに、2016年に誕生した「The Ryokan Tokyo YUGAWARA」だ。

 この旅館の外観や内装には、外国人が日本に求める要素が凝縮されている。京都の伏見稲荷を模したゲートに枯山水を配したエントランス。そこを抜けて館内に入れば、浅草の雷門を思わせる巨大なちょうちんと、歌舞伎画が描かれた凧が視界に飛び込んでくる。廊下の両脇には京都の五重塔や奈良の大仏など、日本の観光スポットを網羅したフォトパネルを配置した。

 女将の藤澤しずかさんによると、インパクトのあるシンボリックなデザインと配色に、訪れたゲストは皆「Wow!」の歓声を上げるそうだ。客室では遠景の富士山が浮世絵で描かれたふすまを開けた先に、今度は赤富士を描いたふすまを配置。大浴場の壁にも一面に富士山が描くなど、サプライズのある劇場的な演出をすることも欠かさない。

「インバウンドに特化した宿を作るにあたり大切にしたのが、分かりやすさです。外国人旅行者にとっては、これが一生に一度の日本滞在かもしれない。“日本はこんな国”ということを伝えるために、“彼らが見たがっている日本”を落とし込みました」

 The Ryokan Tokyo YUGAWARAの立ち上げ時に参考となったのが、世界最大級の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」における訪日外国人のレビューだ。一目で日本とわかる、シンボリックで写真映えするものがウケるのではないか? そう考えた時に、取り入れるべきと要素となったのが伏見稲荷であり、浅草の雷門であり、富士山だったという。

■SNS発信を意識して“思わず写真に収めたくなる演出”を

 日本人からすると大げさで派手に映るこれらの演出は、“分かりやすさ”と“外国人が見たがっている日本”を突き詰めた結果だ。赤と金が多用された色遣いは、決して中国の観光客を意識したわけではなく、「日本を表す色のなかで、一番美しく写真映えすると考えて多く使っています」とのこと。レストランには金屏風を配置しているが、ここで写真撮影を行う宿泊客は多い。

 このように、写真映えすることを常に意識しているのは、外国人観光客は日本人以上にネットでの発信を好むからだ。

「今は個人による情報発信がパワーを持つ時代。それぞれのゲストがSNSや口コミサイトに投稿する写真には、大きな宣伝効果があります。実際にFBやトリップアドバイザーを見て予約されるゲストは多いです」


 外国人向けの予約には自社の英語版サイトに加え、海外の旅行サイトを利用している。ゲストの国籍は半数がアジア圏、残りは欧米や南米、中東と世界各国に及ぶ。その集客のカギとなるのが、写真を撮ってネットで発信してもらう仕掛け作り。人気のアクティビティとなっている、コスプレサービスがまさにそれだ。浴衣や着物、侍、相撲などの和装に加え、アニメキャラクターの衣装も用意。“SNSで発信したら無料!”と打ち出し、利用を促進。効果を上げているという。

「予約サイトで宿を探す場合、まず写真を、次に口コミを見ますよね。そこで思わずクリックしてしまう写真、驚きと感動が書き込まれた口コミが必要となり、The Ryokan Tokyo YUGAWARAはこれを満たしているのだと思います。日本の観光情報が少ないであろう国々から予約が入るのは、いかにも日本的な、わかりやすい写真の効果が大きいのではないでしょうか」

■キーワードは“参加型”と“交流”

 The Ryokan Tokyo YUGAWARAが参加型アクティビティに注力している理由は、「感動と驚きがあり、思わず写真に撮って発信したくなる」から。書道やコマ回し、招き猫の絵付けなど、日本文化に触れる感動と、他ではできない日本の日常体験の演出が、ネットでの発信に繋がっている。

 その他にも、宿で過ごす時間の中にも、ちょっとした体験を盛り込んでいるという。朝食時にはおにぎり作りを、夕食時にはお好み焼きやたこ焼きづくりを体験メニューとして提供。日本人からすれば何てことのない風景も、外国人にとっては非日常であり感動を呼ぶ。そこでポイントとなるのが、ゲストやスタッフとの交流だ。スタッフだけでなく、時には隣席に座った日本人ゲストが焼き方を指南する。

「外国人にとって旅館は、作法が難しくかしこまったイメージです。そこにゲストハウスの良さを融合することでハードルを下げようと考えました。英語でフレンドリーな接客をするスタッフは、どんどんゲストに話かけ、それがゲスト同士の交流も促します。外国人旅行者はこういった雰囲気に慣れていますし、日本人と交流したいという方も多く、それが思わず写真に収めたくなる瞬間にもなります」

 滞在時間に体験を盛り込む工夫は客室にも見られる。「How to set up Futon」という説明書きを見た滞在客は、布団を自らの手で敷く。ちょっとしたイベントを提供するともに、スタッフの手間も省ける取り組みだ。

 The Ryokan Tokyo YUGAWARAの演出を見る限り、重要なのは和の本質を大切にしつつ、思わず写真に収めたくなる演出を加えること。結果的に演出が派手になっても、その部分を外さなければ、さじ加減を間違うことはなさそうだ。そのヒントや判断基準として、外国人が利用する旅行口コミサイトは、大いに活用すべきだろう。
《尾崎美鈴/HANJO HANJO編集部》

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