【新ものづくり・新サービス展】好調の観光業で光る独自製品 | RBB TODAY
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【新ものづくり・新サービス展】好調の観光業で光る独自製品

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和光舎では絵柄をプリントした生地の上から、部分的に刺繍をほどこした布も出展。会長の西谷は、「これをきっかけに本物の刺繍にも関心を持ってもらいたい」と話す
  • 和光舎では絵柄をプリントした生地の上から、部分的に刺繍をほどこした布も出展。会長の西谷は、「これをきっかけに本物の刺繍にも関心を持ってもらいたい」と話す
  • 和光舎のブースではタペストリーのほか、刺繍の柄を服にプリントした作品も参考出展されていた
  • スタッフの兜キャップ。専用のスタンドに設置すれば、インテリアとして飾っておくこともできる
  • 兜キャップから派生したボトルカバーも展開。スタッフ代表取締役の木村氏によると、現在はこちらのほうが売れ筋だとか
  • 兜キャップを考案したスタッフ代表取締役の木村氏
  • 「ものづくり補助事業」の成果を集めた「中小企業 新ものづくり・新サービス展」
【記事のポイント】
▼高級品で勝負するか、普及品を新たに作るか。状況を見極める
▼独自ブランドのマーケットに、インバウンドで好調な観光業を当てる
▼独自ブランドとは独力での開発にあらず、自身の伝手を最大限に活かす


■刺繍のスキャンデータをタペストリーの絵柄として再利用

 補助金や海外進出支援など、国が積極的に中小企業の支援策を展開している。中でも、多くの事業者に活用されているのが「ものづくり補助事業」だ。過去3年間に渡ってたびたび補助金が公募され、さまざまなビジネスが世に生まれている。その成果を集めた「中小企業 新ものづくり・新サービス展」が11月30日より、東京ビッグサイトで開催された。

 “ものづくり補助事業の成果”という性質もあり、会場では製造業に関わる事業者のブースが多く出展されていた。中でも、興味深い取り組みとして来場者の目を引いていたのが、“土産品の自社開発”という異業種参入についての展示だ。

 法衣のメンテナンスとともに、その刺繍の修繕を行う和光舎では、“日本刺繍でクールジャパン”をコンセプトにブースを展開。背後には大きな孔雀のタペストリーが飾られているが、実はこれは刺繍ではなく、その絵柄をプリントしたものだという。

 同社では刺繍を修繕する際に、その図柄を資料としてスキャンしてきた。その作業は優れた技術から第3回ものづくり日本大賞を受賞したニューリーに依頼。「たまたま、会社が近くにあった」ことが発注のきっかけとのことだが、これによってスキャンデータは1億4000万画素という超高解像度で保存されている。タペストリーの図柄は、元の刺繍を数倍に拡大しているそうだが、粗の見当たらない迫力ある仕上がりとなっていた。

 刺繍とは違い、プリントのタペストリーなら安価に販売できる。その窓口として同社では京都・三条にアンテナショップを出店。特に、訪日観光客から人気を集めているという。和光舎会長の西谷謙二氏としては、今回のような展示会でバイヤーを捕まえることで、ゆくゆくは海外進出の絵も描いているようだ。

「日本刺繍は制作に時間がかかるので、体験型のイベントで旅行客を集めることはできません。タペストリーなど別の方法で注目を集め、最終的には本業である刺繍の仕事へとつなげていきたいと考えています」


■メディア露出の種は、意外と身近なところにも

 和光舎では受注の先細りが、新たなビジネスに挑戦するきっかけとなった。消費が停滞している昨今では、同じような背景から、自社ブランドにチャレンジする事業者は多い。福岡でシルクスクリーン印刷を手掛けるスタッフも、その一つだ。

 自社ブランドの開発にあたり、代表取締役の木村英司氏が注目したのは、インバウンドを中心とした観光業の賑わいだ。ある日、木村氏は知人からこんな話を耳にする。鎧兜を扱う店にも観光客が増えているが、その値段と扱いの難しさから、実際の購買にはなかなか結び付いていない、と。

「それなら、もっと手軽に飾れる鎧兜を作れば、ビジネスになるのではと考えました。歴史は根強い人気を持つテーマですから、子供から大人まで幅広い方が購買層として期待できます」

 コストを考えるとすべてを自社生産するしかないが、本業の合間をぬっての作業となると、あまり手間のかかるものは作れない。その上で甲冑の重厚さを出せる素材を自ら捜し歩いたという木村氏。たどり着いたのは発泡樹脂だった。これに、シルクスクリーン印刷の技術を生かして、何層にも色塗りを行い、本物に近い質感を再現。ベースボールキャップに装着することで、被り心地も万全な「兜キャップ」が完成した。

 とはいえ、自社ブランド製品を開発するのは、これが初めてのこと。販路などに心当たりはなく、最初は知人が商店街で開いている刺繍屋に頼んで、商品を置かせてもらったという。しかし、これが兜キャップの行方を大きく変えた。実はこの刺繍屋、新聞やテレビなどでも頻繁に取り上げられている店だったため、すぐにメディアが関心を持ち情報が広まっていったという。それに伴い、全国のバイヤーから注文が舞い込んだ。

 発売の翌年には大河ドラマ「軍師官兵衛」の放送が始まり、関連する展示会などでの取り扱いも増えていく。上田城では今、真田幸村の兜キャップが売られているとのことだ。来年の「おんな城主 直虎」放映に向けて、すでに関連催事の関係者からもオファーが入っている。

 これら2社の事例に共通するのは、自社生産の製品でありながら、開発や販路開拓に知人の伝手が活かされていることだろう。下請け企業の多くはコスト削減を重視するため、独力でのモノづくりに慣れている。しかし、独自ブランドの開発では、今までにないスキルや伝手が必要だ。大企業であればコンサルタントなどに相談する局面だが、中小企業は周辺事業者と繋がり、その関係性の中で解決していくことも必要となる。このようなケースはマーケットがシュリンクする中で、今後さらに増えていくに違いない。

【新ものづくり・新サービス展:1】好調の観光業で光る独自製品

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》
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