製造業に求められる分業と人材シェア | RBB TODAY

製造業に求められる分業と人材シェア

 工作機械の分野で今、IoTやAI知能を搭載した産業用ロボットなどが注目を集めている。こうした最先端の取り組みを一堂に集めたのが、「第28回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF)2016」だ。

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「人材シェアリングと国境を越えた分業が増える」と語る、東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏
  • 「人材シェアリングと国境を越えた分業が増える」と語る、東京大学名誉教授/学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏
  • 工作機械と関連機器の展示会「第28回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF)2016」
  • 会場にはIoTなど先端テクノロジーを導入した工作機械が数多く出展されていた
【記事のポイント】
▼生産性向上のキーワードのひとつは「人材シェアリング」
▼アジア経済圏の成長で、輸出品のウェイトは最終材から中間材にシフト


■アベノミクスのブレーン・伊藤元重教授が語る「経済状況の変化」

 工作機械の分野で今、IoTやAIを搭載した産業用ロボットが注目を集めている。こうした最先端の取り組みを一堂に集めたのが、「第28回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF)2016」だ。今年は東京ビッグサイトで11月17日に開催され、過去最多の969社が出展している。

 会場ではエコノミストで東京大学名誉教授、学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏が、特別講演「グローバル経済と、製造業における近未来の企業経営」を開催した。同氏がブレーンとして関わるアベノミクス、さらにはグローバル経済の現状などについて講演を行っている。

 伊藤氏はまずマクロ経済的見地からアベノミクスについて解説。同氏によれば、アベノミクスによって、今後数年間は最低賃金が約3%ずつ上昇していくという。その一方で、少子化や高齢化の影響によって、年に約5%ずつ労働供給が減ってくると試算されており、それを補うためには労働効率の上乗せが必要とのこと。その上乗せについては「日本の戦略的成長には、最新テクノロジーを活かしたイノベーションにより、労働人口の減少を踏まえた生産性の向上が必要」と、IoTなどのテクノロジーの必要性を強調する。

 生産性が重視される分かりやすい例として、伊藤氏が挙げたのが農業だ。

「日本の農業では約9%の農家(農産物企業)が約60%の農産物を生産している。この生産性の格差は今後も増大する傾向にある」

 生産性の格差が増大すれば、寡占が進み、大規模農家ばかりが大きくなっていく。こういった現状を打破するためには小規模農家、あるいは商業でいえば商店などが生産性を上げることが必要。それが寡占に歯止めをかけ、しいては日本経済の底上げにつながることになる。


■「必要な時に必要な人を集めればいい」、人材シェアリングの時代へ

 テクノロジーやイノベーションのほかに、生産性向上のキーワードとして伊藤氏が掲げるのが「人材シェアリング」だ。製造業を営む事業者では、製造部門だけではなく、研究部門からマーケティングまで多くの部門を抱えている。しかし、これからは人員のスリム化が求められ、「企業が人材を集める時代は終わった。必要な時に必要な人材を集めればいい」と伊藤氏は話している。

「アメリカやフランスなどではフリーランスの“専門家”が増えてきている。企業は必要な時にそのような専門家を呼んで来ればいい」

 ここでいうフリーランスとは、個人や中小企業だ。人材シェアリングにおいて、生産性を向上させるために彼らが果たす役割は大きい。こうした大企業に求められる専門性をもつことが、中小企業の生き残る道ともいえる。

■主要取引先がアジアにシフトし、扱い品目が変化する

 そしてもう一つ、伊藤氏が言及していたのが日本の経済圏の変化だ。二国間貿易においては、物理学における重力と同様に、その国同士の経済力と距離が影響するという「グラビティ(重力)理論」がある。これまでは米国の経済力が大きく、日本もそれに引っ張られる形を取っていた。

 しかし、近年では中国をはじめ、アジアの経済力が拡大。中国、韓国、台湾、タイ、インドネシア、ベトナムといったアジア圏の“引力”が大きくなってきた。これによって取り扱い品目にも変化が見えており、かつては自動車や造船といった最終材(完成品)が大きなウエイトを占めたが、アジアとの貿易では部品などの中間材、金融などの資本材、そして最終材でも化粧品などの生活用品へとウエイトがシフトしているという。

 今後もこのような最終材の変化、そして中間材の増加で見えてくるのは、「国境を越えた分業」だと指摘する。自動車を例にとれば、部品の製造は日本で行い、それらを完成するのはタイの工場といったことが「国境を越えた分業」ということだ。

 こういった中間材や生活用品へのシフトは、大企業よりもむしろ小回りの利く中小企業への朗報といえる。分業やシェアリングがマクロ的には日本貿易の、ミクロ的には企業経営のトレンドであるとするならば、産業構造の変化をもたらす可能性もある。その中で大企業や世界の企業のパートナーとしてのポジションを確立すること。それが、中小企業の未来を大きく左右することになりそうだ。

【日本国際工作機械見本市】製造業に求められる分業と人材シェア

《関口賢/HANJO HANJO編集部》

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