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【インバウンド】個人旅行の格安ニーズをつかむホステル

ビジネス 経営
ドミトリーでは異なるグループの宿泊客が、一つの部屋に寝泊まりする
  • ドミトリーでは異なるグループの宿泊客が、一つの部屋に寝泊まりする
  • 最近では広さはないものの、シングルルームを備えたホステルもある
  • 大抵の場合、ホステルにはラウンジが用意されており、宿泊客同氏のコミュニケーションの場となっている
  • 基本的には素泊まりで、キッチンで自炊する宿泊客も多い
  • ニッチリッチ代表取締役  細井保裕氏
【記事のポイント】
▼増加するアジア系旅行者のニーズとホステルにズレがある場合も
▼欧米系とアジア系の両顧客を獲得できるソフトとハードを
▼日本人需要の掘り起こしによるリスク管理も

■インバウンドの格安志向が追い風に

 毎年増加の一途をたどり、2015年には約2000万人に達した訪日外国人観光客。宿泊業界のビジネスチャンスも拡大している。宿泊施設には旅館をはじめシティホテル、リゾートホテル、ペンション、民宿などさまざまな形態があるが、中でも最近注目を集めているのがホステルだ。

 元々ホステルは安価に個人旅行を楽しむバックパッカー文化が根強いことから、欧米で普及した簡易宿泊施設。別名ゲストハウスとも呼ばれている。部屋のタイプは、最近は個室を用意する施設も増えているが、ドミトリーという大部屋が中心で、宿泊料金はおおむね素泊まり1泊1人2000~4000円前後。相部屋が基本となり、トイレやシャワー(バス)、キッチン、洗濯機などもすべて共有だ。

 主に、ホステルを利用するのは予算に限りがある若者層。共有スペースやラウンジで出身の異なる宿泊者同士が交流を深められやすい点も、ホステルの人気を支えている。

 訪日外国人観光客数の増加とともに、海外でなじみのあるホステルに対するニーズが国内でも見込まれている。特にここ数年はビザの緩和や円安などにより、従来のような富裕層を中心としたパッケージツアーだけでなく、旅費を抑えたい個人旅行者が増加傾向にあるからだ。格安航空のLCC各社が海外と日本を結ぶ路線を拡大していることも、これを後押ししている。

■増加するアジア系旅行者のニーズとホステルにズレ?

 では、日本国内では今後ホステルが増えて行くのだろうか? ここで注目したいのが、新規参入したホステルで成功と失敗の明暗が分かれていることだ。

 ホステルを中心に宿泊業界で外国人集客のプロデュース・コンサルティング事業を展開するニッチリッチ代表取締役 細井保裕氏によると、インバウンドの伸びもあってオープン当初は順調に宿泊者を増やしていたものの、やがて業績が伸び悩んでしまうというケースがあるという。その原因の1つとなっているのが、宿泊者の出身国・地域を理解していないことによる対応のズレだ。


「例えば、欧米系の宿泊者はホステルをよく理解していますが、アジア系の宿泊者はホステルのような宿泊スタイルになじみがなく、相部屋での宿泊に慣れていない人たちや、他の宿泊者との交流をあまり好まない人たちもいます。むしろ、アジア系の宿泊者は自分たちの仲間だけで集まって盛り上がろうとするケースが多いのです」

 そのため、アジア系の宿泊者の中にはドミトリーのシステムをよく知らずに予約してしまい、満足できずに苦情につながることもある。一方、欧米系の宿泊者からは、アジア系の宿泊者との文化の違いによりクレームにつながることもあるようだ。こうしたトラブルがあまりにも起きてしまうホステルは、集客にとって重要な要素となる口コミへの影響が懸念される。

「ここ数年で増加している訪日外国人のホステル利用者は、ビザの緩和やLCC路線の拡大の恩恵を受け始めたアジア系が中心。彼らの多くは予算の限られた若者で、ホステルのことを、プライベート空間が確保されつつリーズナブルな価格で宿泊できる施設だと認識しています。ですので、ホステルにビジネスチャンスがあるからと本場の欧米スタイルを真似ても、そこに大きなズレが生じてしまっているわけです」

■欧米系とアジア系が共有できるソフトとハード

 訪日外国人観光客の中で増える“格安志向派”のニーズをつかむためには、認識のズレを解消する必要がある。そこで細井氏が指南するのは、ソフトとハードの両面で両地域の観光客に配慮することだ。

 ソフト面でいえばアジア系の多くが海外旅行初心者であることを意識した接客が必要だろう。ドミトリーが相部屋であり、そのため宿泊料金が安く抑えられること。館内には共有スペースが多く、宿泊者同士がコミュニケーションを深める機会も多いこと。そして、海外旅行では異文化との接触が付き物で、そこにはマナーが求められていること……。これらをさりげなく知らせることが、利用者全体の顧客満足度を上げることになる。

 一方、ハード面ではシングルをはじめツインやダブルなど、さまざまなタイプの部屋を用意することが得策だという。アジア系の旅行者はプライベート空間が確保されていることを好む傾向にあるため、相部屋ではなく個室があることが重要。狭くてもトイレやバスルームといった最低限の設備があればよい。


「私がサポートしたホステルの中には、ドミトリー中心だった施設の一部を個室に改修したところ、稼働率が向上した例があります。個室の宿泊料金はおおむね1人4000円前後からとドミトリーよりも高いのですが、延べ床面積あたりの収益率では個室よりもドミトリーのほうが高く、個室への改修を拒むケースもありました。ですが、ドミトリーとして販売しても改善がみられない場合は、個室でアジア系の旅行客を集めることで利益率の改善を図るべきでしょう」

 なお、宿泊者同士が交流を深める場となるラウンジやキッチンは、1か所にまとめることで、人が集まりやすい導線を確保することが重要だという。その上で、ラウンジでは他の宿泊者との交流を求める人たちと、仲間同士で盛り上がりたい人たちが共有できる空間作りが大切だ。

■ターゲットを特定の国・地域に絞らないリスク管理

 細井氏が外国人の集客で心がけているのは、国や地域を問わず世界各国から広く旅行者を受け入れること。日本に多く訪れる欧米系とアジア系のいずれかに絞るのではなく、両者をおもてなしできるホステルを目指している。それは単に稼働率を高めるだけではない。

 例えば、欧米系の訪日旅行が増えるのは、いわゆる日本の夏休みや冬休みといったシーズン。アジア系もこれと重なることはあるが、タイやマレーシア、シンガポールなどのアジア諸国は4~5月に長期休暇があることから訪日の機会が増え、中国は春節や国慶節といった祝日の前後にも需要が見込める。国・地域によって異なる旅行シーズンを広く取り込み、年間を通じて稼働率の安定化を図るわけだ。

 さらに、ホステルの経営を安定させるには、外国人だけではなく日本人の集客も視野に入れることが重要となる。

「ビジネスホテルからリノベーションして間もなく、東日本大震災にともなう外国人客の激減で大きな打撃を受けたホステルがあります。そのときに支えてくれたのが日本人客でした。ドミトリーのほかに個室を用意していたため、ビジネスホテルとしてご利用いただけたのです」

 震災だけでなく国際情勢や為替などの影響を考えると、外国人観光客が将来的に安定して訪日するとは限らない。特定の国や地域による利用者の減少も懸念されるため、広く顧客を受け入れられるソフトとハードが、ホステル事業の成功のカギを握っている。

~インバウンド向けホステル浸透中!:1~個人旅行の格安ニーズをつかむ!

《加藤宏之/HANJO HANJO編集部》
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