マイナンバーを確実に破棄! 世界最小に細断するシュレッダーの機密性 | RBB TODAY

マイナンバーを確実に破棄! 世界最小に細断するシュレッダーの機密性

エンタープライズ その他

サカエで代表取締役社長を務める松本弘一氏
  • サカエで代表取締役社長を務める松本弘一氏
  • サカエで代表取締役社長を務める松本弘一氏と、セキュリティレベル7に対応した「kiwami F6」
  • 「kiwami F6」で断裁したシュレッダー屑
  • 11月に発売された「kiwami S」シリーズ
 特定個人情報保護委員会が公布の「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)」によると、「個人番号の削除、機器及び電子媒体等の廃棄」の手法として、「特定個人情報等が記載された書類等を廃棄する場合、焼却又は溶解等の復元不可能な手段を採用する」とある。しかし、今の時代に書類を焼却するのは難しいし、破棄のたびに溶解業者に依頼するのは、中小企業にとっては負担が大きい。

 機密性の高い書類を破棄するとなれば、一番身近な方法はシュレッダーだろう。しかし、果たしてシュレッダーとは“復元不可能な手段”なのか? それを本気で考えた企業がある。かつてシュレッダーが木製だった昭和51年から、OEMで開発・製造を手掛けてきた株式会社サカエ。その自社ブランド製品として、15年4月に発表された「極美」シリーズが世界最小サイズの細断を実現したというので、機密性について代表取締役社長を務める松本弘一氏に話を聞いてきた。

■目指したのは世界最高レベルのセキュリティ

 サカエでは2013年7月に、自社ブランドのシュレッダー「Shred GEAR」を発売。以降、製品を展開するにあたって“シュレッダーの本質”とは何かを追い続けてきたという。長年シュレッダーは一度に何枚を細断できるか、その作業効率を競い合っていた。しかし、コンピューターによる分析技術が進む中で、その進化の方向性は正しいものと言えるのか。本来の機密処理という部分では、シュレッダーはほとんど進歩していないと、松本氏は感じていたという。

 一方で世界を見てみると、ドイツでは日本のJISにあたる「DIN規格」で、シュレッダーのセキュリティレベルが7段階にランク付けされていた。このうち、一番セキュリティレベルが高いとされるのが、細断サイズ1mm×5mmという規格。しかし、国内を見渡してみると、一般的な企業が使っているシュレッダーには、同規格におけるレベル4以下の製品も多かった。


 そこで、サカエでは実際にDIN規格の各レベルで細断された用紙を用意して、それを手作業で復元できるかを試してみたという。スキャンして、拡大コピーしたものを再度切り離し、それをパズルのように組み上げる。こうしたアナログな手法でも、レベル5(2mm×10mm)までの細断であれば実際に復元が可能だった。コンピューターの解析などを使えば、もっと簡単に書類が復元できてしまうだろう。

「これは危ないなということで、では我々は細断サイズで世界最小のものを作ろうと。それで開発を始めたのが『極美』シリーズでした。目標とした細断サイズはレベル7の半分の面積となる0.7mm×3.5mm。ここまで来ると細断されたチップの文字も読めなければ、裏表すら分からなくなるので、並べてスキャンしてパソコンに取り込むのも難しくなります」

 ただし、細断サイズを小さくすれば、カッターの刃を微小化することになる。その強度や精度を出すためには、実際かなりの苦労があったようだ。複数の刃を重ね合わせる“積み上げ式”と呼ばれる方法を止め、新たに削り出しによる一体型のカッターを開発。歩留まりは悪くなったものの、寿命試験としては従来以上の強度を出すことができたという。

「さらに、細断した紙が刃にからまないようにする工夫も、弊社ならではのノウハウですね。特許申請中なので詳しいことは話せませんが、刃と刃の間に挟み込むワッシャーの形状を『極美』向けに改良するには、随分と苦労をさせられました」

■紙情報の破棄に潜む危機

 「極美」シリーズは発売から約半年で120台を売り上げた。その顧客には某国の在日外国大使館、元大臣の議員事務所などもあるが、それ以上に引き合いがあるのが一般企業だという。従来は防衛相や外務省などでしか売れていなかった類の製品だけに、どうやら機密情報の破棄が今まで以上に注目を集め始めているようだ。

「分かりやすいところでは、テレビ局や芸能プロダクションなどからの引き合いがありました。大量の履歴書を送り返すわけにもいきませんし、人気タレントの情報なども興味を持つファンがいますから。その他では税理士や金融機関、外資系なども、紙のセキュリティに対する意識は高いですね」


 松本氏は一般企業の紙の廃棄に関する現状について、強い危機感を覚えているという。オフィスビルなどではゴミの収集場所に、毎日大量のシュレッダー屑が見える状態で置かれている。オフィスと同じフロア内にまとめていても、そこに外部の人間が容易に入れるようでは意味が無い。

「ゴミを持ってエレベーターに乗っていたら、突然人が入ってきて『そのゴミを100万円で買う』と話を持ちかけてくるケースもあったようです。責任者の目が届かない所で、情報が漏えいする恐れがある。だからこそ、その場で復元不可能な状態に破棄することが重要で、紙のセキュリティにおける安心安全に繋がると考えています」

 これらの問題は先に挙げたような、特別な企業や団体だけの問題ではない。ガイドラインに沿っていないと内部の悪意ある人間が通報したり、企業のイメージダウンを材料に第三者が脅しに使ってくるケースも考えられるだろう。それでなくてもマイナンバーの扱いを始めれば、あらゆる企業が紙の廃棄について“復元不可能な手段”を持つ必要が出てくる。

■中小企業に必要とされる情報管理とは?

 最近ではスマホやソフトを利用して、マイナンバーを厳密に管理するようなソリューションが注目を集めている。しかし、セキュリティにコストを掛けられない中小企業では、やはり紙でマイナンバーに関する情報を集めることになるだろう。では、そうした企業では、どのようにマイナンバーに関する情報を管理すべきだろうか?

「理想としては誰も入れない部屋を用意して、そこにスタンドアローンのPCを置き、集めた情報を登録する。それが難しいなら、最低限でもPCを人の目につかない場所に置くべきです。書類は鍵のかかるロッカーなどにしまうか、情報を収集したらすぐにシュレッダーで破棄する。そのシュレッダーもDIN規格で言うところのレベル6(1mm×9.6mm)以上に対応したものを使用すべきでしょう」

 NPO日本ネットワークセキュリティ協会などが公表している「2013年情報セキュリティインシデントに関する調査報告書~個人情報漏えい編~」によると、「漏えい媒体・経路」の件数のうち、67.7%を紙媒体が占めているという。マイナンバーを取り扱うとなれば、従来のように顧客だけでなく、社員からも機密情報の管理が注目されるようになるだろう。機密書類を扱うにあたり、そのセキュリティ性が今まさに求められはじめている。

 このような状況に対応すべく、サカエでは15年11月、小規模オフィスや店舗をターゲットにした「kiwami S」シリーズを発売。DIN規格におけるセキュリティレベル6に対応しながらも、従来の「極美」シリーズよりも安価で、よりコンパクトなモデルとして注目を集めている。マイナンバー情報を取り扱う部署については、現在使っているシュレッダーの安全性を、今一度確認する必要がありそうだ。

マイナンバーを確実に破棄、世界最小細断シュレッダー「極美」シリーズ

《丸田鉄平/HANJO HANJO編集部》

関連ニュース

特集

page top