「1人1台端末」で取り組む都立中学のICT教育 | RBB TODAY
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「1人1台端末」で取り組む都立中学のICT教育

エンタープライズ その他
地道な取り組みの重要性を説く太田耕司校長
  • 地道な取り組みの重要性を説く太田耕司校長
先進的な環境で活用法探る
教員のスキル向上とコンテンツ整備が課題
東京・千代田区立神田一橋中

 千代田区立神田一橋中学校では、区の情報教育推進校として、1人1台端末をはじめとする先進的なICT機器の活用研究に取り組んでいる。
 同校は平成26年度の校舎改修に合わせて、1人1台端末の運用を前提にした環境整備を行った。
 生徒用端末の保管と充電を行うスペースを黒板下に設置した他、88インチサイズのIWBも黒板上をスライドできる常設タイプを導入。IWBやテレビ、ブルーレイなどの電源を一元管理する仕組みも採用し、機器の準備など教員側の負担を軽減している。
 また、生徒用端末のデータをサーバー上の個人フォルダに記録するシステムや、生徒が端末に書き込んだデータを共有する協働学習支援ソフトウェアなど、授業での活用をサポートするソフト類も整備した。
 校舎改修前の同校は、教室に常設のPCもない状態だったという。太田耕司校長の発案で、各教室への書画カメラ導入、教員用ノートPCの配布、IWB常設教室の整備などを進め、ICTを日常的に使える環境に慣れることで、1人1台端末の導入に備えてきた。「タブレット端末のスムーズな導入と活用定着には、こうした準備期間を長く取ることが重要だと感じている」と校長は言う。
 生徒1人1台のタブレット端末は平成26年10月に導入され、各教科での活用が着実に浸透しつつある。
 この日は3年生国語科の古典で、タブレット端末とIWBを活用した授業が行われていた。古典文学作品を読む学習の前段として、古事記や源氏物語、蜻蛉日記などの概要をグループで調べ、協働学習支援ソフトで資料を作成。生徒たちは自分のタブレットを手に発表し、熊井直子教諭が作品間の関連性などを解説していた。
 教諭は、こうしたグループや個人での調べ活動と発表での活用を頻繁に行っており、「1人1台端末を使うことで、授業で発表する生徒だけでなく、全員の意見が共有できる」という。一方で、多様な意見に触れることで生徒の思考が拡散しやすいだけに、「知識として定着させるためには、教師がしっかり授業をまとめることが大切。落としどころを意識した授業展開が重要」と話す。
 この他にも、英語科ではリスニングや音読の個人練習にタブレット端末を活用。1年生数学科の平面図形の単元では、生徒が書き込んだ紙のワークシートをタブレットで撮影し、IWBで提示して共有するといった使い方も見られる。また体育科では、マット運動の様子をタブレットで動画撮影し、個人での振り返りや友だちからアドバイスを受ける際に利用するなど、教科の目的に沿った活用スタイルが浸透しつつある。
 太田校長は、「教員の教材提示中心のICT活用から、1人1台端末の活用へは一足飛びにはつながらない。1人1台ならではの活用アイディアや、授業で使いたいという欲求が生まれるまでには時間がかかる」と、地道な取り組みの重要性を強調。生徒のタブレット端末活用機会を、3割前後まで伸ばすことが当面の目標と語る。
 活用定着への課題としては、「教員のICT活用スキルの底上げ」と「授業で使いやすいコンテンツの精選」を挙げる。コンテンツについては、学年や教科別に有用なものを整理している段階で、授業の導入5分で使える1問1答形式のコンテンツや、ドリル学習用コンテンツなど、多くの教員が取り入れやすいものを検討しているという。
 こうした手軽な活用を通じて1人1台端末の良さを実感し、「単元や各時のどの場面でどう使えば効果的なのかを、教員各自が考えられるようになってほしい」と太田校長。
 今後の取り組みについては、「本校が目指すのは、授業改善を通じた生徒たちの学力向上。そのためにタブレット端末という新しい教具をどう活用すべきなのかを、この恵まれた環境の中で探っていきたい」としている。

先進的な環境でICT機器の活用法探る…東京・千代田区立神田一橋中

《日本教育新聞》
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