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電力自由化が消費者にもたらす選べる“自由”と“怖さ”……消費生活アドバイザー辰巳菊子氏

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公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 常任顧問の辰巳菊子氏にインタビューした
  • 公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 常任顧問の辰巳菊子氏にインタビューした
  • 経済産業省資源エネルギー庁が発表している電力自由化に関する資料(一部抜粋)
■消費者に正しい情報が伝わる仕組みづくりが必要

 正しい情報を得て比較検討した上で、考えながら電気を選ぶ姿勢も消費者の側に求められるということだ。単価は高くても質の良いものを選び、全体として電気の無駄遣いを減らしながらエコライフを充実させていくという、節電への意識改革が求められる。電力の自由化後には、メーカーの製品についてもどんなエネルギーを使ってつくられたものなのか、情報が開示されるようになれば社会全体のエネルギー消費に対する意識も高まってくるはずだと辰巳氏は期待を寄せる。

 商品に関連する情報の透明性を確保することも大事だ。自由化後には新電力会社(PPS)が、電気に通信やガスなどをセットにしたパッケージ販売を展開することも可能になる。そうなると、「電源」に関する情報が見えづらくなる懸念も生まれるし、そもそも「電気代が安くなる」こと以外に電気を選ぶことの意味が見えづらくなる。

 今年5月には、大手通信事業者のソフトバンクモバイルが、全国の家庭向けおよび中小法人事業者向けの電力販売に関する業務提携について、東京電力と基本合意に向けて検討を開始することを発表。「新たな付加価値サービス」の具体的な内容はまだ明らかにされていないが、両社が手を組むことによって考えられることは、通信料金と電気料金をセットにした割引販売の実施だ。

 現在のスマートフォンの利用料金ですら、契約内容が複雑であるが故に契約に関連するトラブルが話題になることもある。電気のセット販売そのものを否定するものではないが、一方では店頭での対面販売の場や、紙媒体とWebを組み合わせた情報ツールも活用しながら、全ての消費者が正しい情報を知ることができるよう仕組みも整えなければならない。

 このたびの電力システム改革に時期を合わせて、電気を使う各家庭への「スマートメーター」の導入推進も図られている。スマートメーターは、毎月の検針業務の自動化、あるいは各家庭ごとの電気使用状況の“見える化”を可能にする電力量計としての役割を期待されているものだが、今後普及が進めば消費者のプライバシー保護やセキュリティ管理に対する事業者の取り組みについても厳しい目が向けられるようになるだろう。

 これまでは生活に必須のインフラとして何気なく消費してきた電気を、自由化がきっかけになって未来の社会を変えるという視点も持ちながら使う意識が消費者の間に育っていって欲しいと辰巳氏は語る。いよいよ来年から電力の小売り販売が自由化され、消費者が自ら電気を選べる機会が訪れる。さまざまな情報を賢く精査しながら、自分のライフスタイルに合った電気を選びたい。
《山本 敦》
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