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【連載・視点】クラウドソーシングという挑戦……「時間と場所にとらわれない働き方」は定着するか

エンタープライズ 企業
代表取締役の秋好陽介氏
  • 代表取締役の秋好陽介氏
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■ポータルは1つでいい

 ランサーズは、日本で最初のクラウドソーシングサービスとして2008年にスタートしたwebサービス。オンライン上で非対面のまま決済から納品まですべての仕事取引が可能で、今日では案件総額220億円超、クライアント数6万5000社、登録会員数27万人にのぼっている。企業はweb制作、システム開発、ライティング、デザイン、翻訳などの仕事をランサーズ上で依頼。それを見たフリーランスの個人会員が案件に対し提案をし、成約、仕事発注となる。

 いま、企業は様々なところでのコストカットを迫られている。社内にスタッフを持つより、外注できるものは外に出したほうがトータルのコストは安くあがる。このアウトソーシングの流れは今やどの業界にも見られるのだが、企業のアウトソーシングには限界がある。取引先としての規模や信頼関係、さらには取引を開始する際の社内での手続きなど、障壁がいくつもあるからだ。そこを担保するのがランサーズをはじめとしたクラウドソーシングサービスとなる。アウトソーシングする相手がフリーの個人であれば、それだけコストは下げられる。あとはそのマッチングをすればいい。登録スタッフの質が高ければ高いほど、また数が多ければ多いほど、それが可能になる。

 ランサーズのサービス開始以来、市場規模は右肩上がりで、2017年度には1474億円に達する見込み(矢野経済研究所調べ)。現在では約200社が参入する「ネット業界という狭い世界ではホットな分野」(秋好氏)の中で、ランサーズはヤフー、パソナ、クラウドワークスといった企業が並ぶ2番手グループの約3倍という圧倒的な規模でトップを走っている。秋好氏は言う。「マーケットプレイスモデルというのは、規模が一番大きいところに発注したいというバイアスが非常に大きくかかりやすい。だからこそ、圧倒的なナンバー1であり続けたい。それが非常に重要なんです。オークションで言えば、ヤフーオークションだけでいいというのと同じことです。マーケットのポテンシャルは大きく、今ではバーティカルな(一定の業種に特化した)クラウドソーシングも出始めていますが、我々みたいなポータル型のクラウドソーシングはそんなにたくさんは生き残らないと思っています」。

 もちろん規模のメリットだけでナンバー1であり続けられるわけではない。徹底したクオリティ管理も同社の強みで、フリーランサーの能力を計るエキスパートレイティングというテスト(全世界で約2000万人が受験)を導入しプロフィールに順位が記載されるのもそのひとつ。また、クライアントからの登録者に対する評価も、開示されるものとは別に“裏評価”をフィードバックさせ、登録者のレコメンドエンジンに反映している。

■新たなビジネス展開も

 さらに、新たな展開も視野に入れている。マッチングの場を提供するだけの完全なプラットフォームモデルとは別に、まずはランサーズ自体が発注を受ける「ランサーズビジネス」という形態ももそのひとつ。企業によっては、個人との取引よりランサーズに発注したいという要望もある。そこで、一旦ランサーズ自体が案件を受注し、ランサーズのプロジェクト・マネージャが案件を分解して、クラウドソーシング上で個人に依頼して進めるというやり方だ。これはビジネスモデルの大きな変化だと言えるだろう。

 また、KDDIとの提携も新しい動きだ。従来のクラウドソーシング分野で、KDDIの業務・通信インフラをランサーズ会員向けに提供することで、仕事依頼の総流通量や充実領域を拡大。フリーランスの仕事機会増加と業務環境向上につなげるというパートナーシップを両社が結んだ。さらに、ランサーズとKDDIが共同で、地域特化型のマッチングサイト「ランサーズプレイス」を開始することも発表された。これは、地域に特化することで、これまでネット上で完結する仕事だけだった領域をリアルの領域にまで広げようという狙いがある。
《大木信景》
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