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【浅羽としやのICT徒然】第4回 NaaSを阻むネットワークの境界とSDN

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 せめて一つの事業者の中は一つのネットワークで運用できないのかと思うかもしれませんが、それは無理というものです。なぜなら上記の、基幹ネットワーク、メトロネットワーク、アクセスネットワークの3つの区分(実際にはもう少し細かく分かれるケースもあります)のそれぞれで要求される機能や性質が異なるからです。アクセス網は、局舎から周辺のビルや家庭を繋ぐ放射状のネットワークで、数十メガ~百メガ程度の容量の回線が要求されます。一方、メトロは県内の局舎間を相互に繋ぎ、他県に向かうトラフィックを基幹網に渡すという役割を持ちます。ここは階層型のネットワークだったり、メッシュ型やリング型だったり、複数の方式から各地域の特性や事業者のポリシーに合わせて構造や使う技術を選ぶ事になります。DCの中でサーバを繋ぐネットワークも、アクセスネットワークとメトロネットワークを合わせたような構造になっています。帯域は数十ギガ~百ギガ程度になるでしょうか。さらに、基幹網は、長距離を高速に繋ぐ役割ですので、日本の場合だと各県の集約局を直線的に繋いで行くイメージになると思います。容量は数百ギガ~テラのオーダーになるでしょう。

 このように要求される機能や性質の異なるネットワークを構築するためには、自然と要求機能に合わせて異なる技術や機器やメーカーが選択される事になります。通信機器メーカーもお互いに競争をしながらビジネスを伸ばそうとしていますので、全ての区間で圧倒的に強いメーカーというのはなかなかありません。メトロではA社やB社が技術的にも価格的にも優れているけれども、基幹はC社やD社が強い、というような棲み分けが自然と出来ているのです。また、通信事業者同士も競争をしていますので、E社が機器を選ぶ際に、ライバルのF社がA社の伝送機器を使っているとわかれば、では我が社はB社の機器を使おう、なんていうことも発生するのです。

 こうして多様な要求を満たすために、多様な機器を使って構築されたネットワークには、上記のようなネットワーク区分間や、異なる事業者間に幾つもの境界が出来てしまうのです。それでも、ネットワークは繋がらなければ意味が無いので、境界があると言ってもその間はもちろん線で繋がっています。問題は、それぞれのネットワーク機器を制御するシステムが異なるために、制御や設定が境界で分断されてしまっているところにあります。

 SDNでは、OpenFlowという標準プロトコルを用いて、この多様な機器による多彩なネットワークの制御方式を標準化しようとしています。OpenFlowは、最初は特にDC内のネットワークに使われるイーサスイッチのような機器での採用が中心でしたが、最近ではメトロや基幹ネットワークを作るWAN用の機器や、POTS(PacketOptical Transport System)と呼ばれる光伝送装置にも採用されつつあります。これによって、異なるネットワークの制御システム間の境界を無くし、全体を統一的に管理運用する事が出来るようにすることで、NaaSが実現するのです。


■筆者:浅羽としや/IIJで、1エンジニアとしてバックボーンNWの構築や経路制御などを担当し、CWCで、技術担当役員として広域LANサービスの企画・開発に従事。現在、ストラトスフィアで、社長としてSDNの基盤ソフトウェアのビジネスを推進中。
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