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【テクニカルレポート】スマートコミュニティを実現する、複合型再生可能エネルギーシステムの開発……NTT技術ジャーナル

エンタープライズ その他
図1 複合型再生可能エネルギーシステム装置外観
  • 図1 複合型再生可能エネルギーシステム装置外観
  • 図2 複合型再生可能エネルギーシステム構成図
  • 図3 複合型再生可能エネルギーシステムの基本運転モード
  • 図4 運用データの一例
  • 表 複合型再生可能エネルギーシステムの導入と分散型電源の構成の実例
  • 図5 複合型再生可能エネルギーシステムを複数利用した地域防災給電ネットワークの例
実際の導入事例の紹介
 東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県仙台市は,地域の防災拠点へ太陽光などの自然エネルギーと蓄電池などを組み合わせ,自然災害に備えようとしています.これらの拠点整備においては,長時間停電時における自立電源の確保と,再生可能エネルギーの利用拡大による環境負荷低減を両立させることで,安心・安全かつ環境に配慮した街づくりを目指しています.2012年,仙台市は環境省による地域グリーンニューディール基金などを活用し,「仙台市避難所等への防災対応型太陽光発電システム導入事業」の公募型プロポーザルを実施し,NTTファシリティーズをこの事業者に選定しました.NTTファシリティーズは,過去の実証研究事業を通して開発した複合型再生可能エネルギーシステムを仙台市内の小学校13カ所,市民センタ2カ所,庁舎1カ所の計16カ所への導入を進めています(5).また,仙台市では,2015年度末までに,200カ所以上に本システムを導入していく計画としており,ほかの自治体も興味・関心を示しています.仙台市での実例を含め,本システムの導入事例と分散型電源の構成例を表に示します.太陽光発電装置以外にも,風力発電,燃料電池,電気自動車,および各種蓄電池は,特定の機種やメーカへの依存がなく,組合せの自由度が高いことも本システムの特徴であり,前述したとおりです.


地域防災給電ネットワーク
特定のエリア内においてスマートコミュニティを実現するためには,単一拠点のみならず,複数台の複合型再生可能エネルギーシステムを同時に運用管理,制御し全体最適化を目指す必要があります.このような要求を満たすためにはICTによる群管理を行い広域での運用が必須となります.ICTを用い,複合型再生可能エネルギーシステムを複数台同時に運用し,地域防災給電ネットワークを構成する場合のイメージを図5に示します.平常時は,エリア内の複合型再生可能エネルギーシステムに対して,天候や電気事業者の発電状態・料金体系と負荷の状況を把握したうえで,CO2排出量最小化,あるいは料金最小化などさまざまな要求が実現できるような運転指令を,ICTを介して行います.この際,個別のシステムごとの負荷状態や蓄電池残容量を勘案し,運転指令やさまざまな制約条件・しきい値が全体最適となるように制御します.このように,複数のシステム全体による面的なデマンドレスポンスやリアルタイムプライシングへの対応による電気料金の削減,ピークカットやピークシフトが可能となり,料金面のみならず,電気事業者の設備利用率向上やCO2削減にも寄与できます.

 また,広域停電が発生した場合,例えば拠点の重要度や負荷の消費量をかんがみ,継続給電を可能とするEVの最適配備により,より高度な防災対応も可能にします.

今後の展開
 ここでは,NTTファシリティーズが愛知工業大学との実証事業を通じて開発した複合型再生可能エネルギーシステムの概要,特徴,運用事例を紹介しました.本システムの導入により,太陽光発電や風力などの分散型電源を電気事業者の送配電網を介さず,負荷・需要地にもっとも近い場所で地産地消させることに貢献でき,かつ,停電事故発生の有無や気象条件に左右されず安定した高品質な電力供給を可能にしています.

 本システムは導入しようとする施設の条件,制約を受けにくいため,全くの更地からのスマートコミュニティの構築という新規としての局面のみならず,我が国や先進国にみられるような,ある程度インフラが整っており,各種の分散型電源が導入済みの既存施設におけるスマートコミュニティの構築にもその効力を発揮します.NTTグループの事業コンセプトにある「つなぐ」のキーワードを,本複合型再生可能エネルギーシステムにより実現させることができ,さまざまなスマートコミュニティの場面で活躍ができると期待されています.今後もICTの利活用を推進し,よりスマートで無駄がなく,効率的なエネルギーシステムへと改良を継続していきます.

■参考文献
(1) K. Hirose and T. Babasaki:“Smart Power Supply Systems for Mission Critical Facilities,”IEICE Transactions on Communications,Vol.E95.B,No.3,pp.755-772,2012.
(2) http://spectrum.ieee.org/energy/the-smarter-grid/a-microgrid-thatwouldnt-quit.
(3) 廣瀬・武田・奥井・雪田・後藤・一柳・松村:“分散形電源導入系統におけるパラレルプロセッシング方式を用いた給電システムの開発,”電学論B,Vol.129,No.11,pp.1349-1356,2009.
(4) T. Tsujikawa,K. Yabuta,T. Matsushita,T. Matsushima,K. Hayashi,and M. Arakawa:“Characteristics of Lithium-ion Battery with Nonflammable Electrolyte,”Journal of Power Sources,Vol.189,No.1, pp.429-434,2009.
(5)“複合型再生可能エネルギーシステムを開発,”NTTファシリティーズジャーナル,Vol.50,No.296,pp.16-17,2013.

◆問い合わせ先
NTTファシリティーズ
研究開発本部
TEL 03-5907-6328
FAX 03-5961-6424
E-mail hirose36 ntt-f.co.jp

※本記事は日本電信電話(NTT)が発行する「NTT技術ジャーナル誌 Vol.25 No.5,pp.38-41,2013」の転載記事である。
《RBB TODAY》
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