常識破りの長尺スピンドル……従来比2倍の600mm | RBB TODAY

常識破りの長尺スピンドル……従来比2倍の600mm

 大学と中小企業による産学連携の成功例が工作機械の分野で出始めている。それが大久保精工(滋賀県草津市)が手がける「長尺スピンドル」。

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大学・中小企業のタッグが実現した常識破りの長尺スピンドル……大久保精工と中部大
  • 大学・中小企業のタッグが実現した常識破りの長尺スピンドル……大久保精工と中部大
【従来比2倍の600mm、深穴可能に】

 大学と中小企業による産学連携の成功例が工作機械の分野で出始めている。それが大久保精工(滋賀県草津市、大久保信雄社長、077・564・6011)が手がける「長尺スピンドル」。中部大学の安達和彦教授が2015年3月まで在籍した神戸大学の准教授時代から研究に参画する。従来と比べて長さが倍のスピンドルを安定回転させた技術は、今年、特許を取得して実用化に結びつけた。産学連携で課題解決した好例となりそうだ。

 大久保精工が06年ころから開発に乗り出したのは、内面研削盤などに用いる回転軸の突出した部分が600ミリメートルの長尺スピンドル。安達教授は神戸大時代に振動解析で、金属の疲労寿命では地元の酒井達雄立命館大学特別任用教授が参画した。中部大や神戸大で精度評価を実施している。

 「最初は研削加工用の工具を単に作っただけで、『本当に加工できるのか』というのが砥粒(とりゅう)加工学会などでの反応だった」と安達教授は振り返る。製品は完成しても実際に加工したデータを示せなかったため、当初は内面研削盤に取り付ける工作機械メーカーからの受注に至らなかった。

 スピンドルは長いほど深穴加工ができるため大型加工に強みが出る。ただ高速回転するだけに回転数の上昇とともに振動が強まり、軸がぶれてスムーズに回転しづらくなる。

 「こうしたスピンドルの設計自体が“常識外れ”だった」と話す安達教授が均衡化などを評価し、先端に重量を加えるなど工夫した製品は実用化できると判断。このほど大手工作機械メーカー、ジェイテクト製品への搭載が決まった。加工した長尺部品は建機や削岩機、航空機などの分野で使われる見込みだ。

 特許は安達教授と大久保精工の大久保元博専務の共同で取得した。「ようやく産業界に送り出せるレベルまで仕上がった」と安達教授も感無量だ。大久保専務は「『深穴加工は大久保に聞け』という存在になりたい」と力を込める。独自技術を持つ中小だけに、連携先の拡大は歓迎だ。最近は学会での発表効果もあり、最近は工作機械メーカー関係者の来訪が続くという。

 実は安達教授と大久保専務は神戸大同窓の間柄。それでも安達教授は「評価が悪ければ、遠慮なく“ダメ出し”していた」と緊張感をもって産学連携に取り組んでいた実情を打ち明ける。

 中小企業は地道なモノづくりを続けながら、製品として世に送り出すための評価の確立は大学と連携する。開発当初から「産業応用」というゴールを見据えていたからこそ、成果が出たのは間違いないはずだ。(林武志)

大学・中小企業のタッグが実現した常識破りの長尺スピンドル……大久保精工と中部大

《日刊工業新聞》

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