【インタビュー】モールか独立店舗か?……ECサイトの新しい潮流は定期購入型とキュレーションのハイブリッド型 | RBB TODAY
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【インタビュー】モールか独立店舗か?……ECサイトの新しい潮流は定期購入型とキュレーションのハイブリッド型

ブロードバンド その他
インタビューを受けてくれた3名
  • インタビューを受けてくれた3名
  • パクレゼルヴ インターネットメディア事業本部 ソリューション事業部 岸田隆氏
  • ペイジェント 営業推進部 シニアマネージャー 齋藤淳哉氏
  • ペイジェント 営業推進部 臨光政孝氏
  • ショッピングカートシステム「PRECS」
  • ペイジェント ホームページ
■AISASからSIPSへ、変わるネット通販ビジネス

 マーケティングの世界では、インターネットの出現によって消費者の購買プロセスはAIDMA(注意、関心、欲求、記憶、行動)モデルからAISAS(注意、関心、検索、行動、共有)モデルに移り、SNSの出現によってSIPS(共感、確認、参加、共有・拡散)モデルに移ったと言われている。TwitterやFacebookの台頭やスマートフォンの普及により、ECサイトといえども、大規模なモ―ルに出店したりSEOに注力すればいいという、検索重視の時代は終わりつつあるのかもしれない。

 そこで注目されているECサイトの新しい形態として、定期購入型のECサイトがある。定期購入型は、例えば飲料水やお気に入りの食材、調味料などお取り寄せ品など、普段使う日用品、消耗品を毎月決まった量を届けてもらうような注文ができるというもの。これだけなら特段珍しくもないが、最近ではここに、目利きが選んだものを購入できるという、キュレーションの要素が絡んでくるのがトレンドだそうだ。

■この半年で急激に成長する定期購入型ECサイト

 ECの業界動向について、定期購入の機能を標準で搭載したショッピングカートシステム「PRECS」を提供しているパクレゼルヴのEC Consulting Manager 岸田隆氏は、「『PRECS』では、1年以上前 から定期購入の機能を標準で搭載していましたが、当初はそれほど注目されていませんでした。しかし年が明けてから徐々に引き合いが増えてきて、この夏から急激に実績を伸ばしています」とのこと。その理由として、他社が提供する定期購入機能はオプションであることが多いが、「PRECS」では当初から標準搭載であったことと、スマートフォンでの購入を重視してフリックによる商品検索ができるインターフェイスにも気を使っているからではないかと、岸田氏は分析する。

 これまで、定期購入というと、水や洗剤、化粧品など特定ブランドや商品の固定客層がメインであって、どのECサイトでも必須の機能とは認知されていなかった。しかし、最近ではmixiがECサイトと会員向けの商品コーディネーションを提供するサービスを組み合わせたりするなど、キュレーションを活用した定期購入の形態が多くのECサイトから注目されている。専門のコーディネータやカリスマが、顧客ごとに商品をレコメンドしたり選択してくれる。そんな付加価値が顧客の新しいニーズを掘り起こしたというわけだ。これはソーシャルな特性を活かした通販の新しいスタイルともいえ、AISASからSIPSへの転換を体現しているサービスといえるだろう。

 ECサイトの決済代行サービスを営むペイジェント 営業推進部 臨光政孝氏は、「固定的な定期購入以外に、レコメンドや福袋的な要素をミックスした定期購入スタイルが広まっています。これからは、店舗側の顧客ごとにカスタマイズされたレコメンドが重要になってくると思います」と語り、今後も定期購入とキュレーションを組み合わせたビジネスは広がっていくことを示唆した。

■ユーザー、ECサイト双方のメリットとなる決済方法が鍵となる

 このような新しいスタイルの定期購入が広まった背景だが、ペイジェント 営業推進部 シニアマネージャ 齊藤淳哉氏によると、「一説には、ECでの定期購入について日本の通信会社が昔からある定期購入の概念を海外に持っていったものが、海外のソーシャルなサービスと結びつき、キュレーションという付加価値を伴って、日本に逆輸入されたと言われています」とのこと。加えて、この市場動向の変化に欠かせなかったのはスマートフォンの存在であるという。

 岸田氏によれば、同社が構築したり、「PRECS」を導入しているECサイトの動向をみても、スマートフォンからの売り上げはPCに迫るものがあるといい、将来的には全体の50%はスマートフォンからの売り上げになると見ている。スマートフォンの利用が増えてくると、次にポイントとなるのは商品購入の決済方法。キャリアの決済で一元管理できれば、スマートフォンユーザーにとってもECサイトの運営者側にとっても大きなメリットとなる。

 そこで、ペイジェントが取扱いを開始したのが、スマートフォンキャリア決済(継続課金)だ。スマートフォンECサイトでの購入代金を、携帯電話キャリアの通話料金と一緒にまとめて支払うことができ、定期購入にも対応している。キャリアの継続課金がOKとなれば、初めの手続き以降、決済手続きが省略できる。ユーザーにとっては、手軽にECサイトが利用できるようになるし、ECサイトにとっても、操作アクションを減らしたりUIの改善によって、離脱率を下げ、滞留率を上げることができる。ECサイトのシステム開発という側面からは、キャリアごとに異なる決済インターフェイスを1本化できるので、開発期間や工数を削減できるというメリットもある。

 パクレゼルヴでは今後も、更にスマートフォン関連の機能を強化していく予定だ。また、ぺイジェントも各携帯キャリアとの連携を更に強化し、スマートフォン向け決済メニューの拡充を進めるとのことだ。

■購入方法の新たな潮流がECサイトのあり方にも変化を与える

 最後に、ECサイトがキュレーションを組み合わせた定期購入機能を導入し、スマートフォン対応を進めることで、店舗側にはどのような変化が起こるのだろうか。

 モールに出店した場合、一定以上の集客やブランド効果が期待できる。小規模なショップや新規参入の場合、サイト構築コスト、出店料や手数料などを考慮しても出店するメリットは高かった。しかし、キュレーションのような付加価値をつけた定期購入を展開できるショップなら、小規模でも固定客の拡大が期待できる。そして、ソーシャルメディアとの連携やクーポンサービスとの連携など、新しいメディアの利用やサービスとの連携を柔軟に行いたい場合、出来あいのモールよりも独自サイトのほうが展開しやすい。

 スマートフォン対応を強化したい場合、モールでは、ランディングページやトップページのUIが完全対応出来ていないケースが多く、クリックするとPCページへ遷移してしまう場合がある。そのためユーザーの離脱が増加傾向になるからだ。

 このように、定期購入型サイトのような新しいECサイトのモデルや、「PRECS」のようなASPサービスをうまく利用すれば、独自サイトでビジネスを展開する可能性が広がっていくだろう。ソーシャル連動の定期購入型ECサイトは、スモールスタートのベンチャーでも新しいショップ構築の選択肢となり、大規模モールの管理コストやビジネス制限が足かせと感じるようになった店舗にとっては福音のひとつになりえるのではないだろうか。
《中尾真二》
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