なんにでもつながるM2MチップがIOTを変える……アプリックス | RBB TODAY

なんにでもつながるM2MチップがIOTを変える……アプリックス

エンタープライズ 企業

アプリックス 代表取締役CEO 鈴木智也氏
  • アプリックス 代表取締役CEO 鈴木智也氏
  • エクササイズマシーンとタブレットアプリを連動させるデモ。連動させるアプリはゲームから健康管理までなんでもOK。
  • このサイズの機器にも容易に組み込むことができる。もちろん機器との通信はワイヤレスだ。
  • このコントローラは、本来は家庭用ゲーム機向けの製品でケーブルでつなぐタイプだった。
  • DJゲーム用のコンソールで別のゲームを楽しむことも
  • ピンボールゲームのフリッパーを、太鼓ゲームのコントローラで遊ぶデモ
  • UD1やそのSOC版のチップを組み込めば、どんな機器でもクラウド接続が可能になり、アプリケーションとサービスの幅が格段に広がる
  • 市販のバーコードリーダに組み込めば、リーダだけでPOSのようなシステムを実現することも可能だ。デモは、本のISBNコードを読み込み、表紙や書誌情報を表示するシステム
 エクササイズマシンとタブレットの連携、タブレットのアプリを市販のゲームコントローラで操作、バーコードリーダーを直接インターネットに接続、血圧計のデータをスマホに転送、ラジコンをスマホやPCで遠隔操作。現実にこのような機能は、上位モデルや高価な製品にしか実装されにくい。それは、単純に通信モジュールや関連チップが高いためである。「健康管理」のような無形の付加価値をつけられれば、2000円の体重計を2万円で売ることができるかもしれないが、このスキームは多くの家電製品や民生機器には適用できないだろう。

 ならば、通信モジュールや関連チップの単価が安ければ、これらの応用範囲は飛躍的に広がるのではないか。そう考えた企業がある。アプリックスは、組込み分野ではJava開発環境やミドルウェアを開発・供給するベンダーとして有名だが、今回、新しいM2M通信モジュール(UD1)を開発し、半導体の製造販売にも参入する。

 同社が開発している製品は、一般的な家電製品や組込み機器にフレキシブルかつ安価に実装できるM2M通信モジュールおよびSOC(System on a Chips)で、この連休明け9日から開催される「ワイヤレスM2M展」をはじめ、大型展示会にも続々出展していく予定になっている。

■ソフトウェアベンダーがなぜ半導体を手掛けるのか

 組込み分野に携わっているなら、JBlendというJavaのミドルウェア製品でアプリックスの存在を知っていた人もいるのではないだろうか。同社は創業以来、ソフトウェアベンダーとして事業を行ってきたが、ここにきてハードウェア事業を展開するのはそれなりの理由がある。アプリックス 代表取締役CEO 鈴木智也氏は、「弊社の基本コンセプトはソフトウェアを作るということに変わりなく、既存の事業からの転換ということではありません。M2Mについても、5年ほど前から中国のチャイナモバイル向けのM2Mプロトコルの開発に参画するなど、関わりは深いものでした。そこで、日本でもM2Mビジネスをと考えたのですが、最初に突き当たった問題が通信モジュールのコストでした。」と語る。

 一般的にM2M通信モジュールは、データを処理する高度なプロセッサと通信用デバイスやチップで構成され、構造も複雑なため高価になっている。そこで、もっと安価なプロセッサとワイヤレスチップを使い、複雑な処理やアプリケーション部分はクラウドで処理すれば、M2M通信モジュールの単価を下げられるのではないか、というUD1の基本アイデアが浮かぶ。そして、そのチップを自社のM2Mソフトウェアと組み合わせて市場に供給すれば、冒頭に示したような製品やサービスの開発を加速させ、M2Mでいち早くビジネスモデルを確立できると確信した。

 アプリックスはソフトウェアベンダーなので、半導体製造についてはファブレス企業となるが、鈴木氏はその点について不安はないという。現在、半導体メーカーを標榜していても、チップの企画とデザインのみを行うというところは少なくない。代表例はQualcommやNVIDIAだ。ちなみに、NVIDIAのビジネスモデルは、高性能プロセッサにグラフィック処理用のデバイスをSOC化したり、ライブラリを充実させるなどしてGPUとしての付加価値を高めるというものだ。

■市場の反応が物語る安価なM2Mチップの可能性

 アプリックスのM2Mは、単価が低価格であり、複雑な処理はクラウドやアプリケーションが行う。そしてチップの設計はシンプルなので、どんな機器・用途にもカスタマイズなしに適用できる。したがって、SOCにありがちな10万、100万といったロット注文を気にする必要もない。

 ソーシャルやクラウド利用のアイデアを持っていたさまざまな製品ベンダーが、アプリックスのソリューションに注目した。さらに、サービスの核をなす部分がクラウド上に構築されるということで、ハードウェアや製造のノウハウのないサービスプロバイダなども、興味を持ち始めている。

 UD1の通信方法についてだが、現状では2種類用意されている。ひとつは、SIMフリーの汎用USBモデムを経由する方法である。もうひとつは、Bluetooth LEを利用してスマートフォンの回線を利用する。どちらも3G回線を利用することになるが、クラウドを最大限利用するため、センシングしてサーバーに送る情報はそれほど多くない。基本的な電気信号がほとんどで、帯域もほとんど消費しない。基本料0円のSIMにも対応しているため、同社の試算によれば1ヵ月1Mバイト(=37.8円)もあれば十分だそうだ。製造原価やロット数、サービスのランニングコストなどの理由で、現実的なソリューションはできないと、M2Mをあきらめていた企業が興味を持つのも無理はない。

■大きなプロジェクトより、身近な製品から広げたいM2M

 鈴木氏は、「ビッグデータやIOT(Internet of Things)といったトレンドの中で、M2Mはまだこれからの市場だと思います。これは、まだ伸びる余地がたくさんあるということでもありますが、現状で製品やサービスの浸透を妨げている要因もあると思います。それは、業界がIOTといったとき、インテリジェントであることやスマートであるということにこだわり過ぎている部分です。」と語り、機能ありき、技術ありきの戦略に釘をさす。

 そして、「UD1は、現在まだプロトタイプですが秋ごろには3G対応の製品版をリリースします。2012年末から来年初頭にかけては、Bluetooth LE対応のワンチップモデルをリリースする予定です。UD1は小さいとはいえモジュール構成になっていますが、ここでは一部のアナログ部品を除いてSOC化されます。そして2013年中には、すべてをSOC化したラインナップが揃うはずです。」と、この先1年の製品ロードマップを語ってくれた。

 業界としては、より機能の高い製品や付加価値の高い機器を売りたい思惑があるかもしれないが、現実の消費者はそれだけでは商品を買ってくれないだろう。スマートシティ構想がいくらバラ色の未来を提示しても、その恩恵を受けられるのが一部の消費者では意味がない。鈴木氏は、この構造に風穴を開け、UD1とそれに続く製品によってM2M市場を一気に盛り上げようとしている。

■どんなものが繋がるか、展示会で披露する

 もともと技術や製品の機能でビジネスをしていたアプリックスには、営業と呼べる人材が一人しかいなかった。問い合わせや引き合いが殺到する中、営業担当の増強も考えているそうだが、製品出荷までの商品説明やデモを効率よく行うため、5月9日からの「ワイヤレスM2M展」への出展を決めた。このイベントなら、組込みベンダーやM2Mビジネスに興味のある企業が集まるからだ。

 同展示会への出展について鈴木社長は「どんなものが繋がっているか、実際にお見せしたい」といい、冒頭に述べたようなM2Mの応用例(すでに20以上の応用例を研究している)のデモを、同社のブースで披露するとした。身の回りの電気製品に同社のチップを繋ぐだけで、インターネットを介したM2Mクラウドサービスが実現できることを体験できるはずだ。興味のある人は見に行くといいだろう。また、鈴木社長は「M2Mというのは、人のアクティビティとサービスをつなぐものでなければ意味がない。M2Mとはそうでなければ役に立たないもので、しかもそれはすごく簡単にできる」として、従来の機械と機械しか見ていないM2Mのイメージを変えたいという想いについても語った。

 同社では「ワイヤレスM2M展」のほか、5月30日からの「ワイヤレスジャパン」、6月13日からの「Interop Tokyo」へも続けて出展。さらに秋にも展示会出展を予定しており、秋の展示会では実際に動き出したサービスを紹介したいとのことだ。
《中尾真二》

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