【ニールセン博士のAlertbox】KinectのジェスチャーUI: 第一印象(後編) | RBB TODAY

【ニールセン博士のAlertbox】KinectのジェスチャーUI: 第一印象(後編)

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ボタンをタッチすることでは起動しない。その代わりに、このジェスチャーによって、確認ステップ上の別のボタンが表示される。
  • ボタンをタッチすることでは起動しない。その代わりに、このジェスチャーによって、確認ステップ上の別のボタンが表示される。
  • 「Kinect」「iPad/タブレット/モバル機器」それぞれの要素
■信頼性と予期しない起動

 モバイル機器のテストでよく見かける、予期しない起動について、それを防止する、という点においては、概ねKinectはよくできている。携帯電話やiPad上で何かに指が軽く触ると、それは突然始まるわけだが、多くの場合は何が起きたかもわからない(なぜならば、触ったことを知らないからである)。

 ユーザーのコマンドを実行する前に、Kinectは通常、確認のジェスチャーを要求する。確認のためのこのリクエストは、ユーザーに何かが起ころうとしていることを気づかせ、意図していないジェスチャーによって、動作の起動が妨げられないようにしている。しかしながら、残念なことに、確認の方法は統一されていない:

・アニメーションによる円の描画が終わる迄の間、手をボタン上にじっと置く。(ほとんどのゲーム)

・メニュー項目を選択した後、腕を左にスワイプする。但し、右にスワイプするという「back(:戻る)」機能を使いたい場合は別だが。(Dance Central)

・まずコマンドを選択し、その後、そのコマンドの隣にポップアップする小さな確認ボタンの上に手をじっと置く。(Your Shape)

 こうした確認用のジェスチャーはじれったいものである。予期しない起動の可能性を減らすことによって、長い目で見れば、時間の確実な節約になるとわかっていても、だ。(手を何かの上に長く置いたままにしてしまい、うっかり何かの機能を起動させてしまうことが私にはいまだにある。そうしたとき、貧弱な取り消し機能のサポートと、一貫性のない「back(:戻る)」機能によって、じれったさは倍増する)。

■良好なユーザビリティ

 Kinectには優れたデザイン要素が多数あり、そのことから、開発チームは(a)ユーザビリティをわかっており、(b)ユーザーテストが実施され、(c)その結果、追加の開発業務が必要になったとしても、ユーザビリティの向上を優先事項とする、というマネージメントサイドからのサポートがあった、ということが明らかである。

 これは理に叶っている。というのも、そもそも、Kinectの唯一の存在理由が、気軽なゲームシステムとしての覚えやすさにあるからである。ゲームのキャラクターを動かすため、ボタンの押し方のややこしい組み合わせを苦労して覚えることに喜びを感じる、という筋金入りのゲーマーのためのものではないのである。Kinectが対象にしているのは、ずっと広いマスマーケットであり、そこでは優れたユーザビリティが必要である。(実際に、このゲームは発売後6週間で400万ユニット売れた)。

 ユーザビリティの優秀さを示す例としては、上述したような、そうでもしない限り、起動させるのが難しいコマンドについて、コマンドが出るまさにその位置に画面上でヒントが表示される、というのがある。では、どうすれば、デザイナー達にユーザーがどこでヒントを必要とするかがわかるのか。それには、実際に人々がゲームしているのを観察し、彼らが立ち往生しているところに注目をすればよい。

 ユーザビリティの仕様と仕上げがうまくいっている例としては他に、スナップトゥ効果、というのがある。つまり、ボタンに「磁力がある」ような感じになっており、手をボタンの側に置くと常に、カーソルが寄ってくるのである。(その結果、効果の高い、ボタンについてのFittsの法則の効力が拡張され、手の震えによる影響も軽減される)。

 ユーザビリティに関してのもっとも魅力的な進化といえるのは、ユーザーの顔の認識後にKinectが自動的に彼らをログインさせるそのやり方である。自分用にカスタマイズしたアバターを使って、今あるどのゲームを始めたとしても、センサーの前に踏み出すと、とたんに、「Jakobは認識されました」という表示が画面に現れる。これは1993年に「コマンドなしのユーザーインタフェース」と私が名付けたタイプのインタラクションテクニックである。つまり、ユーザーにはコンピューターにコマンドを出しているという感覚はない。そうではなく、単に、いつものやり方で自分のすべきことに取りかかったら、コンピューターがタスクの残りの部分を完成させるため、必要なことをやってくれるというわけである。

 企業ポータルの調査によってわかっているのは、シングルサインオンというのが、イントラネットに対してもっとも希望の多い(しかし、一番実現されてない)機能の1つだということである。しかし、サインオンが自動化されれば、それはさらに望ましいことであり、インタラクションのステップ全体をなくすことになる。

■ユーザビリティの問題はあるけれども、ゲームは楽しい

 先日のラスベガスでのユーザビリティウィークカンファレンスの間、Kinectのシステムを休憩コーナーに設置し、カンファレンスの参加者がこの新しいUIのパラダイムを直接体験できるようにした。(2月のニューヨークでのカンファレンスでも、またそうする予定である)。

 人々は非常に楽しんでおり、短時間のデモだけで、ゲームをプレイすることができていた。

 この状況から明らかなように、同じタイプのユーザビリティ上の課題によって、iPadのユーザーテストでは大量の問題が起きていたが、Kinect のユーザーにはそれは問題にならなかった。ではなぜユーザーインタフェースに多数の欠落があるにもかかわらず、Kinectの全体的なユーザーエクスペリエンスはうまくいっているのだろうか。

 それは2つのシステムではユーザーの行うタスクが異なるからである。ユーザビリティというのは以下の2つのポイントによって定義される。それは、ユーザーと彼らの行うタスクである。iPadとKinectを比較するとき、たとえユーザーが同じであっても、彼らのしようとしていることがまるで違う2つの事柄なら、ユーザビリティというのは異なってくるものである。

 確かに、iPadもゲームをするために利用されてはいる。実際のところ、私も空港ではSolitaire CityとWe Ruleをすることで、随分と時間をつぶしているし、Nielsen Norman Groupの他のメンバーからはAngry Birdsの評判が高い。しかしながら、ゲームでの奇抜なインタラクションスタイルはほとんど問題にはならない。タブレットのデザインで本当のところ気になるのは、eコマースや株取引、情報アクセスのようなことをするためのビジネス向けユーザーインタフェースについてである。そこでは、一貫性のなさや、変わったデザインによって、利用が減ってしまい、その結果、あなたがたのビジネスが不利益を被ってしまうからである。

 また、Kinectのユーザーはモバイル機器のユーザーがするように、1、2分毎にコンテクストからコンテクストへ次々にジャンプしたりはしない。Kinectでゲームをすると、そのゲームに(たいていは30分かそれ以上) 夢中になるので、他のゲームはまるで見ないものである。事実、ゲームの切り替えは画面上のナビゲーションを通して行うのではなく、DVDの入れ替えによって行う。したがって、画面上のUIに対する負荷は軽減されている。

 最後になるが、ゲームが変わればその中の動きやゴールは激しく変わってくるものである。したがって、ユーザーインタフェースが違うというのは悪いことでもない。急流の筏下りとLady Gagaの最新の曲に合わせて踊るということの間にはチョークとチーズほどの違いがあるからである。

 iPad上では、何を買おうとしているときでも、これまでに利用してきた数え切れないほどのウェブサイトによって定義される、eコマースのユーザーエクスペリエンスとしての最上の形で扱われることを期待するものである。同様に、読んでいるものが雑誌であろうが、新聞であろうが、記事間のナビゲーションと個々のストーリーの内容を読み進めることについてのUIは、似ているということが期待されている。そして、していることが、証券口座での投資の研究であれ、天気予報のチェックであれ、航空券の予約の修正であれ、そこで期待されていることというのは、長いリストの検索絞り込みや、測定単位の変換のような操作において、似たようなインタラクションテクニックが使われているということである。

・iPad、あるいはそれ以外のタブレットや電話機でのジェスチャーによるインタフェースの目的を持っての利用というのは、かなり似たようなタスクによって構成されているが、そのときのユーザーの期待値は高いものであり、コンテクストの切り替えが頻繁に行われるため、一貫性のないデザインは受け入れられない。また、ユーザーに必要なのは、大きなサイズのデータを機能の豊富なコマンドで操作することであり、UIの操作に全体の内のかなりの割合の時間を費やす。ユーザーエクスペリエンスの質は主に、UIのユーザビリティと、情報に対するユーザーのニーズをそのコンテンツによって容易に満たすことができるかどうか、によって決定される。

・Kinectでのプレイにはかなり特徴的な激しい動作が含まれており、ユーザーはそのときごとに1つのゲームに集中するため、一貫性のなさを乗り切るのはそれほど難しくはない。ここでユーザーがナビゲートしなければならないのは、かなり小さなデータ空間であり、彼らは大半の時間をゲームのプレイに費やすが、UIのコマンド入力型のパートを操作するために、ゲームの世界から離れて、時折、回り道をすることもある。ユーザーエクスペリエンスの質はゲームプレイによって主に決定される。

 決定的な違いは、モバイル機器の究極の目的が個人の利用に特化していることである。つまり、あなたの携帯電話はあなたのものであり、その機器とのインタラクションは1人での活動なのである。たとえ、ソーシャルネットワークにつないでいるときでも、画面上の実際のユーザーインタフェースを操作はあなたひとりによって行われる。対照的に、ゲーム機というのはグループで利用されることが多く、新しく来たユーザーは、グループ内のより経験を積んだユーザーから、新しいユーザーインタフェースについて、親切に概要を説明してもらえるものである。

 利用状況の違いによって、見ればすぐにわかるというUIをそうしたゲーム機が持つ必然性は減る。その一方、携帯機器のUIには学習しやすさが非常に重要である。

 Kinectはユーザーインタフェースの技術に関しての刺激的な進化形である。しかし、KinectをKinectたらしめているユーザーエクスペリエンスの多くは、ビジネスや政府機関、非営利組織が日常的に利用するウェブサイトやイントラネット、アプリケーションに必要とする実用的ユーザーインタフェースの先にあるものではない。Kinectを楽しいものにしているデザインアイデアはあなたに数百万ドルもの負担を強いる可能性もあるだろう。
《RBB TODAY》

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